今週の一冊 20 〜 猫の事務所 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

  宮沢賢治著/黒井健(イラスト)
 
主人公の「かま猫」は、猫の種類ではなく、かまどの中で寝ている猫と紹介されているが、実は、皮が薄いため、かまどの中で寝ざるを得ず、故に煤で汚れ、周りの猫から嫌われている猫。
 
かま猫は、猫仲間の嫌われ者。事務所でも、他の書記の猫たちに意地悪ばかりされており、まさに差別やいじめの虚しさを描いた絵本とも言える。生まれた土地や生活上の理由による差別問題...それは、現代社会にも蔓延っている問題。
 
金の獅子が現れて、やったー、かま猫が救われる!悪者を懲らしめよ〜!と思った矢先、「...やめてしまえ!えい。解散を命ずる。」と言って事務所閉鎖でちゃんちゃん?‼︎
 
そして、語り手(賢治)はこの結末に対し、「ぼくは半分獅子に同感です」と言う。ではその半分は?いじめをやめさせるための獅子の判断は正しかったとはいえ、事務所(またはそのいじめの集団)が消えたところで、いじめが根本的に解決したとは言えない。どうも不完全燃焼でスッキリしない。
 
よくいじめには、いじめられる方にも原因がある、という言い方を耳にする。それを否定できないケースもあるだろうが、人間相手を思いやり、尊重する気があれば、排除にまで追い込むことはないのではないか?と思う。
 
私も若い頃、いじめとまではいかないだろうが、職場で嫌がらせをされたことがある。私の名前で大量のお弁当を何度も注文された。その注文の仕方は内部に通じた者しか出来ないこと。夜中のいたずら電話もひどかった。犯人は明らかに誰だかわかっていた。何をやってもうまくいかず職場を辞めた人間だったが、当時何事も順調だった私に対する当てつけだったのだろうと思う。
 
先輩に「あなたが困ったり、オロオロする姿が相手の耳に入れば余計に喜ぶのよ。毅然としていなさい。」と言われた。逆に相手が、かわいそうにさえ思えたものだ。
 
もちろん、悪質ないじめは,自死にまで追い込むことがある。集団からの排除は、身体的暴力以上に存在を無視するという精神的暴力であり残酷極まりない。
 
とはいえ、差別心は誰の心にも潜む者なのかもしれない。移住民や難民があふれるミラノ。パパ様は、「受け入れ、保護、支援、統合を」という四つの言葉を掲げ、具体的な行動を私たちに求められているが、相当な覚悟と忍耐と愛情がなければ、そうそうできるものではない。
 
昨日から2年間の予定で、国際カリタスでは「難民救済」のキャンペーンが始まった。まだまだ移住民や難民の少ない日本だが、差別やいじめが少しでも減ってほしいと思うもの。