この時期多くの人たちが願うものと言えば「ホワイトクリスマス☃」ではないでしょうか。
うっすら雪化粧した景色はクリスマスムードを引き立てます。今夜から明日にかけて日本で雪が降るのは、北日本の日本海側となりそうです。東京は例年通り降る気配なしです。
一方、アメリカやカナダの東部ではホワイトクリスマスどころの騒ぎではなくなっています。一面氷で覆われ、市民は停電のため大変な生活を強いられています。
その犯人は前にも紹介した、フリージングレイン(着氷性の雨)。過冷却の状態(氷点下でも凍らない状態)で空から落ちてきて、何か物に当たるとすぐに凍りつく雨のことです。
実は週末、今世紀最悪のアイスストーム(氷嵐)がカナダやアメリカ東部を襲いました。特にカナダ・トロントの被害が大きく、木々や窓ガラスなどには氷の膜が張り、道路が凍りつきました。1~3センチほどの氷の層ができたといいます。
凍りついた木々はその重さで倒れ、それが電線に引っ掛かるなどして広範囲で停電を引き起こしました。月曜日朝の時点でトロントだけでもまだ25万人ほど影響を受けているようです。道路はつるつるで通行がきわめて危険な状態となっています。また空の便も打撃を受け、欠航や遅延が相次ぎました。この影響でカナダでは少なくとも5名の死者が出ています。アメリカ東部でも被害が出て、このフリージングレインのほか、大雨により洪水が発生、数名の方が亡くなっています。
このフリージングレインをもたらしたのは強い低気圧と前線でした。寒暖差が非常に大きかったために非常に発達したのです。前面は、記録的な暖かさとなりました。たとえば、日曜日ニューヨークは21度まで上がりました。(この時期の気温は通常5度くらい)そして後面では真冬以上の寒さでした。
この地域ではフリージングレインはそれほど珍しいことではありません。年に平均12回から17回起こると言われています。ただ、今回は相当な量でしたので、被害が大きくなりました。
歴史に残っている氷嵐の一つは、1998年のものでした。
1月4日から10日にかけてカナダ・アメリカ東部で猛威をふるった氷嵐は、35人の死者を出し、幾日にも渡る停電は4百万人以上の人々に影響を及ぼしました。死者の大多数は寒さからうる低体温症によるものでした。ちなみに氷の厚みは最大で12センチにも達したと言いますから驚きです。
この被害のため、軍隊による大規模な援助活動が行われました。その人数16,000人。この数は朝鮮半島以来とも言われています。
この頃はまだ自家用発電機などがなかったために被害が大きかったのですが、これ以来長時間の停電に備えての設備が整い始めました。そのため今回の氷嵐は1998年のそれに匹敵するものであったけれども、被害は大幅に減っています。
ちなみに、こうした氷嵐による被害は通常の保険でカバーされることが多いようです。ただし、あまり被害が多くないにも関わらず保険請求をすると、将来かえって保険の掛け金が高くなる可能性があるので慎重にしたほうがいいと、ある記事に書かれてありました。
さて、今回被害をもたらした氷嵐は東カナダから遠ざかりつつありますが、代わって寒気が流入、さらに風も強い状態が続きます。このためカナダの気象局は、氷が落下してくる危険性や停電が長引く可能性が高まると警戒を呼び掛けています。
*参考リンク*
トロントの被害記事(写真つき)