神々の土地、いろいろな立場のオトコたち(2)ドミトリーとその姉 | お蕎麦と昆布のいる暮らし

お蕎麦と昆布のいる暮らし

こちらはMomohouseです。
2匹の猫
・闇のような黒猫 :昆布
・天真爛漫
ノルウェージャン
フォレスト
キャット:小麦
& 飼い主(下僕)ももちんの
日常やまわりのできごと
できたことできなかったこと
日々是好日♪

やっと、ドミトリー・パブロヴィッチ・ロマノフ大公のお姉さま、マリア大公女さまの書かれた本を読了。

 

最後のロシア大公女―革命下のロマノフ王家

 

上田久美子先生今回のお芝居の起点となった書物です。読もうかどうしようか迷ったのですが、運よく手に取ることができました。

 

ドミトリーの一つ上の姉マリアさん。弟と二人きりで隔離され養育された幼少の日々(目がくらむほどの豪華さ)、近所のユスポフ家には始終訪れ、数年年長のニコライとフェリックスがいた、とか。

いとこがギリシャ王子様とかイギリスのおばあ様は王妃とか、そんなはなやかな人々がどんどん出てきます。

 

舞踏会の時にニコライ皇帝の前で7つも連続して二人で踊り驚かれたことなど、長身で美しい弟をとても愛して誇りに思っている記述がたくさんあります。そして、ドミトリー自身もどんなに姉を慕い愛しているのかも。

 

出生時に母を無くしたドミトリーを懸命に世話してくれた伯父のセルゲイ大公、規律正しく家庭に君臨した伯父様が爆死するくだり、その死体を奥様のエリザベータ妃が手でかき集めたはなしとか、めまいがするようななまなましい記述も。

セルゲイ大公とエリザベータ(エラ)妃。エラ妃は皇后アレクサンドラの姉君にあたります。

二人よりそう麗しいお写真ですが、実際はエラ妃は自分を顧みてくれない大公と、可愛がられる二人の遺児との間で嫉妬に苦しんでいてたそうです。自身に子供のいないエラ妃が、ほんとうに二人に愛情を注いでくれ、なにもかも投げうってでも力になってくれるのは大公爆死後でした。

ものすごい美貌で14歳の時にのちのドイツ皇帝になる方からも求婚されています。(振っちゃったけど)

 

この本の主人公マリアさんは、スウェーデンの王子様に嫁ぎますが1子をもうけたあとに結婚を解消してエラ妃のところへ戻ってきます。

 

そのあとマリアさんは看護婦さんをして前線へでて活躍されます。

あれ?

お芝居のイリナとそっくり。

 

驚かせる目的でドミトリーが病院を訪ねたときに、マリアさんの手のひどい荒れをみてドミトリー自身が驚くという逸話もあります。

 

推察と憶測の域をでませんが、上田先生は姉のマリアさんと、伯母のエラ妃を見事に融合させてイリナを作り上げたのだと思います。実際の姉の存在を消して、本来は姉であるエラ妃をアレクサンドラ皇后の妹にすえるとか、設定の仕様変更が見事すぎます。

(原作の二人の登場人物を一人に組み合わせる、というのは宙組前作「王妃の館」でOLと旅行会社社長を一人にするのと似たやり方ですね)

 

このご本を読んでため息をついて思うに、ドミトリーがシスターコンプレックスであるならば、イリナに思慕は抱くけれどそりゃ最後は手に手を取る一緒の未来はないよね。。

 

エラ妃は「神々の土地」のイリナと同様の拘束後にボリシェビキにより惨殺されます(ものすごくむごい殺され方で、調べていた手を止めて涙が出ました)。

マリアさんはスウェーデン王子の妃であった証明書を手に再婚者と命を賭して亡命。この本のラストはここまで。

(そのあとニューヨークに渡ります。亡命してきたドミトリーの金銭的援助もできるくらいの生活をされました。こちらは再会した模様。)

 

ドミトリー大公とマリア大公女

 

神々の土地に出てくる人たちはみんな頑固で自分を曲げなくて、そして兄弟姉妹にコンプレックス以上の愛情を持っている、、。そんな気がしています。

 

神々の土地のドミトリーとイリナは手に手を取って駆け落ちもできたのに、そうしなかった。そういう結末を上田先生は書きたかったのでしょう。どこまでいっても破綻と滅びしかない美学。

 

_20170920_130127.JPG

その答えはすっしぃマリア皇太后の最後のセリフに通じる、ここにあるような気がします。

 

「ロマノフ家の者達にとって、今まで祖国のために強いられた犠牲が大きすぎたということは決してなく、彼らは生命に賭けても、ロシアの大地が自らの霊魂であり肉体であるという証(あかし)を立ててきた。私がこの世を去るその日まで、一族の遺してくれた愛国の情が私を鼓舞し続けてくれることを心に祈ってやまない」

 

次の観劇時にはまた違った思いで見ることになりそうです。

奥が深い(泣)。

いや、そう思ってみるからか。もっとさらりと見れないものか(もう、無理~!)

(まかじぇフェリックス君にたどり着かない~)