読書時間:8.5h
一読:あり
再読:なし
R指定:あり(暴力的な描写が苦手なひと)
原題:The Science of HATE How prejudice becomes hate and what we can do stop it
著者:マシュー・ウィリアムズ/訳:中里京子
刊行:2023年3月
価格:2950円+税
出版:河出書房新社
偏見が暴力に変わるときを見つける過程
憎悪の基盤
憎むとはどういうことか
ヘイトクライムの発生件数
脳と憎悪
私の脳と憎悪
集団脅威と憎悪
憎悪の促進剤
トラウマ、コンテインメント、憎悪
トリガーイベントと憎悪行為の増減
憎悪を生み出す過激派のカルチャー
ボットと荒らしの台頭
言葉と行動による憎悪行為
偏見が憎悪に変わるティッピングポイント
憎悪の要因はプッシュとプルの二種類ある
プッシュは外集団への脅威、プルは外集団の粛清
プルには相模原障害者施設殺傷事件の植松聖、ロンドン釘爆弾事件のディヴィッド・コープランド、シリアルキラーのジョゼフ・ポールフランクリン 等が上げられている。
被害者に失礼だが、プッシュは小さい事件が多い(被害者が少ない)
ゴスファッションをしていた二人がヘイトクライムに遭った事例などが本書で取り上げられている。
酔った連中が勢いづいて暴行に至るというのは、どこで起こってもおかしくない。若い男性が多いのも納得できる。
女性もヘイトクライムに加担する
近所に変な人が引っ越してきて、「気味が悪いから何とかしてよ」と男性を焚き付けるみたいなケースだ。
これはディフェンシブ・ヘイターとカテゴライズしている。(プッシュ要因のヘイターの一つ)
憎悪を持っていてもヘイトクライムを起こさない人と起こす人がいる。
著者はヘイトクライムを起こす人と起こさない人は根本的に違うと考え、自分の脳をfMRIで見ることさえする。
それでも違いは分からない。
プッシュとプルの何れにせよ、外集団と内集団の分断による偏見から憎悪になるので、様々な偏見を取り上げる。
それでも分からない。
著者はヘイトラボでヘイトを科学している。
科学の敗北とは言わないまでも、成果は少ない。
成果の一つは、イベント自体がヘイトクライムの要因となること。本書ではブレグジットの国民投票自体がヘイトクライムの要因となったことを示している。
もう一つは、カウンタースピーチは有効であるということ。ただし書きが6つもあるので取扱い注意だが。
1) 侮辱的な言葉や憎悪に満ちた言葉を使わない
2) 論理的で一貫性のある議論をする
3) 虚偽または疑わしい主張がなされている場合には、証拠を求める
4) ヘイトスピーチが持続する、悪化する場合は、警察または第三者期間に報告すると表明する
5) 他の人にもカウンタースピーチを行うように勧める
6) 対象のアカウントが偽やボットの可能性がある場合は、ソーシャルメディアに通報して削除を要請する
同じような境遇にあってもヘイトクライムを起こす人と起こさない人がいるのはなぜなのか?
この問いが著者の敗因と思う。
つながり続けるこども食堂で湯浅誠さんが言うように、黄色信号、赤信号と捉えればよかったのだ、
集団間のポジティブな接触で偏見が減ることが分かったのは、科学の成果だが、何となくそうかなと思えることを裏付けただけで、なにも変わらない。
ホームグロウンでテロになる理由はさっぱり分からなかったし、本書から得るものは多かった。
ヘイトラボとしては黄色信号にリーチできれば十分と思う。
右寄り、支配的を測るテストがあるので気になる方はどうぞ
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RWAの結果
SODの結果