これは天才的な発見かも! | やさしい標識って!?

これは天才的な発見かも!

……って誰か言ってください(笑)。

 今回は本研究の「はじめの一歩」をご紹介します。工業デザイナー・松平健(マツ)が、専門学校生(桑沢デザイン研究所の課題として「誰にでも扱えるカーナビのインターフェイス」を考えていたとき、この新標識のコンセプトが浮かんだそうなのです。


――前々回にも触れた ナビを変えるんじゃなくて、標識を変える っていう話 なんだけど、発想の経緯をちょっと詳しく教えて。


マツ(松平 健):たとえば助手席の人がナビ役を務める場合にしても、「目的地への道案内」っていうのは、曲がる地点と曲がる方向――つまり「どこで」「どっちへ」曲がるか、ですね。それらを順番に教えてあげれば、とりあえず目的地に着くわけです。


――ふむ。


マツ:カーナビのルート案内も同じ方法 ですよね。でもうちの祖母(現役ドライバー)なんかに「じゃあナビのルート案内通り行ってね!」と言って送り出してもなかなか難しいッスよね。


――ナビの操作が難しいってこと?


マツ:それ以前に、運転中に画面を見ながら曲がる場所を知るのって、結構大変なようです。100m先、○○○一丁目を右です」と言われても、どの交差点で曲がればいいのかわからない


――ああ、知らない道だとボクらでも通り過ぎちゃうことあるもんね。「えっ、いまのとこ曲がるんだったの!?」なんて。


マツ:そういうことです(苦笑)。で、一つ一つの交差点がもし周りと違う個性を持っていたら……。えーっと、何でもいいんすケド、たとえば「『ドラえもん』交差点を右」とか「『リスの分岐』を左」って言われたら、○○一丁目などの交差点名 よりも遠くからも認識できると思うんです。かつナビの画面もシンプルになって、祖母でも案内をパッと分かるかもって。


――というと、地名とは違う何かを交差点に付けるってこと?


マツ:いや、ただ交差点名みたいに日本中の交差点を全部違う個性を持たせるのは大変ですよね。何万とあるわけですから。で、発想を転換したんです! カーナビなんかだと、コンビニをよく交差点の特徴として利用しますよね。あれって遠くには同じコンビニのある交差点であっても、周りとは違う特徴であれば道案内に使えるって事ですよね


――ん、たしかにナビは交差点名だけじゃなく、ランドマークも使って案内しているもんね。


マツ:って事は、互いに近くになければ、同じ「ドラえもんの交差点」が複数存在してもよいのかも! という具合に思いついたんです。


 そこから、ほんの数種類の記号・色で日本中の交差点に個性を持たせることができるんじゃないかと研究を始めたそうなんです。そして1999年2月には、桑沢デザイン研究所 ID研の卒業研究として発表して新人賞を受賞 。好評を得たため翌2000年にはシンポジウムでも発表するに至るのですが、ここで大きな出会いが待っているのです。マツさんの研究から「みんなの研究」になっていく過程を、来週はお話ししましょう!