やさしい標識って!? -2ページ目

ニュースですよ今回はっ!

 やーばい! 2週間も更新を怠ってしまいましたが、今回はちょいとニュースがあります(なもんで吉井先生の話はまた次回以降に改めて……)。


 6月29日、僕とマツさん、そして住友3M社の方など研究メンバーとで神奈川県議会の傍聴に行ってまいりました。目的は、大井康裕 県議 による一般質問と、それに対する松沢成文 県知事の答弁を聞くため。


 大井県議、いや敢えて普段通り「大井さん」と呼ばせていただきましょう。大井さんとお知り合いになったのは、彼がかつて中田宏 元代議士(現在は横浜市長)の秘書を務めていらした頃。もう4年近くになるでしょうか……。時には支持者ヅラして口うるさい指摘をしてみたり、時には食事などしながら夢のある話をご一緒させていただいたり。すごく勉強になるお付き合いをさせていただいているアニキです。


 さて、現在は神奈川県の意思決定機関にて議席を持つ大井さん。彼がマツさんの研究を知り、関心を寄せたのは今春でした。


「これは横浜市街はもちろん、鎌倉のような観光地や私たちの住む(横浜市)青葉区のような住宅地でも有効な交通施策になり得る!」


 そう感じたようなのですね、新コンセプトの案内標識 について。「何よりハイテクすぎないところ。誰にでも直感的にわかるところがいいと思うんです」ということもおっしゃっていました。


 そこで、神奈川県でこうした標識導入を検討してみるのはどうかと議会で提案してくださったのです。その発言(質問)内容は神奈川県議会のサイトにて視聴できます が、以下、その論旨を大井さんのメルマガ より引用します。


「観光県かながわの復活を目指して様々な観光施策に取り組んでいる知事に対して、国内外を問わずすべての観光客が安心して旅を楽しめるように、県独自のわかりやすい案内標識を設置するよう、議場にパネルを持ち込んで、提言を交えながら質問しました」


 観光施策としても、また「誰にでもやさしい」というユニバーサルデザインの視点においても、優れた案内標識はいかが? ということで県知事はどんなリアクションを示したかというと、、、


 なかなか好感触でしたっ。


 大筋を説明すると、こんな感じ。


「現在、神奈川県の観光施策としては、(1)キャンペーン、(2)東アジアを中心とした外国人観光客の誘致、(3)HPなどによる情報発信に注力している。道路標識については全国的にわかりやすいものを目指して、『標識ボックス』を設置するなどして常に意見を求めてもいる。しかし、高齢化社会、外国人への対応など考えると、一層のわかりやすさが求められる時代になってきている。そこで国では『道路案内標識検討会』が設けられているが、県でも国の動向を見ながら、よりわかりやすい案内を実現するよう務めたい」


 そこで大井さん、再質問の場で大きな提案を一発。


「もしさらに一層の取り組みをする気持ちがおありでしたら、部局横断の検討会あるいは勉強会を設けてはどうか。コスト意識に長けた民間のメンバーも招いて、知恵を拝借していけないか。県下の各市町村との連係もとりつつ、また新たに導入を考える自治体が出れば、そこへ働きかけるのもどうか」


 自分たちの街や国ですから、役所や大企業に任せっきりでなく、自分たちの問題として知恵を集めていこう。より暮らしやすくしようじゃないか。……というのが、マツさんやそのサポーターである僕は持っています。大井さんによる今回の提言は、僕らの夢を「議会」という大きな舞台に持ち込んでくれるものでした。


 今後の展開が、ますます楽しみになってきましたよ。


学会発表が縁となり……

 さて、ちょいと久しぶりの更新になりますが。。。


 いまでこそ研究機関や企業、社団法人のサポートも受けて進めているこのプロジェクト。いち学生のヒラメキが、ここまでオオゴトになっちゃったのは何故でしょう? 今回からそのあたりの話を進めます。


--研究の経緯 を見るとさ。デザイン学校 の卒業制作として発表した翌年に、なんと学会発表しているのね!


松平 健(以下マツ):この間に実は(株)デンソー 本社でのプレゼンもさせていただきました。


--デンソーって、電装のDENSO? トヨタ系の!?


マツ:そうですね。ETC車載器とかカーナビのメーカーでもあるんですよ。


--ゴッツイ会社とつながってたんですなぁ……。


マツ:プレゼンに行った時は、スケールに圧倒されましたよ! こう、会議室がズラーーーーーっとあって(笑)。学生時代、同社の学内コンペに入賞した経緯がありまして、例の卒業制作作品展を見に来てくださった方がいるんです。その方から「面白いね」って感想をいただきまして。あ、コチラ(↓)が卒業制作の作品から抜粋したものなんですけどね。CGを使って実際運転するようなムービーを制作したんです。大規模なシステムの提案だったことと相まって、ご好評をいただきました。



--それでデンソー社に「じゃあ御社に提案させてください!」って?


マツ:企業や世の中なんて、まるで知らない美術系学生でしたからね。正確には卒業したての時期ですが、コワイもんなしっていうか……(笑)。「大人に聞いてもらえるだけでうれしい!」って感覚でしたね。


--そうして実現したプレゼンが好評だったと。


マツ:(株)デンソーの玉木部長(当時)はじめ何人もが見てくださって、親切にいろいろ意見をくださったんです。で、「これは学会 で発表すべし!」ってことになったんです。でも何せ美術系人間ですから。「学会って? 論文って???」な世界でした。


--それでも何とか論文を書き上げた、と。


マツ: 「交差点名称標識に代わる新しい目印の可能性」なんてね。その後も学会発表は二度ほどやってますが、本当に準備が大変ッス!


--大学の卒業論文くらいしか書いたことない身としては、ちと想像つかないプレッシャーですな(苦笑)。でも発表するってことは、学会で何かイイコトあるんでしょう?


マツ:やっぱり出会いですよね。いろんな方いろんな交通の専門家が興味を持って、質問してくださるんです。学会発表がきっかけで、いまも一緒に研究を進めていただいている吉井稔雄先生(当時 高知工科大学助教授・現 京都大学大学院助教授)とお会いできたし。論文をパッと読んで、この考え方が面白いので「実証」部分を手伝ってくださると申し出てくれたんです。


--いきなりスゴイ展開だね。吉井先生にも当時の話をうかがってみよう。


マツ:はい。僕から頼んでおきますよ。でもデザイン畑の人間には論文もタイヘンでしたが「実証」って感覚も謎でしたね。普段「これは良いデザインですよ」っていうのを、数値化して証明とかしませんから……。


 ここから「研究」の扉が開かれるワケですが、当時から様々なサポートをされている吉井先生にもご登場いただきましょうか。マツさんの提案のどんなとこが面白かったのか、次回、語っていただきでしょう!

これは天才的な発見かも!

……って誰か言ってください(笑)。

 今回は本研究の「はじめの一歩」をご紹介します。工業デザイナー・松平健(マツ)が、専門学校生(桑沢デザイン研究所の課題として「誰にでも扱えるカーナビのインターフェイス」を考えていたとき、この新標識のコンセプトが浮かんだそうなのです。


――前々回にも触れた ナビを変えるんじゃなくて、標識を変える っていう話 なんだけど、発想の経緯をちょっと詳しく教えて。


マツ(松平 健):たとえば助手席の人がナビ役を務める場合にしても、「目的地への道案内」っていうのは、曲がる地点と曲がる方向――つまり「どこで」「どっちへ」曲がるか、ですね。それらを順番に教えてあげれば、とりあえず目的地に着くわけです。


――ふむ。


マツ:カーナビのルート案内も同じ方法 ですよね。でもうちの祖母(現役ドライバー)なんかに「じゃあナビのルート案内通り行ってね!」と言って送り出してもなかなか難しいッスよね。


――ナビの操作が難しいってこと?


マツ:それ以前に、運転中に画面を見ながら曲がる場所を知るのって、結構大変なようです。100m先、○○○一丁目を右です」と言われても、どの交差点で曲がればいいのかわからない


――ああ、知らない道だとボクらでも通り過ぎちゃうことあるもんね。「えっ、いまのとこ曲がるんだったの!?」なんて。


マツ:そういうことです(苦笑)。で、一つ一つの交差点がもし周りと違う個性を持っていたら……。えーっと、何でもいいんすケド、たとえば「『ドラえもん』交差点を右」とか「『リスの分岐』を左」って言われたら、○○一丁目などの交差点名 よりも遠くからも認識できると思うんです。かつナビの画面もシンプルになって、祖母でも案内をパッと分かるかもって。


――というと、地名とは違う何かを交差点に付けるってこと?


マツ:いや、ただ交差点名みたいに日本中の交差点を全部違う個性を持たせるのは大変ですよね。何万とあるわけですから。で、発想を転換したんです! カーナビなんかだと、コンビニをよく交差点の特徴として利用しますよね。あれって遠くには同じコンビニのある交差点であっても、周りとは違う特徴であれば道案内に使えるって事ですよね


――ん、たしかにナビは交差点名だけじゃなく、ランドマークも使って案内しているもんね。


マツ:って事は、互いに近くになければ、同じ「ドラえもんの交差点」が複数存在してもよいのかも! という具合に思いついたんです。


 そこから、ほんの数種類の記号・色で日本中の交差点に個性を持たせることができるんじゃないかと研究を始めたそうなんです。そして1999年2月には、桑沢デザイン研究所 ID研の卒業研究として発表して新人賞を受賞 。好評を得たため翌2000年にはシンポジウムでも発表するに至るのですが、ここで大きな出会いが待っているのです。マツさんの研究から「みんなの研究」になっていく過程を、来週はお話ししましょう!

体感してワカル新標識のやさしさ!!

さて先週 に引き続き、「新しい標識のシミュレータ運転&意見交換会 」のお話、行ってみましょう! 


――出席された方々からは、「運転の苦手な人、土地勘のない場所では有効なように思う」といった感想や「カーナビのない人にもメリットはあるのでしょうか?」といった質問 があったね。


松平 健(本名! 以下マツ):そうですね。やっぱり「体感する実験はわかりやすい」とも言っていただけました。口頭や論文では思うように伝わらなかったメリットも、これで体感していただけるとわかって嬉しいです。これはPCからもCG動画で見られる んですよ!


――シミュレーター独特の乗り味はあるけど、「ああ、これが新しい標識のメリットか !」ってね。ピンと来るんだよ。


マツ:やっぱりそうですか。


――うん。カーナビのルート案内と連動していて、かなり実際的なシミュレーターだったからね。


マツ:そこは首都大学の大口 敬助教授 に感謝です!


――おお。研究メンバーで、あのシミュレーターを制作したという大口先生。と、ところで、どんな分野の先生なんだっけ?(恥)


マツ:専攻は土木工学です。


――思いきり「まちづくり」の世界なんだね。


マツ:ええ。本当にお世話になっています。今回も体感会 のためにご自慢のシミュレーターを快くお貸しいただいて。あと学生さんもCG空間を一から作り上げたんですよ。徹夜して……。あ!そういえばツジさんには以前、ヘルメットを被って運転していただきましたよね!

ヘルメット着用でシミュレーション!


――そうだったね(笑)、バイクナビならどんな使用感かってね。『ミスター・バイク』の取材で。


マツ:あのときは、どうでした?


――たとえば従来なら「100メートル先、○○駅前を左です」なんてナビに言われるワケだよね。ところが新しい標識が導入された場合、「100メートル先、23を左」と指示される。わかりやすいですよ。コレなら音声案内だけでも安心して走っていける!


マツ:音声案内だけで知らない道を行けるということは、四輪でもナビ画面をあまり注視せずに走れるということですよね。それに曲がる交差点をかなり手前で発見できるんです。この二つで、事故を未然に防ぎ得ると思うんです。


――たしか道交法でも安全対策のため、ナビ画面を注視しないよう定められているんじゃなかったっけ?


マツ:そうです。携帯電話の操作を禁ずると同時に、ナビ画面も2秒以上見てはいけないことになったんです。こうした点からも、より音声案内が有効になることって望ましいですよね。


ツジ:うん。ところでマツさん、その発想ってどこから浮かんだの?


――というわけで次回は、新しい標識の発想プロセスを紐解いてみたいと思います。誰でも使えるナビのインターフェイスを考えていたマツさん、「そもそも道案内というのは……」と思いついたそうなんですが、詳しくはまた来週。どうぞお楽しみに!

みんなでやってく感じ

面白い発想は、世の中を変えるパワーを持つ!かもしれない。

 そんな話を、ここでは展開していきたいと思います。事の起こりは、僕の友人でもある工業デザイナー・松平 健さん(本名!)の学生時代に遡ります。お爺さん・お婆さんにも使えるカーナビの操作系を考えていたときに、「交差点の案内標識がもっと遠くから認識できたらイイのにな……」と思ったそうなんです。ナビを変えるんじゃなくて、標識を変える!? そんなコトできるんでしょうかねぇ~?

 というわけで、ここから皆さんにもご一緒していただきましょう。「新コンセプト交差点標識デザインプロジェクトの珍道中~!


――さてマツさん、事の経緯は次回から改めてお話しするとして。先月開催した「新しい標識のシミュレータ運転&意見交換会」について、今日は振り返ってみましょーか。

松平 健(以下マツ):新しい案内標識というのは、たとえば「○○○一丁目」「□□駅入口」といった交差点の案内標識に、お年寄りや外国人にも読み取れる記号を付けようというものです。それを多くの人に体感して欲しいので……

――「そんな案内標識があったら、街はこんなにも走りやすくなるのか」ってのをカーナビ付きシミュレーターで疑似体験してもらうんでしたね。

マツ:そうそう! この新しい標識はナビとの相性もキモなんですよ。ナビメーカー数社、標識メーカー、お役所……と色々な方が来てくださいましたね!

シミュレーターで体感

――これには僕も同席したんですが、おーーーっとマツさん。今日はここまでだ。初回からあんまし長いと息切れしちゃうからネ(笑)。また次回。週イチくらいで更新していきたいね。

マツ:できますかねぇー? 無精者のツジウチさんが?

 そ、そのへんも含めて、乞うご期待であります(汗)。