新?和声講座 第二部(16)終止 | Die Ruine der Walhalla

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第一部では偽終止などについて少しだけ触れたが、ここで改めて終止についてまとめておこう。終止とは句読点のようなもので、そこで音楽が一段落する。余韻をもって次に続く読点もあれば、完全に終る句点もある。句点でも、まだ次に話が続きそうなものだってある。まあ、そんな感じだと思えば良い。いずれにせよ、そこで音が長く伸び、あるいは次に休符があったりする。短い音ですぐに次の和音に進んでは、和音の進行がこれから述べる終止と同じ形であったとしても、句読点にならないからである。ここでは終止を強調するため、音符にフェルマータを付けて示すことにする。


終止と言うくらいで曲が完全に終るところでは、前衛音楽その他で複雑な余韻を残す場合等を除けば、すっきりと終わった感じにするために決まった形が用いられる。完全終止、あるいは正格終止と呼ばれるもので、必ず属和音または属七の和音から主和音に進んで終わる。完全終止を本当に終わった感じにするためには、属和音(属七の和音)と主和音の両方が非転回で、ソプラノは最後主音で終わることになる。長調ならバスがソ→ド、ソプラノがシ→ドかレ→ド(時にはソ→ド、この場合バスと反行させないと連続八度でよろしくない)ということになる。これを特に充分終止と呼ぶ。次の譜例では、属和音の前に主和音なり下属和音なりを一つサービスしておいた。

Castelli in Aria-16-1 完全終止(充分終止)

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これに対し、転回和音だったり、ソプラノが三音や五音だったりすると、完全に終わった感じにはならない。これを不充分終止と呼び、曲の途中で用いられるが、稀に余韻を残して終ったり、ちょっと屈折した感じで終えるために曲の最後に現われることもある。

Castelli in Aria-16-2 完全終止(不充分終止)

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一方、曲の途中で一旦余韻を残して終止し、それがまるで問いを発したような感じを与え、次に続くその答を期待させるような、所謂仮終止というものがある。これには半終止が用いられるが、これは属和音で終止するものである。この場合、属七よりも三和音の方が良かろう。属和音で終ると、主和音へ戻りたいという意識が働き、これが余韻となるのである。二分形式の前半の最後が半終止、後半の最後に完全終止というのが典型的なパターンである。半終止には、普通に主和音なり下属和音から属和音に進んで終止する他に、主和音の四六から進んで一旦落ち着いた感じになったり、一瞬属調に転調して属調の完全終止の形になったりすることもある。

Castelli in Aria-16-3 半終止

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完全終止のことを正格終止とも呼ぶことを上に述べたが、これに対して変格終止とは下属和音から主和音へ進む終止のことである。半終止と同様に楽曲の途中で用いられることもないではないが、よく見かけるのは次の譜例のように完全終止した後に更に変格終止を付け加えるものである。これは穏やかな楽想で終わる宗教音楽によく用いられるので、宗教終止と呼ばれることもある。アーメン終止なんて変な呼び方をする人がいるが、アーメン以外の言葉で終る曲にも用いられる。下属和音を四六にするともっと落ち着いた感じになると思うのだが、そういう曲は見たことがない。作ったことはあるがあせる

Castelli in Aria-16-4 変格終止

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そして以前にも少し取り上げた偽終止。如何にも完全終止すると思わせておいて、属和音か属七の和音から突然主和音以外へ進んでフェイントをかけるものである。第一部で述べたように下中音上の和音に進むことが多いが、全く別の和音に進むことも出来る。短調になると増二度と連続を避けるために色々と面倒になるが、その詳細については後日取り上げる。

Castelli in Aria-16-5 偽終止

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