去年の9月末に父の命があとわずかだと医者に言われても、私はまったくピンとこなかった・・。
普通の人間ならガンが体中に転移していたので痛みでのた打ち回っていてもおかしくなかったのに、父は気丈にしていたし、トイレも絶対人の世話になりたがらず思うように動けない体でベッドの横の簡易トイレですると言って看護士さんを困らせる位の元気があった。
尿毒症も併発して途中で何が何だかわからないことを言うことも多かったけど、男としてだらしがない姿だけは見せたくない・・と一生懸命に頑張っていたのだと思う。
父が亡くなる3日位前に、ベッドの横に座っていた私の顔をジーッと見て、
父はポツリと言った。
「お前、今幸せか・・・?」
そう私に訊ねた父の顔は今までで1番優しい顔に見えた。
今まで散々私を苦しめてきた張本人の父にこんな言葉を言われるとは思ってもみなかったので、とても不思議な気持ちがした。
父との間の今までの苦しみや悲しみがすべて長い長い悪夢だったように感じられた。
少しの沈黙の後、私が「うん、幸せだよ。」と答えると、父は安心したように「そうか・・・。」と微笑んだ。
これが父との最期の会話になった。
父の「お前、今幸せか・・・?」
この言葉にはたくさんの父の思いが詰まっていた気がする・・。
「今までごめんな・・。
本当にありがとう・・・。」 その時 父はそう言いたかったのではないかと思う。
そして、今は肉体を離れた父が、私に優しく問いかける・・。
「お前、今幸せか・・・?」って・・・・。