新?和声講座 第二部(14)転回和音(1) | Die Ruine der Walhalla

Die Ruine der Walhalla

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これまで主要三和音と属七の和音のそれぞれ非転回形の連結について見て来た。今回は転回和音の内、六の和音の連結について考えてみよう。六の和音は根音か五音を重複するのが無難だが、前後関係によっては三音を重複することもある。但し、属和音の三音は導音であるので、決して重複してはならない…と言うところから普通は話が始まるのだが、ここではとにかく円滑な連結を考えてみよう。


主和音の非転回から下属和音、属和音、属七の和音に円滑に繋げるのと同じように、六の和音からなるべく円滑に繋げることを考えてみよう。


主和音から下属和音に進む場合、次の譜例の1小節目のようにミはファに進むのが良い。2小節目のように単にテノールとバスを入れ替えると、テノールが四度跳越して面白くない。そこで3小節目のようにソプラノを跳越させる手もあるが、バスとソプラノが並行して十五度に至るので、連続八度のような感じを与え(これを隠伏八度と呼ぶ)、あまり好ましくない。そこで4小節目のようにソはラに上らずにファに下げ、ドをラに進めればぴったり来る。

Castelli in Aria-14-1 主和音の六から下属和音

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主和音から属和音に進む場合、次の譜例の1小節目のようにミはレに進むのが無難だが、このテノールとバスを入れ替えると2小節目のようにテノールが不自然に跳越することになる。そこでテノールをレに進めると、3小節目のように五音が重複された属和音になり、これはこれでいい感じになる。ただ、この属和音の四六はあまり使わない。4小節目のようにバスをミからソへ跳越させれば根音を重複した非転回の属和音になる。

Castelli in Aria-14-2 主和音の六から属和音

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主和音から属七の和音に進む場合、次の譜例の1小節目のようにミをファに進めると、上の属和音と同様のことになる。すなわち、テノールとバスを入れ替えると2小節目のようにテノールが不自然に跳越することになるので、3小節目のようにテノールをレに進めると綺麗に属二になる。4小節目のようにミがレに進む場合を転回するとどうなるか。テノールを跳越させるとアルトと交錯してしまうので、5小節目のようにレに進めよう。五音が重複され…あ、根音がない(笑)。属七に進むつもりが導音上の三和音になってしまったが、これはこれで属七の代用として悪くない形ではある。6小節目のようにバスをソに進めれば、ちゃんと属七になる。あるいは5小節目のテノールがソで、アルトかテノールがソを保持すれば、これも属三四で好い形である。

Castelli in Aria-14-3 主和音の六から属七の和音

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次に下属和音の非転回から主和音、属和音、属七の和音に円滑に繋げるのと同じように、六の和音からなるべく円滑に繋げることを考えてみよう。


下属和音から主和音に進む場合、次の譜例の1小節目のようにラはソに進むのが本来の姿である。アルトとバスを入れ替えると主和音の四六になるが、2小節目のようにアルトと重なったテノールが代わりに跳越する形になる。アルトをソに上げてテノールをミにすると、3小節目のように五音を重複した四六になる。そこで4小節目のようにバスをドに上げてしまえば、綺麗な非転回の主和音に落ち着いた。ただ、転回和音を使用する場合はバスを音階順次進行させたい場合が多いので、必ずしも後者が良いということではない。

Castelli in Aria-14-4 下属和音の六から主和音

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下属和音から属和音に進む場合、次の譜例の1小節目のようにラはソに進むが、そのままアルトとバスを入れ替えれば、2小節目のように無難に進むことが出来る。では、ラをシに進めたらどうなるであろうか? 導音を重複することは出来ないし、連続を避けなければならないから、3小節目のようにソプラノとテノールが完全五度から並行して跳越し、完全四度になるという異様な進行になる。下属和音の根音ではなく五音を重複した形で始めれば、4小節目のように少しはましになる。こういう場合、5小節目のように思い切って三音を重複した方が、円滑な進行が出来る。

Castelli in Aria-14-5 下属和音の六から属和音

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尚、2小節目と5小節目のテノール、3小節目と4小節目のアルトをファのまま保持すれば、属七あるいは属五六に進むことが出来る。