シレットを訪ねてきたのは、
妖精族の友人、レイとリヤンだった。
シレットを心配した、本当の友人が、様子を見に来たのだった。
確か、レイとリヤンは、シレットが人間界に行ったのと同じ頃、
行先をエルフ族の村に決めて旅立っていったはずだった。
店の外から、中を覗き込む二人を見たとき、
シレットの心の中は、喜びよりも、動揺の方が大きかった。
一瞬、二人を見て、頭の中が真っ白になったシレットだったが、
その後すぐにこんな考えが浮かんできた。
「うわぁっ・・・どうしよう・・・・・!まさか、あの二人がここまで訪れてくるなんて・・・・!
いったい、何しに来たのかしら??
・・・・あ、相手なんて、してられないわ。
私は、いろいろ、忙しいのよっ!」
正直、妖精族の仲間とは話す気になれなかった。
だいぶ痩せこけてしまった自分を見て、
きっと、「ほら見たことか」と思ってるに違いないなかったし、何よりも恥ずかしかった。
今の自分の姿は、愛馬のスイットにさえ、見せられない。
・・・そう思いついた自分自身に、シレットは少し驚いた。
クリスタランドに居たときに、そんな風に仲間の事を思ったことなんて、あっただろうか・・・・
自分の心の中で、自動的に黒い動きをする考えに、シレットはどこか恐怖を感じた。
レイとリヤンは、自分たちを横目に見ながらも、ツン!として痩せこけた身体で、
ブツブツ独り言を言いながら必死で働くシレットの様子を見て、顔を見合わせた。
レイ「まぁ・・・・・・!!なんて・・なんて、かわいそうな、シレット!!」
リヤン「あの、シレットが・・・・・なんてことなの!!! すっかり、輝きを失っているわ!」
二人のその会話は、店の外のものなのに、店の中に居るシレットに、ずいぶんはっきりと届いた。
そして、シレットは二人が言っていることが、さっぱり理解できなかった。
本当は心が奥底で激しく動揺していたが、
ここでその動揺を見せたら、「負け」だという気持ちが働いた。
動揺に「勝つ」ために、シレットは、必死に心の中で、自分一人のおしゃべりを続けた。
(何を言ってるのかしら?
頑張ってる私は、輝いているはずよ!
あの二人ったら、あんなにのんびりした、呑気な顔をして!
・・・・・だから、駄目なんだわ。
あんなんじゃ、人間界では通用しないのよ。
私は、このお店で、すごくすごく頑張って、沢山売り上げて
・・・お客様だって、友達だって、多かった・・・・はず・・な・・のよ・・・・・・・)
自分を否定しているのか、二人を否定しているのか、もうわけがわからない。
ぐるぐる回る思考と同じように、シレットの目の前の景色もぐるぐる回ってくる。
フワフワと、雲の上を歩くような感覚が襲ってくる。
ふわふわの雲に足を踏み入れながら、
(そうか・・・これは、夢だったんだ・・・・
最近、疲れていたから・・・・・・・・)
そう思った。
「あぁ~~っ!!!シレット!大丈夫??」
夢の中で、懐かしい友人たちが自分の名前を呼んだ気がした・・・・
すでにふわふわの雲の上をだいぶ歩き進んだシレットは、
「・・・・懐かしいなぁ・・・・レイ・・リアン・・・・クリスタランド・・・
・・・いったい・・・・どんな、国、だったっけ・・・・・・」
ふわりふわり、雲の上をさまよいながら、そう思った。
そう思ったのもつかの間、急に足元のフワフワした雲が消えて、
そのまま深く深く真っ暗な世界へと落ちて行った。