兄ちゃんの勤めてた会社名とかは知ってたけど、どんな仕事をしてたかは知りません。
聞いても
「言っても分からんから。」と言われました。
兄ちゃんは何年か前に携帯を持ちました、でもほとんど使うことはなく、自分も電話もメールもした事がありませんでした。
兄ちゃんが倒れた時、会社に連絡しないといけないし、他にも‥って思ったけど、電話帳登録も少なくて、メール履歴もほとんどない携帯でした。
ホントに使う必要が無かったんでしょうね。
そんな中、ひとりの後輩の方からメールが来ました。「頑張ってください！また食事に行きましょう！」という内容でした。
会社の人も詳しい状況も分からないし、倒れてる人にメールとか出来なかったと思います。
この後輩の方に連絡を取ると、見舞いに来てくれました。
集中治療室で兄ちゃんに、「また食事行きましょう、待ってますよ。」と何回も声をかけてくれました。
その後、会社での兄ちゃんの話を聞きました。
兄ちゃんはいつも出勤の時に、新聞やパチンコ、車の雑誌等を買ってきて、休憩時間に皆に読ませてたそうです。
新聞が無いと、今日は休みなんだと思ったそうです。
他にもよく後輩を食事に連れて行ってたみたいです。兄ちゃんも先輩からよく奢ってもらったから自分も後輩に奢るのは当たり前と言ってたそうです。
食事を奢るだけじゃなく、実家のレンコンを後輩が買いたいらしいと言って、お母さんにお金を渡す時が何回かあって、結局それは、兄ちゃんがお金を出して後輩の家にプレゼントしてたみたいです。
そんな事が多かったのか、何年か前に兄ちゃんの会社の後輩ですと言って何人かが御中元を持って来た事がありました。
今回見舞いに来てくれた後輩の方も、兄ちゃんに恩返しをしないといけないと、皆で話しをしていたところだったそうです。
そういう後輩が多かったのか知りませんけど、兄ちゃんの訃報が会社に伝えられると、その場にいた全員が水をうったように静まり、みんなしばらく動けなかったそうです。
兄ちゃん名言集で、「お金は貸したと思ったらいけない、あげたと思わないと。」
というのがあって、妹も聞いた事があるし、後輩の方も聞いた事があるそうです。
(兄ちゃんからいっぱい金を借りとけば良かった‥)と悪魔が囁くけど、兄ちゃんはむやみやたらに金を貸す人じゃなかったです。
人に貸しても、誰かに借金してるとか考えられないと後輩の方が言われたので、借金問題は無さそうだな。と少し安心しました。
レンコンと言えば、最近分かった事なんですけど、
兄ちゃんがガソリンを入れてたスタンドにたまたま妹の知り合いが寄った時に、スタンドの店員さんが、「三日に一度はガソリン入れに来るお客さんが最近来なくなってね～。」と言う会話になって、色々と話しをしてたら兄ちゃんの事だったそうです。
兄ちゃんはスタンドの店員さんにも、「レンコンですけど、食べないですか♪」と言ってあげてたそうです。
(余ったレンコンだと思いますけどね…たぶん。)
スタンドの店員さんは、「本当はお客さんにタオルあげたりとかしないといけないのに、こっちがもらったりしてね‥。」
と言ってたみたいです。
兄ちゃんは、先輩達ともよく食事に行ってたみたいです。
自分がお金を出して、みんなが楽しんでくれればいい、兄ちゃんもそういう輪の中にいる事が好きだったみたいです。
何か兄ちゃんらしいなぁと思いました。
よく後輩達に奢ってやったり色々出来たのは、家が実家で独身だったからでしょうね。
家庭があれば、なかなか難しい事だと思います。
通夜、葬儀の時も多くの人が来てくれました。
会社関係の人はみんな同じように、「よく食事に‥」とか「いいヤツだったのに‥」等、言われました。
通夜の日は夜遅くまで色んな人が来ました。
11時頃に元同僚で一つ先輩になるという方が来られて、「いいヤツから先にいくなぁ‥。」と言って、兄ちゃんの顔をずっと20分くらい見られていたのが、何か印象的でした。
他にも専門学校の時の同級生の方が二人来ていました。
兄ちゃんの訃報を地方新聞で知ったらしく、最初は同姓同名かと思い卒業アルバムを慌てて見たとか。
兄ちゃんと青春時代の一番濃厚な時間を過ごしたらしく、損得勘定無しで付き合ったのは兄ちゃんだけだと言ってました。
パチンコとか車が好きで、パチンコでよく飲み代を稼いでいたとか、車もこだわりがあったとか、口数が少ないけど確信をついた事を言うとか、昔話に花を咲かせてました。
一人は葬儀にも来てくれて、別れの時は凄く泣かれていました。
もう十何年以上会ってなかったと言われてたので、生前どこかで偶然でも会っててほしかったです。
こんなにいい友達がいたのに、再会がこんな形じゃ悲しいから‥。
この入院中も実家の仏壇に手を合わせに来てくれる方が何人かいるそうです。
後から訃報を知った人とか、会社を辞めた元同僚とか。
東京から来てくれた後輩もいたそうです。東京の職場で訃報を聞き、それからは仕事が手につかなかったみたいです。
兄ちゃんに世話になっていたらしく、戻って来たら飯食いに行こう！と言われてたみたいです。
仏壇の兄ちゃんの遺影を見て、ずっと泣かれてたそうです‥。
みんなが言うように、確かに口数が少ない兄ちゃんでした。
今回、会社の人とかの話しで自分も妹も知らない兄ちゃんが分かりました。
人が亡くなって悪口を言う人はあまりいないので、いい話ししか聞かないのですが、とりあえず兄ちゃんは良い人で人生の幕をおろしたのかな？と思いました。
自分が知ってる兄ちゃんと、知らなかった兄ちゃんをまとめると。
そんなに努力をしなくても勉強・スポーツが出来る。 少し照れ屋で前に出ないタイプ。(高校は卓球部でキャプテンより上手くてもキャプテンにならないとか。)
パチンコが好きで、よく勝ってた。 車が好き、特にスポーツ車。口数が少ないけど、言う事は確信をついている。先輩・後輩との付き合いを大切にする。後輩によく奢ってやったりする。仕事は遅刻もせず真面目にこなす。みんなが楽しんでる中にいるのが好き。物知りで色んな人に話しを合わせられる。あまり喋らないけど仲間は多い。 本、雑誌、新聞を読むのが好き。 かわいい弟が逃亡したら捕獲する。かわいい弟にお年玉を出させてクソゲーを買わせる。 だいたい、こんな感じかな。
兄ちゃんは早かったけど、少しはいい人生だったのかなぁ？
かわいい弟の人生は、
いかにタコにアワビ。
知らない兄ちゃん
【終わり】