サード・キッチン | サンディの今日もワイン

サンディの今日もワイン

サンディがワインと本についてあれこれ言います。

2020年2月3日(節分)サンディは永眠しました。18年間ありがとう。
ひきつづき、ワインと本についてあれこれ言います。

読書時間:3.0h
一読:あり
再読:あり
R指定:なし
著者:白尾悠
刊行:2020年11月
価格:1800円+税
出版:河出書房新社

本本本本本本本本


米国の大学へ留学した日本人が差別について思い悩む

11998年2月 大学美術館と食堂
21998年2月 大学図書館と一年生寮
31998年2月 数学クラスと夜食
41996年 留学準備と老婦人
51998年2月 サード・キッチンと面接
61998年3月 コープと留学生協会
71998年3月 失敗と中間試験
81998年3月 春休みと洗濯室
91998年4月 大学新聞と国際電話
101998年4月 夜のお菓子と学生会館
111998年4月 ドラァグ・ボールと静かなおしゃべり
121998年5月 ティーチ・インと叫び
131998年5月 料理とエアメール 
141998年5月 芸術棟と図書館前広場

 

......

 

サード・キッチンは、学生が運営するコミュニティ
コミュニティは誰でもウェルカムが基本だが、サード・キッチンだけ面接がある。

会話もおぼつかず、劣等感を抱ながらのキャンパスライフ。
差別される側だと思ったら、無意識で差別していることに気づいたり。
落ち込んで、サード・キッチンをやめようと思ったり。
自分も留学したら間違いなくこのタイプ^^;

ハッピーな結末にはなりそうにないと思いながら読み進めると、、、
結末はハッピーエンド

 

......

 

9章 大学新聞のバトルは、サード・キッチンの敷地を白人が近道したところから始まる。
発端は人種差別だろう。足を怪我していたから近道した、という反論は、仕事を休むにも正当な理由が要るみたいな現代を表している。
白人だから有利な立場にいるとは限らないし、社会的にも経済的にも強者のマイノリティはいっぱいいる、という反論も同じ。
論点をずらしているだけ。米国で白人が有利な立場にいるのは変わらない。
 

 

14章 図書館前広場にて教授の言葉

 

『教養教育の目的は自立して批評し思考し続ける知性を育てることだ。戦争、災害、疫病、あまりに大きな問題を前にすると不安と無力感に苛まれる。そんなとき剥き出しになる他者への恐怖や憎悪にブレーキをかけるのが、知性と想像力だ』

 

小説には、う~ん、これって差別?と思うこともあったけど、これが結論なんじゃないだろうか(小説で結論も変だけど

 

反知性主義多様性疲れには、知性と想像力で向き合うしかないと思う。

......

 

留学生活を楽しんで1回、差別について振り返るためにもう1回。
初読の作家さんですが、他の本も読みたくなる小説でした。