Nagai ~ Nyokodo | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

舞台「Nagai ~ Nyokodo」を観て来た。

 

「長崎の鐘」で知られる永井隆博士の生涯をかいつまみ、如己堂(にょこどう)での生活の話だ。

 

永井博士は、放射線医学の研究から白血病に侵され、また長崎に投下された原爆により重傷を負いながらも、43歳で生涯を閉じるまで、病床から「如己愛人(にょこあいじん)」「平和を」のメッセージを全世界に訴え続けた。

 

また、博士は、長崎での自身の被爆体験を綴った「長崎の鐘」や闘病中の博士が自分の死後残される子たちへの思いを描いた「この子を残して」などの名作を著し、科学者であると同時にすぐれた文芸家でもあった。

 

ちなみに、「如己堂」とは、永井博士の病床兼執筆活動を続けた書斎で、聖書の一節「己の如く隣人を愛せよ」という言葉から、「如己堂」と命名された。

 

 

 

とにかく演出が良かった。
 
6人の俳優がシーンによって衣裳の早替えをするが、友人のM子さんは、着付け担当であったが、イタリア人の俳優たちは既に自分たちで着物を着ることが出来るのだと言う。
 
また、後からわかったが、永井博士がパスカルの「パンセ」を愛読し、また雨に濡れ急性中耳炎にかかったことなどが、演出にかなり反映されていた。
 
永井博士の妻・緑役は日本人のカンタンテであった。やはり日本人だけあって、着物の着こなしも素晴らしく、背筋がすっとしており指先、歩き方も女性らしさが醸し出されていた。
 
セリフはなかったものの、ハミングあったり、彼女が亡くなるシーンは、やはり舞台が長崎で、子供を残して逝ってしまう「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」のアリアは本当に素晴らしかった。
 
そして、演出の一つとして置かれていた二つの衝立には、後方から光を当て、俳優の影をスクリーンに投影したり、またそこに様々なデッサンの動画が映し出され、非常に興味深かった。

 

 

 

 
舞台終了後、舞台裏に挨拶に行った。M子さん、日本人の歌い手さん、そして、主演であり脚本担当されたというアンドレア氏にもお会いでき感動!
 
来年2月にミラノで4日間再び公演されると言う。思わず、台本集であるスクリーンプレイを購入。

 

 

  

 

 

 

“La sofferenza, accolta con amore, raffina il cuore dell’uomo e l’esperienza del buio rende più acuta la visione dello spirito”
苦しみは愛とともに受け入れられ、人の心を磨き、暗闇の体験は精神の視野を研ぎ澄ます。
 
永井博士の崇高な精神を遠い異国イタリアで、知ってもらおうと講演会や舞台を企画していることは素晴らしいことだと思う。
 
来年の2月は、在ミラノのカトリック信者はもちろん、日本人、そして多くのイタリア人にも観てもらいたいと思う。
 
 
今日の一句
病床より 平和を叫ぶ 如己愛人