ヒルビリー・エレジー | サンディの今日もワイン

サンディの今日もワイン

サンディがワインと本についてあれこれ言います。

2020年2月3日(節分)サンディは永眠しました。18年間ありがとう。
ひきつづき、ワインと本についてあれこれ言います。

マルチーズだよー オラも田舎もん

読書時間:3h
一読:あり
再読:なし
R指定:なし
著者:J.D.ヴァンス/訳:関根光宏・山田文
原題:Hillbilly Elegy
刊行:2017年3月
価格:1800円+税

出版:光文社
本本本本本本本本本本本

これは2つの文化を渡り歩いた米国人の物語


スコッツ=アイリッシュは貧しいと言われるが、そんなの決まってるじゃん!働かないんだもん。
サボるというより、俺の仕事じゃねぇみたいなプライドと、真面目に働いても何も変わらねぇみたいな諦念がある。
家族想いだが、人様に迷惑かけちゃいけねぇみたいな通念がある。
言う事とやる事がぜんぜん違うみたいな建前社会がある。ひとつ引用しよう

『ミドルタウンでは誰もが口々に一生懸命働くことの大切さを説く。30パーセントの若者が週に20時間しか働いていない地区でも、誰ひとり自分のことを怠け者と思っていない。平均的な白人労働者階層のほうが大卒の白人より長時間働いているというのは、間違った情報だ』

こんな人達なのだ。
失敗の責任は自分以外の人に押し付ける人達。
彼らが、何も変わらないヒラリーより、何するか分からないけど何かやってくれそうなトランプに票を入れるのも分かる。

こんな町だから、学位を取っても無駄と思うのは致し方ない。それでも著者には祖母がいたから成功できた。祖母が学位は大事と諭したからだ。
それと、海兵隊に入ったのも良かった。スコッツ=アイリッシュに兵役を義務付ければ問題解決じゃないか?と思えるくらい良かった。
海兵隊では体力だけでなく、一般常識も手に入れることができた。そう、
ヒルビリーは世間知らず。大企業の社員が自社のやり方しか知らないような世間知らずなのだ。

章立て

1アパラチア-貧困という故郷
2中流に移住したヒルビリーたち
3追いかけてくる貧困、壊れはじめた家族
4スラム化する郊外
5家族の中の、果てのない諍い
6次々と変わる父親たち
7支えてくれた祖父の死
8狼に育てられる子どもたち
9私を変えた祖母との3年間
10海兵隊での日々
11白人労働者がオバマを嫌う理由
12イェール大学ロースクールの変わり種
13裕福な人たちは何を持っているのか?
14自分のなかの怪物との闘い
15何がヒルビリーを救うのか?

成功後の12章から、ひとつ引用しよう

『上流階層に属する人が以前はそこに所属していなかった新参者に対して心を開くことが必要になるだろう』

上流社会の人たちも下流社会の人たちと交わることがないから、世間知らずなのだ。下流出身の著者は、上流の常識の違いから逆境的児童期体験(ACE)を知ることになる。
著者は祖母のおかげで下流を抜け出せたが、同時に介入の難しさも書いている。

育児放棄、ヤク中、親同士の喧嘩、離婚、直接危害がなくても、こういう体験をした子供は病んでしまう可能性が高い。

事件は幼少時代に起こっているんだと分かっても、他人に何ができる?

やっぱり安心は深い

 

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アメリカのアンダークラス-本当に不利な立場に置かれた人々 明石書店