祈り ~ Urbi et Orbi | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

 

27日の夕方(日本時間28日2時)にパパ様は「新型コロナウイルスの終息を願う世界一斉の祈り」を捧げられた。

 

サンピエトロ広場は、イタリア封鎖のため無人か?と思いきや雨だったので傘を差して立っている人の影がちらほらみえた。

 

パパ様は、サンピエトロ広場の坂を冷たい雨の中, 傘もささずにゆっくり上っていかれた。それは歴史的瞬間であったと思う。信者ではなく、ましてや無宗教、または宗教なんて大嫌い、と言う人がこのパパ様の姿を見て、どう思われたことだろう?

 

ご高齢でもあり, 足を引きずり, 肺の一部を摘出されており、新型コロナウイルス感染に限らず, 風邪でもこじらせたら大変なことだ。しかも既に風邪気味という話だ。見ていてドキドキしてしまった。この歴史的瞬間。ゆっくり坂を重い足取りで上っていくのだ。それは、疲労に満ちた人間の歩みかもしれない。そして、雨の中歩む姿に、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が重なってしまう。

 

ちなみに、この「雨ニモマケズ」のモデルはお釈迦様の前世でもあるという「常不軽菩薩」と言う方なのだそうだ。仏教とカトリックではあるが、聖人的歩み、模範?理想的人間像というのだろうか。

 

ところで、祈りにおいてパパ様はマルコによる福音書(4:35-41)より、イエスが突風を静めるエピソードについてこう黙想された。

 

35その日の夕方になって、イエスは、「向こう岸に渡ろう」と弟子たちに言われた。 36そこで、弟子たちは群衆を後に残し、イエスを舟に乗せたまま漕ぎ出した。ほかの舟も一緒であった。 37激しい突風が起こり、舟は波をかぶって、水浸しになるほどであった。 38しかし、イエスは艫の方で枕をして眠っておられた。弟子たちはイエスを起こして、「先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか」と言った。 39イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。すると、風はやみ、すっかり凪になった。 40イエスは言われた。「なぜ怖がるのか。まだ信じないのか。」 41弟子たちは非常に恐れて、「いったい、この方はどなたなのだろう。風や湖さえも従うではないか」と互いに言った。

© Executive Committee of the Common Bible Translation 共同訳聖書実行委員会 1987,1988

© Japan Bible Society 日本聖書協会 1987, 1988


>嵐は、私たちの弱さを暴き出し、私たちが計画的、習慣的に築き上げた安心は、偽物で表面的なものであったことを明るみに出します。私たちは眠り込み、社会や共同体を支え、力を与えていたものを、放棄してしまったことを悟らせます。嵐は、皆の魂を育んでいたもの、私たちがしまい込み、忘れかけたものを発見させます。

 

>嵐によって、私たちのエゴを隠し、自分の外面だけを繕っていた、ステレオタイプの仮面は外れました。そして、再び、兄弟としての所属、祝福された共通の所属を再発見しました。

 

主よ、嵐の中に私達を見捨てないでください。

 

その後、サンピエトロ広場の坂の上には1522年, ペストからローマを救ったという「奇跡の十字架」が掲げられていた。

 


この十字架は、ローマの中心地にあるサン・マルチェッロ教会(Chiesa di S.Marcello al Corso)にある十字架像なのだが、1522年にペストがローマを襲った際、感染の鎮静を祈る行列で掲げられたものだ。当局からの禁止にもかかわらず、民衆によって始められたこの行列は16日間にも及び、十字架を掲げた行列がローマのあらゆる地区を練り歩く中で、ペストは次第に下火になっていった、という。1600年から、「聖年」を記念するたびに、サン・マルチェロ教会からサン・ピエトロに向かう行列が行われるようになった。十字架の裏には「聖年」が行われた年と、その時代の教皇の名前が彫られているという歴史的重要な十字架なのだ。

 

 

また、その後に世界中で外出制限を受けている人々に対して、異例の"Urbi et Orbi"(ウルビ・エト・オルビ)の祝福が送られた。”Urbi et Orbi"の祝福が送られるのは通常、教皇選出がされる時と、毎年のクリスマスと復活祭のみだ。歴史上初となった今回の祝福は、テレビやラジオ、ソーシャルメディアを通じて配信された。

 

パパ様は、「何もかもが混乱しているように見える時には、結束や希望こそが、力や意味を与える」と語られ、また、現在の困難に打ち克つためには結束することが大切だと訴えられた。

 

ウイルスのために命を失った人々のために共に祈りましょう。また、病人への奉仕に命を捧げている医療従事者のために寄り添い、祈りましょう。この世界的苦しみが一日も早く終息しますように。

 

https://www.vaticannews.va/it/papa/news/2020-03/papa-francesco-omelia-testo-integrale-preghiera-pandemia.html

日本語版

https://www.vaticannews.va/ja/pope/news/2020-03/momento-di-preghiera-in-tempo-di-epidemia-omelia.html