新?和声講座 第二部(15)転回和音(2) | Die Ruine der Walhalla

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先ず前回の続きで、属和音の六から主和音、下属和音に円滑に繋げることを考えてみよう。


属和音から主和音に進む場合、次の譜例の1小節目のようにシはドに進む。ソプラノとバスを入れ替えると2小節目のようになる。ソプラノは旋律によってはこれくらい跳越することはあり得るが、円滑な進行としては3小節目のようにするのが無難であろう。

Castelli in Aria-15-1 属和音の六から主和音へ

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属和音から下属和音に進むことは通常あり得ないのであるが、バスを音階順次進行させる中で次の譜例の1小節目以降のように転回和音の形で使われることはないでもない。これではテノールがぎこちないので、4小節目以降のように属五六にしたほうが良い。いずれにせよこれらの例の最後の進行はかなり強引で、繋ぐことができるということを示しただけである。実際にはそれぞれ最後が下属和音の四六ではなく主和音に進むのが自然であることは言うまでもない。

Castelli in Aria-15-2 属和音の六から下属和音へ

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属五六が出てきたところで、属七の転回形について考えてみよう。尚、属七の転回形では、属三四は勿論のこと、属五六や属二であっても、通常五音は省略されない。さて、属七は次の譜例の1小節目のように、通常主和音に解決される。これを転回形にして、バスをそのまま順次進行させる。そして、バスの代わりに上に行ったソの音はドに進む必要はなく、そのままソを保持することによって、主和音も五音を持った形に出来るのである。

Castelli in Aria-15-3 属七の転回形の解決

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場合によっては主和音の三音を重複し、次の譜例の1、2小節目のような進行も可能である。また、属2を3小節目のように解決することも不可能ではない。しかし、転回和音は属七に限らず同一和音の配置換え以外ではバスが順次進行したほうが美しい。尚、4小節目以降に示したように、属二は属和音のバスを下降させて導き出し、そのまま主和音の六に移るのが一番無難である。主和音が六であるから当然ここで終るのではなく、更に何かの和音に繋がっていくべきであるが、煩雑になるので休符にしておいた。


Castelli in Aria-15-4 属七の転回形の解決その2

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これまでに述べたように、転回和音を用いる場合にはバスを順次進行させるのが美しい。しかし、非転回形から転回和音に移る場合のように、同一和音の配置換えでは跳越することになる。また、この場合バスだけが動いて三音が重複されることもあり得る。


また、六の和音どうしを連結する場合、どちらかで三音を重複した方が繋ぎやすいことは前回の下属和音から属和音への連結でお分かりいただけたと思うが、主和音の六とこれらの和音を繋ぐ場合も同様である…と本には書いてあるが、バスがミからラやシに跳越するのは美しくないと思う。まあ、六の和音の場合、ある程度バスが順次進行と跳越を織り交ぜることはあるのだが。


一方、四六の和音の場合には、尚更バスを順次進行させるべきである。バスを順次進行させないとすれば、同一和音の配置換えか、あるいは第一部の第5回で述べた主和音の四六から属和音あるいは属七に移るように、バスが保持される場合だけであろう。


尚、転回和音の前後の余り遠くない位置に、同じ和音の非転回形を置くことで、非転回の和音が単独で現われる不安定感が解消されることを明記すべきである。