秋もだいぶ深まってきましたが、今年はまだまだ台風シーズンが続いていますね。
10月に入ってから立て続けに台風が発生し、10月の台風発生最多記録を更新し続けています。
ご存知のように台風27号と28号が日本列島に向かっています。27号はすでに非常に強い台風、28号も金曜日までに同じくらいの勢力へと発達する見込みです。
このうち、特に注意すべきは27号。英語名はFrancisco(フランシスコ)です。明日にかけて強い台風として沖縄地方に近づき、金曜日には九州に接近、週末はもしかすると本州に上陸する恐れがあります。26号で甚大な被害が出た伊豆大島もかなりの影響を受ける見込みです。さらなる災害が心配されます。
一方の28号は金曜日に小笠原諸島に近づき、そのあとは本州の東の海上を通る予想が出ています。
さて、これらの台風の進路図を見てみると、非常に近いところを移動することがわかります。複数の台風が近づく恐れがある時、まず気象関係者が考えるのは「藤原の効果」の存在です。
藤原の効果とは、台風が1000キロ程度以内に複数存在する場合、互いが影響し合って、思いもよらない動きをするという現象です。特に熱帯性の擾乱が発生しやすい、北西太平洋で起こりやすいと言われています。
実は去年の8月にも見られました。
下記は、14号台風の経路(紫色の線)です。まずフィリピンの北東の海上で、南に移動し、北上したかと思うと、今度は台湾近くでくるっと一周。戻ってきてそのまま北上という特異なコースをとりました。
これこそまさに藤原の効果です。この時、後から発生した台風15号が近くにいたために、14号は想定外の進路をとりました。迷走した後、15号とちょうどいい距離感が保てたところで、後を追うように北上していったのです。なんだが、「ウサギとカメ」のような話ですね。先にスタートしたウサギが、途中で道草を食ってしまったために、後から来た亀に追い抜かされてしまったような、そんな結果です。
今回の台風27号と28号は、近づいたとしてもおそらく1000キロ以上離れていそうですから、この藤原の効果は起きないかもしれませんが、もし接近するようなことがあれば、想定外の経路をたどるかもしれません。気象庁の予報官泣かせとなる可能性ありです。
ところで、この「藤原の効果」の藤原さんとは一体誰なのでしょうか。
それは気象学者の藤原咲平(さくへい)氏です。1884年生まれで1950年に亡くなっています。ちなみに甥が、「八甲田山死の彷徨」を書いた作家で気象学者の新田次郎氏、大甥が数学者で「国家の品格」を書いた藤原正彦氏です。
ちなみに藤原氏は戦時中にある武器の開発に携わっていたことから、戦後中央気象台長(今の気象庁)の職から罷免されました。それは、風船爆弾です。ジェット気流を利用して、日本からアメリカ本土に爆弾を積んだ風船を飛ばすというものでした。退職後は、執筆活動や気象の教育に力を入れました。
なお、この「藤原効果」は世界的にも"Fujiwara effect(フジワラ エフェクト)"という用語で広く使われています。藤原氏は世界でもよく知られた気象学者です。

