[『Number』から前回の続きです。ザッケローニ「選手に何を伝えたか」①
【日替わりヒーローを呼んだ控え組への細やかな心配り。】
2試合の出場に留まり、ベンチに座る時間が長かったMFの細貝萌も、ザッケローニの指摘力に驚かされたひとりだ。
「ボールのもらい方について、言われました。
右からパスをもらったら左にさばくというように、『逆サイドにボールをさばけ』とアドバイスされたんです。
「そういうプレーをもっとできれば、プレーの幅が広がるぞ』と。
それは自分でも課題だと思っていたので、指摘してもらってから、より意識してやるようになりました」
控え組は試合に出る機会が限られ、短期決戦のトーナメントではフラストレーションが溜まりやすい。
細貝はドイツ2部のアウクスブルグへの加入が決まっていただけに、何のためにカタールにいるのか、と感じる瞬間もあったに違いない。
だが、たとえ試合に出られなくても、監督から課題を指摘され、選手としての力を延ばすことができれば、チームにいる意味は大きくなる。
今回のアジアカップにおいて、控え組の選手が日替わりでヒーローになったのは、日々、自分が向上していると実感できたことも関係があったはずだ。
「ザッケローニ監督は、練習では先発組とサブ組を分けないで、ミックスして紅白戦をやる。
ずっと監督は『サブ組の力が必要だ』と言っていた。
僕たちもやってやろうとという気持ちがどんどん強くなって、サブ組だけで集まって『出られない分も応援して、チームの一員として闘おう』と話したこともあった。
それが最後のチュンくん(李忠成)の決勝戦でのゴールに繋がったと思います」
一般的に、あまり練習中に監督が口うるさく指示しすぎると、選手が面倒くさく感じて逆効果になることがある。
だが、ザッケローニの場合、ただ細かいだけでなく、具体的でイメージしやすいため、選手がちゃんと耳を傾けるのだ。
たとえば、「パスをつないでサイドを変えたら、迷わず縦に行け」「守備のとき、相手がワンツーをしたら、ボールは見なくていい」というように。
右サイドバックの内田篤人は「ここまでサイドバックに対して、細かい指示をしてきたのはザッケローニ監督が初めて」と言う。
「ボランチやセンターバックに比べて、サイドバックってあまり細かい指示をされないもんなんですよ。
でも、ザッケローニさんは選手時代サイドバックだったからなのか、このポジションの気持ちをすごくよくわかっているし、指示も的確です」
一例をあげると、「前にいる選手が背中を見せたら、外から追い越せ」。判断基準が明確だ。
「具体的だから全然うざくないんですよね。
サッカーを知っていて、理論がしっかりしていると感じさせてくれる。
あと、監督はよく人を見てますよ。
僕もまわりをよく見るタイプなんですが、結構、監督と目が合う。
普段よく見ているから、選手によって接し方を変えられるんだと思います」
今回の取材は、アジアカップ終了後、カタールからヨーロッパに飛び、ドイツおよびオランダでプレーしている選手たちに会って話を聞いたものだ。
ただ、ザックの「言葉力」を書くにあたって、どうしても話を聞いておきたい選手が国内にひとりいた。
広島でプレーする森脇良太だ。
森脇は今回のアジアカップにおいて、一度も出番がなかった唯一のフィールドプレイヤーだ。
だが、持ち前の明るさでムードメーカーになり、チームがまとまるのに一役買った。
優勝翌日、ホテルの一室が取材会場となり、選手と膝を突き合わせて話をする時間が設けられた。
森脇のエリアには数人の記者が集まった。
森脇はいつもどおり、すぐに笑いを取った。
「監督はすれ違うたびに、ウィンクをするんですよね。
ウィンクされると、抱きつきたくなっちゃう。
まあ、そんなことをしたら勘違いされるのでできませんが」
ところが、記者のひとりが、「優勝後、監督から何か言葉をかけられた?」と質問したときだけは、「すみません」と口を閉ざした。
「監督からは声をかけられました。
けれど、その言葉だけは、自分の中で大切にしたい。
だから、ここでは言わないことにします」
自分の心の中だけで大切にしたい言葉――。
いったいそれは何だったのか。
2月中旬、広島の練習場を訪れ、森脇を直撃した。
ザックの言葉力を書く上で、何が何でも知りたい。
そんな思いをぶつけると、24歳のムードメイカーは胸にしまっていた言葉を教えてくれた。
「監督はこう行ったんです。
『オレはちゃんと見てるから。
頑張っているところも、たとえさぼったとしても、サッカーもプライベートも、すべて見ているから。
だから、自分を信じてやれ』。
そして、こう付け加えたんです。
『お前を今回選んだのもオレだ』と」
森脇は直立したまま、話を続けた。
「残念ながら試合には出られなくて、正直、気持ち的に落ち込むときもありました。
けれど、最後にそういう言葉をもらって、チームのために声を出して、心の底から良かったと思った。
必ず見てもらえる。
そう受け止めています」
相手を目の前にして褒めるのは、誰でも照れや恥ずかしさをともなうものだろう。
だが、ザッケローニには「面と向かって好きと言える」ような素直さがある。
それがザック流コミュニケーション術の最大の秘密なのかもしれない。
代表から離れても、ザックの言葉は選手たちの心の中で生き続けている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
下の写真 長谷部くんが掲げてるカップの中にザックさんが入ってるように見えません?
森脇くんの周りはいつも笑顔が絶えませんね
森脇くんのおかげで圭佑さんの笑顔もいつもよりたくさん見ることができたのかもね
酒井くんが腰痛で離脱したので、代わって森脇くんが招集されたんだよね
ホントにザックさんはステキな選手を選んでくれたね
カタールから成田へ帰国したとき、ここでもザックさんの粋な計らいがありましたね
試合に出れなかった森脇くんと権田くんに、優勝カップを持つようにとザックさん
この大会の最後まで、長谷部くんが言ってたように、選手みんなの気を遣ってくれるステキなザックさんでした
さあ、気になる今夜のCSKAの試合は・・・。
全くわかりません
でもオフィシャルサイトでは「word」が更新されてて嬉しかったですね
元気でやってるんだなって確認はできたから
さあ、日本時間の深夜1時ですね