読書時間:4h
一読:あり
再読:なし
R指定:なし
著者:葉室麟
刊行:2013年11月
価格:686円+税
出版:祥伝社
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
家老となった男の嫉妬により、10年後の切腹を命じられた男の物語
『未練が無いと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。この世をいとおしい、去りとうない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう』
という慶仙和尚の一言にシビれた。死を美化するのは好きじゃないから。
違和感があったのは兵右衛門を殴ってしまうところくらいで、それ以外は悟りを啓いたかのような秋谷。カッコイイし、いい話だと思った。最初は。
慣れない時代劇小説だったが、ミステリー要素に引き込まれて一気読み。筋が分かって再読すると、気づかなかったところに気づいた。
主役の予想どおりに事が進むから主役なのだろうが、秋谷は神(著者)のような立ち位置にいる。
良いも悪いも記録し、後世の人が判断すればいいというのは、100年先を見ている社会学者のよう。年貢については、
『正当な年貢などというものはない。百姓にしてみれば年貢などない方がよいのだ。だが、武士は年貢がなければ食ってはいけぬ。おたがい生きるために食扶持を取り合うのであるからして、いがみ合うのも無理はない』というセリフに疑問が湧いた。最初に税を考え出したのは誰だ?という疑問が。
秋谷の生き様に目がいきがちだが、さりげなく社会的なメッセージも込めるという葉室麟のテクニックは、再読しなかったら気づかなかったど。もう一つ、
申し開きをすれば赦すと伝え聞いた秋谷が、申し開きをせよということは疑われているということ、と言って申し開きをしなかったのは、言い訳しないカッコよさと思った。最初は。再読したら、
赦す側の都合もあるんじゃあないか、と気づいた。何も無しで無条件に赦したら、周りに示しがつかないのではないだろうか?
悟りを啓いたような秋谷がそこまで頭が回らないハズがない。
再読で気づかなかったところに気づくということに気づかされた一冊でした。読書レベル+1
