読書時間：3時間（途中ナナメ読み）
一読：あり
再読：あり（かなあ）
R指定：なし
著者：呉座勇一
刊行：2018年3月
価格：880円+税
出版：角川新書
推薦図書
日本中世史における陰謀を緻密に検証して訂正する
まえがき
貴族の陰謀に武力が加わり中世が良まれた
1.保元の乱
2.平治の乱
陰謀を軸に「平家物語」を読み直す
1.平氏一門と反平氏勢力の抗争
2.源義経は陰謀の犠牲者か
鎌倉幕府の歴史は陰謀の連続だった
1.源氏将軍家断絶
2.北条得宗家と陰謀
足利尊氏は陰謀家か
1.打倒鎌倉幕府の陰謀
2.観応の擾乱
日野富子は悪女か
1.応仁の乱と日野富子
2.「応仁記」が生んだ富子悪女説
本能寺の変に黒幕はいたか
1.単独犯行説の紹介
2.黒幕説の紹介
3.黒幕説は陰謀論
徳川家康は石田三成を嵌めたのか
1.秀次事件
2.七将襲撃事件
3.関が原への道
終章 陰謀論はなぜ人気があるのか？
1.陰謀論の特徴
2.人はなぜ陰謀論を信じるのか
「歴史は科学」
終章だけでも著者の意図は伝わるが、緻密な検証を見せつけたられた後は、「歴史は科学」が深く心に刻まれた。
1～5章は平安時代から南北朝時代、6章は本能寺の変、7章は関ヶ原合戦
歴史にさほど関心がないので、○○の変とか□□の乱とか聞いても( ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝ
そのうえ、藤原△△、藤原○△、足利△△、足利△○、、、わけわからん。結論は、
日本中世史の陰謀は少ない
結論について何も言えないので、呉座勇一が古文書をどれだけ読み解いているか列挙する。（ざっくり年代順）
鎌倉初期の説話集
平信範の日記
保元の乱の顛末を叙述した軍記物
鎌倉幕府の準公式歴史書
平氏と源氏の宿命的な対立を強調する傾向がみられる
鎌倉幕府の正当性を明らかにするために編纂されたので、義経関係の記事は曲筆の恐れがある
北条氏が鎌倉幕府の実権を握った時代に成立した歴史書だから、北条氏と対立した頼家を悪く書いた可能性がある
藤原家実の日記
藤原定家の日記
白川業資
軍記物
鎌倉末～南北朝時代の歴史を叙述した軍記物
平家物語の挿話を下敷きにしたと思われる逸話がしばしば見られる。無礼講での討幕計画は、平家物語の鹿ケ谷説話を参考にしたかも
足利直義の毒殺は支持する研究者が多いが、疑わしくなってきた
足利尊氏に幕府裏切りを進言したのは、母清子の兄にあたる上杉憲房
北条高時討伐を命じる後醍醐の綸旨を尊氏に届け、再三挙兵を促したのも細川和氏と上杉重能
洞院公賢の日記
応仁の乱の顛末を叙述した軍記物。同時代史料と比べて信頼性が大きく落ちる
足利義正は管領の畠山政長の屋敷への御成を中止し、将軍御所で義就と対面した
義就は山名宗全の屋敷を借りて義政を迎えた
江戸時代初期の歴史書
信頼性の低い史料
明智光秀は67歳。こっちのほうが正しそう
光秀が謀反の決意を詠んだとみる人もいる
惟任退治記より信頼性が高い
立花京子がこれをもとに朝廷黒幕説を提起
米沢藩上杉家編纂の編年史料集
米沢藩が編纂
寛永17年(1640)に往時を回顧して書いた
秀次の謀反はあくまで噂に過ぎない
秀次の謀反はあくまで噂に過ぎない
小瀬甫庵
七将襲撃事件の七将が間違っている
板坂卜斎
日本中世史の陰謀論に陥らないための三箇条＋１
・陰謀論者は、何も史料が残っていないのは陰謀だからという
・一つの事件だけに注目して読み解くと誤る
・信頼性の低い史料も、すべてが間違いではない
・クーデターは誰にも知られぬうちに迅速に行わなければ成功しない（史料が少ない）
陰謀論に陥らないための三箇条＋１
・最大の利益を得たものが真犯人であるという推理は小説だけ
・大きな事件を考察する場合、結果に見合う大きな原因を求めがち
・加害者と被害者が実際には逆であるという手法は、陰謀論の基本
・自分だけが真実を知っているという優越感は、陰謀論に陥る要因のひとつ
歴史の陰謀をエンタメとして楽しむのは構わないが、それを真実と提唱する人が目立つようになってきた。
歴史学者は陰謀論に構っているほど暇じゃないので、何も言わないからますます陰謀論が蔓延る。
呉座勇一が本書を上梓した理由である。
呉座勇一は歴史学者なので、日本中世史を題材に陰謀は少ないことを検証したのであって、現代でも陰謀は少ない。真の結論は、
陰謀は少ない
振り返ると自分も陰謀論というかトンデモにハマっていたことがありました（いや、ギリギリセーフ!!たぶん）
特殊相対性理論は間違い
なんかおかしいと思いながら、どこが間違っているか分からず、全部読みました
（本は買ってないよ！）
ダークサイドに落ちないで済んだのは、アインシュタインを尊敬していたからで、そうでなければ落ちてました
間違いを指摘したサイトを載せておきます。
最後に仮説
藩お抱えの絵師がいたように
『藩お抱えの小説家がいた』
きっといるんだ
絵師だけじゃあない
小説家もきっといる