現在日本のはるか南の海上に、台風17号が発生しています。今後も発達を続けながら、日曜日には小笠原に近づく見込みです。
ところで、おとといまで台風だった16号は温帯低気圧となり、現在日本の東海上にあります。
実はこの台風、実に興味深い経路を通りました。
まず、フィリピンの北部の海岸に上陸し、その後、台湾の南から東の海岸に沿って北上しました。そして中国の東海岸に上陸し、一度海に出た後、再び上海に上陸しました。上海に上陸した台風は、1989年以来のことです。それから、すぐに海上に出て東進し、韓国の済州島の手前で温帯低気圧に変わりました。
こんな風にフィリピン、台湾、中国に次々を上陸していく台風はなかなかあるものではありません。なんだか、台風16号には人格があって、わざと多くの国を回っているかのようにも思えました。
そこで、台風の気持ちで物語にしたらどんなふうになるかと思い、書いてみました。
(※台風16号のフィリピン名はマリオ、国際名はフォンウォンです。)
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僕の名前はマリオ。ニックネームはフォンウォンっていうんだ。僕が生まれたのは、太平洋のあったかい海の上。僕ら台風の寿命は5日くらいだから、僕は命を大切にしたいと思う。
できるだけ長生きして、たくさんいろんなところを見てみたいんだ。でも、お母さんが、人に迷惑をかけちゃいけないって言っていたから、なるべく気を付けようと思う。僕は人間にあいたいんだけど、どうやらみんなは僕が嫌いなようだ。なんでだろう。きっと僕がたくさんおもらしをしてしまうからかな。
だから自分で決まりをつくろうと思う。
1. 人がたくさんいる都市には行かない。
2. 陸には上がらないで、海岸にそって進む。
3. でも、なるべくたくさんの国にいく。
最初は、今いるところの一番近くの国、フィリピンにいってみようと思う。でもここは先週、カルメギ兄さんが訪れて、いろいろ悪いことをしたみたいだから、気を付けなければと思う。ぼくのせいで、これから生まれてくる弟妹に迷惑をかけたくはないもの。だから、人の少ない、ルソン島の海岸だけ見に行こう。
ルソン島は緑が一杯で、きれいなところだな。このまままっすぐ進んで、マニラ市内も見てみたいけど、ここは世界第5位の過密地域と聞いているし、やめておこう。嫌われるのはごめんだもの。
それになんだか少し疲れちゃった。海に出よう。
次は、台湾に行ってみたい。だって、僕もパールティーや飲茶食べてみたいもの。でも西には行かないようにしなくちゃ。西はいっぱいいっぱい人間が住んでいる。
はじめのうちは南の海岸だけ見たら、もう出て行こうと思ったんだけど、あまりにもいいところだったから、他も見てみたくなっちゃった。で、気が付いたら、東の海岸線を全部見て回っちゃってた。いけない、いけない。もう海に出よう。ここは東シナ海と言ったっけ。
僕は海に戻ると元気になるはずなんだけど、なんだか、力がでない。なんでかなあ。あぁ、そうだ、いろんな国を回ってきたから、その間に、体が擦れて傷だらけになっちゃったからだ。
でも力を振り絞って、次は中国に行ってみう。だって、中国は5000年も歴史があるって、お父さんが言っていたもの。大変なのは、中国は人口が多いこと。だから、なるべく人が多くなさそうな浙江省に、ほんのちょっとの時間だけ行くことにしよう。
ここは、湖があって、たくさん公園があって、楽園のようだ。でも、なんだか体が動かない。全然力が出ない。体を見てみると、あちこち傷ついていて、もう消えてしまいそうだ。
僕はもう死んでしまうのかもしれない。まだ生まれてから6日しか経っていないのに。できるならば、あともう一か所見たい。そうだ、すぐ北に上海がある。2400万人が住む大都会だから、絶対に行ってはいけないと自分で約束したけれど、でも僕、本当はたくさんの人間に会いたいんだ。僕はもう力もないから、もしかしたら、みんな僕のことを怖がらないかもしれない。それだったら死ぬ前に、上海に行ってみたい。
自然に足が向いていて、気が付いたら、もう僕は上海に来てしまった。人がたくさんいる。たくさんの人が、僕のことを見上げてみている。こんなに嬉しいことはない。ずっとここにいたい。でも、もう元気がない。それに僕は海の上で静かに死にたいんだ。
本当は韓国にも行きたかった。できれば、遠目からでも、今やっているアジア大会をみたかったんだ。でもしょうがない。それに、僕は日本が嫌いだから、このまま生きていたら、日本についてしまう。だって、日本人は、僕にはちゃんとした名前があるのに番号で呼ぶんだもの。16番だなんて、いやだ。僕はマリオなんだ。
僕は今日でこの世を去るけれど、悲しくなんかない。今日、弟ができたんだ。かんむりって名前だ。僕は、その名の通り、立派な大人になってほしいと思う。弟にこう伝えることにした。
僕は、いろいろな国を巡って、楽しい人生を過ごすことができたように思う。だけど、今になって思うと、これがいいことだったのか、ふと後悔することがある。だから、君にはこう伝えたい。
「島に行ってはいけないよ。海の上で過ごすんだ。できるだけ長く生きて、託された使命を果たすんだよ。なるべく北に、北に進んで、故郷で吸った温かい空気をそこに運んであげてほしい。そうすれば、僕たちは地球に貢献できる。人間は僕たちのことをおびえているけれど、僕たちは人に被害を与えようとか、そんなことを思っているわけじゃないんだ。ただ、人が好きなだけ。いつかそのことをわかってもらえる日がくるまで、ただひたすら自分達の仕事をしてほしい。
僕は死んで、温帯低気圧になるけれど、北の空で、君の成長を見守っているよ。
かんむり、一生懸命生きるんだぞ。」
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マリオの進路が動画で見られます↓
http://www.imocwx.com/typ/tyani_16.htm
(国際気象海洋株式会社より)
