喜びの連鎖 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

 

毎日忙しいとゆっくりしたいと思う。けれど、予定がないとダラダラ、でれでれ過ごしてしまう今日この頃。本を読めばウトウトし、編み物をしてもウトウトしてしまう。なんなんだ!

 

そうだ!シスターTに会って来よう!思い立って、養老院へ電話してみた。シスターTは一昨年末にミラノに戻ってきた86歳の日本人シスター。

 

シスターになってから、イタリアには何度も滞在されているので、イタリア語は問題ない。日本でもデイケアーに通っていたようだが、やはり余生はご自分の修道会の本部で過ごしたい、というご意思でミラノに戻られたのだ。

 

養老院は修道院によって経営されており、受付や看護婦、また入っている人たちも皆シスター。午前中にミサがあり、夕方に祈りがある。そして、昼食、夕食も病院よろしく、早いので、どうも尋ねる時間帯がつかめない。

 

だからと言って、出かけるついでにシスターのところに寄るのも失礼だ。常に時間を気にせねばならないからだ。

 

今日は昼食後のお昼寝が済んだあたりに行きますよ!というと、「本当?嬉しい!!」急に声が大きくなり、喜んでくださった。

 

私が幼きマリア会(マリアバンビーナ)の聖書の会に通い始め、早14年。代母のシスターMを訪ねているが、彼女は今でこそ80歳を過ぎ、仕事は引退したが、以前は修道会の会計の仕事をしておられ、世界中を飛び回っておられた。シスターMが不在だと、シスターTが代わりに講義をしてくださったが、全く講義のスタイルが違い、普段は一方的に「聴く」講義も、いきなり質問されたりするもんだから、目も頭も常にスタンバイ状態で、毒舌な講義は非常に楽しかった。シスターの話が心に響くたびに、涙ぐめば、「あなたよく泣くわね!」と一喝された。

 

昨年、10年ぶりに会った時、「あら、あなたやっと年相応になってきたじゃない。態度が立派になった。」と言われた。(褒められたのかなあ?笑)

 

12月は私自身の都合でシスターに一度しかお会いできず、心苦しかったが、今日会うと、顔色が良かった。杖をついておられるが、姿勢を保つためのものであり、本当は必要ないとまでおっしゃる。

 

シスターはいつもイタリア語で生活されていらっしゃるから、日本語忘れちゃいますでしょう?と尋ねると、「あらっいつも私は日本語よ。」とおっしゃる。えっどなたと?と聞くと、「神様よ。」とシスター。だって、ここ、皆年寄りばっかりで耳が聞こえないのよ。喋ったってイタリア語が戻ってこないの!とまでおっしゃるから笑ってしまう。頭はしっかりしていらっしゃるように思えるが、「私ね、2時間前のことは何も覚えてないの。」「でも毎日楽しいわよ。なに食べても美味しいし。」「でもこれだったら、日本にいても良かったわね。デイケアー楽しかったわあ。」とまでおっしゃる。これだけ、毎日、ご自分の周りの出来事を楽しまれたら、幸せなことはないなあと思う。

 

あっという間の2時間だった。

こちらがお礼を言う前に「楽しかったわ〜。」「本当に嬉しかった!」とおっしゃってくださった。そして、「あの2、3年生きたら十分ね!」と。いやいや、もっと私たちに元気を与えていただかないと困ってしまう。

 

喜びは連鎖する。できるだけ、シスターTの元を訪ね、この喜びをまた誰かに繋げたい。

 

 

画像は、養老院内のプレセピオ。天使の聖歌隊が音楽を奏でるそうだ。