1ヶ月もの間、渇きと空腹に耐える苦行に思えるが、敬虔なムスリムは毎年のこのラマダンを心待ちにしているとも言う。空腹に耐えて自己の欲望を制する自己鍛錬。食べ物があることに対する感謝と食べるものさえない貧しい人への理解。同じ境遇を共有することによって、家族とコミュニティへの理解と絆を深める、という。
それでも普段はミラノの灼熱の時期に当たることが多かったが、今年は4月13日から5月12日まで。
ところで、帰国中の長男は、3月から引越しのアルバイトを始めた。今まで、時間にルーズで、休みの日は午後までゆっくり寝てはダラダラしている生活だったが、朝5時半には起きて出勤。残業も多く、夜11時過ぎに帰宅になることも多いという。
それでも朝起きて、自分で朝食を作って食べて洗い物をし、きちんと布団もたたんでしまっていくという。母が起きてそれはしなくてもいいから...と声をかけると、逆にまだ朝早いんだからまだ寝てて、といって制されるのだという。
引越しのバイトと聞けば、力仕事で体力的にきついというイメージがある。引越しの繁忙期だったので、1日に2−3件の引越しが入ることも多く、また関連会社の助っ人に入ることもあるのだそうだ。エレベーターがなく、階段での運搬もよくあるそうで、初めの頃は身体中が痛くなり、寝込んで行けない日もあったという。
いずれにしてもタイトなスケジュールで動く仕事であるから、ある程度時間配分や要領がよくないといけない。
時に、「気が利かない」などと言って暴言をはいたり、圧力的な社員もいるそうだが、「まあ仕方ないよ。あんなにきつい仕事なんだもん。ストレスたまるよ。」と言っており、別の立場で人を見ることができるようになったのは成長のしるしだな、と思う。
今まで経験のなかった理不尽なことを受けた場合、どう対処するか。それは大きな経験だ。(なるべくなら経験したくない事だが、)いつまでも引きずっていると業務にも支障が出るし、今後落ち込んでもすぐに立ち直る術を得ることだろう。
また、仕事を覚えると、新しいバイトに仕事を教えることもあるようで、コミュニケーション能力もないといけない。先輩の話によれば、以前ほどではないらしいが、それでもお客さんからチップがもらえたり、お菓子をいただくこともあるようで、喜んでいるようであった。
一生やる仕事とは思わないけど、初めにきつい仕事を経験しておいて良かったという。確かに、学生時代、楽で、時給のいい仕事ばかりについていたので、仕事を甘く見ているのでは?という心配もあったが、確実に学んでいるんだな、と嬉しく思う。
人生何事も勉強だよ、と話した。経験した分、人の気持ちがわかるようになるし、視野が広がるのだから。
友人曰く、「宅配便や引越しのバイトを選ぶ男子ってめっちゃ好きやねん❤️敢えてしんどいのわかっててもやる!ってとこ魅力的に映る~」なんだそうだ。