めりはり | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

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普段使っている言葉でも、いざその言葉の語源を考えるとわからないことがある。

 
その一つが「めりはり」。
 
このコロナ禍で「めりはりのある対策を」、ステイホーム時期「めりはりのある時間の使い方を」とよく耳にした。
 
「めりはり」とは、元来日本の伝統的な音にまつわる用語なのだそうだ。漢字では「減り張り・減張/乙張り・乙張」などと書き、「減る(める)」は「ゆるむ」の意味で、音を低めや弱めに発することをいい、「張る」は音を高め、強めに発することを言う。


また、現代でも尺八などでは音程を変化させる時に「めり」「かり」という言葉を使い、漢字では「沈り浮り」と書く。
 

「めり」は「下がる」「減る」。邦楽で低音を意味するそうだ。

 

一方「かり」は「強いてさせる」を意味する動詞の「かる」の連用形で高音を意味するのだと言う。

 

そこから強弱などの起伏、テンポや場景の緩急をつける「めりはりをつける」となったとか。


余談だが、フリマアプリの「メルカリ」(mercari)は『マーケット』という言葉の起源であるラテン語•mercari (商いする)が語源。

 

ところで「めりはり」は生き方にも言える事だろう。頑張りすぎ、走り過ぎは時に周りが見えなくなるし、張りつめた糸は切れやすい。

 

中庸の徳たる、其れ到れるかな。民鮮きこと久し by孔子


不足でもなく、余分のところもなく、丁度適当にバランスよく行動できるということは、人徳としては最高のものだ。時に自制する強い意志も必要か。

 

何気ない言葉も意味や語源が分かると面白くなる。日本語って深いなあ。