読書時間:4.0h
一読:あり
再読:あり
R指定:なし
著者:山口桂
刊行:2020年8月
価格:920円+税
出版:平凡社
クリスティーズ・ジャパンCEOから見た芸術のあり方
絵を教養ではなく「自分事」として見る
一流のものを見よ、触れよ
オークションの現場からアートが見える
アートとの向き合い方、お教えします
アートの見方、お教えします
偽物を出品したり、価値あるものを激安で出品したり、オークションの難しさは価値を見極めることにある。
見極めは「一流品に触れる」しかない。
それが背景にあるのか、美術品の見かたも、Don't think Feel
をお勧めしている。
展覧会では、各部屋でお気に入りを決め、最後に一番のお気に入りを決める。なぜ気に入ったのか、後から考える。
これが自分事として美術に触れるコツらしい。
説明書きで背景を理解してから観る身としては全否定されたような気分だが、音楽ではルーツやプロデューサーで深掘りしている。
美術館は気合をいれて行く場所であり非日常感が強いので、音楽と同じノリで美術に触れたほうが身近になりそうだ。
お金のあるところに一流品は集まる。海外ではカジノに美術館が併設されているのはそのためだ。
ビジネスチャンスが少ない国にはアートも集まらないらしいが、東京都美術館では著名な画家の展覧会が続き、良いアートが集まっているように思えるのは、良いところだけ見ているから!?
著者は美術館に棚卸しを提案している。
美術館には展示もせず保管しているだけの死蔵品がある。これを売却して他の作品を購入する提案は、公立美術館では受け入れられない。
税金で買ったものを売るなんてとんでもないというわけだ。
日本には公的な美術館ばかりなことも問題で、あいちトリエンナーレ2019のように、国の意向に沿わない(と思われる)展示は中止に追い込まれることもある。
メトロポリタンは、美術館のあるべき姿といえるだろう。
2017年 MeToo運動が広がる中、バルテュスの夢見るテレーズに対して抗議の声が上がった。
それに対する回答は、
『芸術に関して知識に基づいた議論を行い、独創的な表現に対して敬意を払うことが、文化の発展をうながすことにつながります。今回のような出来事は、対話のきっかけをもたらしてくれます』
抗議は「撤去のきっかけ」ではなく「対話のきっかけ」
シビれたので名言に入れました。
ちなみに、メトロポリタン美術館はファンド系で、日本にないタイプの美術館。
撤去して終わりでは議論も成り立たない。
批評も成り立たないのようでは まともなアーティストが育たない、と著者は憂いている。
芸術だけに留まらない、ビジネス書のような一冊でした。