ナチスのキッチン | サンディの今日もワイン

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サンディがワインと本についてあれこれ言います。

2020年2月3日(節分)サンディは永眠しました。18年間ありがとう。
ひきつづき、ワインと本についてあれこれ言います。

マルチーズだよー 画像はどこかへ消えました

読書時間:6h
一読:なし
再読:なし
R指定:陰謀論好きな人はNG(OK!?)
著者:藤原辰史
刊行:2012年5月
価格:4000円+税


台所史に無関係なナチを絡めた論説

『伝統とテクノロジーの共存はしばしば指摘されるナチスの二律背反であるが、この問題に台所という視点から迫ってみることこれが本書の目的である』

目的は明確だけどよく考えてみて
伝統とテクノロジーが二律背反かどうかは、ナチスは関係ない
序盤でケチがついた嫌な予感は、この先、当たることになる。(6hも掛かったのは、そのせい)
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台所が竈だった時代からコンパクトになっていく過程は、時代の必然と言える流れで解り易く、今にも通じるところもあって面白かった。
これにナチを劇画的に絡めると、途方もなく文章がウザくなる。

主婦向けの雑誌に家電の広告が載っているのは購買意欲を煽るためであり、家電が普及した理由は「便利」だから。これ以上の理由はない。
これが著者の手に掛かるとこうなる。

『日々の仕事に埋没する主婦を煙と煤から解放し、仕事に活力を与え、家庭の平和を保つという機能を、広告媒体を通して購買者に繰り返し訴えることで電器産業が市場を拡大していく、ということが、この冊子から読み取れるのである』

これは読み取りではない。連想だ。

「調理の喜び」という主婦向けレシピ雑誌から「家庭の平和」や「市場の拡大」を読み取ってしまうノリが、流れる読書の邪魔だった。ツッコミ始めるとキリがないので、本題へ。

「ナチ化」

この一言だけでは、とんでもなく非人道的なことのような事をしているような印象を受けるかもしれないが、政府の介入というだけの事である。全体を通して受けた印象は、プロパガンダの巧さだった。
女中が担っていた台所仕事を主婦が担うことになり低くみられていた仕事を、主婦にランクを付けることによりモチベーションを上げたり、食料不足ゆえに考え出した「アイントプフ日曜日」(国民全員が日曜日にアイントプフを食べる)キャンペーンなど、人の心を掴むのが巧い。実際のアイントプフはこちら

特に、食材を一切無駄にしないという方針は、見習うべきところもあると思った。
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途方もなくウザい本だったが、良いネタが1つだけあった。

セントラルキッチン(共同台所)

第一次世界大戦のときに作られたものだが、食料不足ゆえに廃れた。(「来るべき台所のために」の章で、セントラルキッチンが廃れたのは個人の嗜好が反映されないことが大きな原因であったと書いてあるが、そうは読み取れない)

食料が十分にある現代なら、セントラルキッチンの試みはうまくいきそうな気がする。
皆で料理したり食べたりする場があれば、新しい繋がりが生まれそう。頭堅いから良い仕掛けが思いつかない...