働くということ | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

昨日、いつも行くメルカートのバングラデッシュ人の屋台に顔を出した。
 
普段だと満面の笑顔と元気な声で「ウエーイ! チャオ、モシ!(日本人の事を“モシモシ”と呼び、私はいつの間にやら“モシ”と呼ばれるようになった!) コメスタイ?」と会話が始まるのに、それもなく、逆に怒ったようにさえ見えた。
 
「どうしたの?疲れてるの?感じ悪いよ!」と冗談まじりに言うと、「わかる?食べてないからねー、ラマダンだから。」と言われ、そうだ!ラマダンだった。言ってはいけない事を言ってしまった!と気づいた。
 
ラマダンとは、イスラム教徒が神の恵みに感謝し、約一ヶ月断食を行う期間をそう呼ぶ。一ヶ月間全く食べないわけではない。日没から日の出までの間(夕方以降から翌未明まで)に一日分の食事をとるというもの。水分さえ摂ってはいけないらしい。
 

1ヶ月もの間、渇きと空腹に耐える苦行に思えるが、敬虔なムスリムは毎年のこのラマダンを心待ちにしているとも言う。空腹に耐えて自己の欲望を制する自己鍛錬。食べ物があることに対する感謝と食べるものさえない貧しい人への理解。同じ境遇を共有することによって、家族とコミュニティへの理解と絆を深める、という。

 

それでも普段はミラノの灼熱の時期に当たることが多かったが、今年は4月13日から5月12日まで。

 

ところで、帰国中の長男は、3月から引越しのアルバイトを始めた。今まで、時間にルーズで、休みの日は午後までゆっくり寝てはダラダラしている生活だったが、朝5時半には起きて出勤。残業も多く、夜11時過ぎに帰宅になることも多いという。

 

それでも朝起きて、自分で朝食を作って食べて洗い物をし、きちんと布団もたたんでしまっていくという。母が起きてそれはしなくてもいいから...と声をかけると、逆にまだ朝早いんだからまだ寝てて、といって制されるのだという。

 

引越しのバイトと聞けば、力仕事で体力的にきついというイメージがある。引越しの繁忙期だったので、1日に2−3件の引越しが入ることも多く、また関連会社の助っ人に入ることもあるのだそうだ。エレベーターがなく、階段での運搬もよくあるそうで、初めの頃は身体中が痛くなり、寝込んで行けない日もあったという。

 

いずれにしてもタイトなスケジュールで動く仕事であるから、ある程度時間配分や要領がよくないといけない。

 

時に、「気が利かない」などと言って暴言をはいたり、圧力的な社員もいるそうだが、「まあ仕方ないよ。あんなにきつい仕事なんだもん。ストレスたまるよ。」と言っており、別の立場で人を見ることができるようになったのは成長のしるしだな、と思う。

 

今まで経験のなかった理不尽なことを受けた場合、どう対処するか。それは大きな経験だ。(なるべくなら経験したくない事だが、)いつまでも引きずっていると業務にも支障が出るし、今後落ち込んでもすぐに立ち直る術を得ることだろう。

 

また、仕事を覚えると、新しいバイトに仕事を教えることもあるようで、コミュニケーション能力もないといけない。先輩の話によれば、以前ほどではないらしいが、それでもお客さんからチップがもらえたり、お菓子をいただくこともあるようで、喜んでいるようであった。

 

一生やる仕事とは思わないけど、初めにきつい仕事を経験しておいて良かったという。確かに、学生時代、楽で、時給のいい仕事ばかりについていたので、仕事を甘く見ているのでは?という心配もあったが、確実に学んでいるんだな、と嬉しく思う。

 

人生何事も勉強だよ、と話した。経験した分、人の気持ちがわかるようになるし、視野が広がるのだから。

 

友人曰く、「宅配便や引越しのバイトを選ぶ男子ってめっちゃ好きやねん❤️敢えてしんどいのわかっててもやる!ってとこ魅力的に映る~」なんだそうだ。

 
私もベビーシッターは想像以上の重労働だ。帰宅すると心身ぐったり。こんなに週末を楽しみに、しかも何もせず家にいたい!と思った事があるだろうか。まさに安息日。
 
今週は映画を見よう。編み物をしよう。本も読もう...リラックスしたいのに、次から次へと用事が入り、あれもしなくっちゃ。これもだわ....などとやっていると、あっという間に週末は終わってしまう。
 
体も心もリセットし、気持ちよく週を迎えたいもの!