宇都宮駅に着くと私たちは、浩介の行きたがっていた餃子店を目指した。







お店は駅から歩いてすぐだったし、何よりも、すでに行列ができていたからすぐに場所がわかった。







小さなお店の前で、私たちは並んで待つことに。







そういえば、隆史とはこういうふうに行列のできるお店に行ったこと無いな。







人ごみが苦手な隆史。いつかの花火大会も途中で帰ってきたし。







行列といったら、ディズニーランドぐらいかな。







それでも最近はディズニーランドにも行ってないな。







あ、いかんいかん、また隆史と比べてしまった・・・。














「あのさ・・・奥村く・・・じゃなくて浩介さぁ」







会話も尽きてきたので、私は前から聞きたかったことを聞いてみることに。







「うん?なあに?」







「あのさ、なんで彼女いないの?モテそうなのに?」







「唐突だねー」







「だって前から聞いてみたかったんだもん」







「うーーーん、なんでだろうね?」







「前にも彼女いたじゃん?」







「うん、まあね、でも社会人になってからずーーーっといないよ。」







「なんで?」







「話すと長くなるんだけど・・・かいつまんで話すと、俺、今まで半年以上付き合ったこと無いんだよね」







「ホントに!?」







「うん、最初に付き合った人が半年で、で、それが一番長くて、あとは3ヶ月だったりとか1ヶ月だったり」







「短かっ!!」







「しかも、だいたい俺がフラれるか自然消滅で、で、なんで長続きしないのかなっって考えてみたんだよ」







「うん」







「そしたら、気づいたんだよね、俺今まで、相手から告白されてしか付き合ったことないんだよ」







「どういうこと?」







「相手が俺のこと好きになってくれて付き合って、でも『何考えてるかわからない』とか言われてフラれちゃうの。それってきっと、俺が相手のことめちゃめちゃ好きだったら違ってたと思うんだ。相手の女の子にもちろん好意は持ってるから付き合うんだけど、きっとどこか冷めてるのが伝わっちゃうんだと思うんだよね・・・」







「そっか・・・」







「やっと相手のこともわかってきたところだったのに別れる羽目になっちゃう、これってやっぱ辛いから、だから、もう、相手のことをよく知らないのに付き合うのはやめたんだ。これからは自分が、俺が好きになった人としか付き合わないって決めてるんだよね。だからずーーーと彼女ナシ」







「そうなんだ・・・ごめん、なんかツライ思い出を話させちゃったね・・・」







「いやいや、大丈夫。もう今はツラくないしね」







なんて話をしてたところで、やっとお店に入れた。







私たちは、餃子セットを注文して、アツアツ餃子を堪能して、それからは楽しい話題に切り替えて好きな食べ物の話を熱く語り合ったりした。







それから、場所を移動して隆史の会社のそばの喫茶店で時間を潰す。







浩介とだと、会話が無くなっても沈黙が気まずくない。








そろそろ隆史の仕事も終わる時間かな。今日は残業無いといいんだけど。







実は隆史、会社から自宅まで徒歩で帰れる距離。







この喫茶店、窓から隆史の会社の出入り口も見えるんだ!すごい!今気がついた!







パラパラと社員が帰って行く様子が見える。






あ!隆史だ!






隆史もカバンを持って帰るみたい。







「どれ、俺もそろそろ探偵になるか」







と、浩介が腰を上げる。







「私も」







「いや、玲奈ちゃん見つかったらヤバイでしょ。俺が見てくるよ」







「うん・・・ありがと」







「じゃ、待っててね」







「はい。お願いします」







と、浩介が尾行を始めてから







10分後ぐらいに携帯が鳴る。あ、隆史!







「もしもし?」







「あ、俺。今帰ったよ。玲奈は?今日休みだったでしょ?」







「うん、そうだよ、あ、今ね、友達と飲んでるんだ。ちょこっとだけどね。」







「そうなんだ、そっか、じゃああんまり遅くならないようにね!」







「うん、わかったよ。」







と電話を切ってまた10分後ぐらい、浩介からメール。







「家の前まで来たけど、なんかもう出かけない雰囲気だよ。」






「じゃあ、もう終了で!ありがとう!戻ってきてね☆」






と返信。






そっか。安心した。







何にもなかったんだ。







疑ってごめん、隆史。







やっぱり今朝見た占い当たってたな。






なんか体の力が抜ける。











で、浩介が戻ってきてから私たちは喫茶店を後に。







そして遅くならないうちに電車に乗る。










「今日はホントにありがとね」







「どういたしまして!いや、なんか尾行しちゃってごめんね」







「いや、こっちが頼んだんだし・・・ストーカーみたいなことさせてごめん・・・」







「あはは、確かにストーカー!でも安心したでしょ?」







「うん、安心した」







そんな時、メールを着信。







隆史からだ。







「今日はホワイトデーなのに会えなくてごめん。でも、次に会ったときにプレゼント買いに行こう。だから、欲しいもの考えておいてね!じゃ、おやすみ☆」







本当にごめん、隆史。。。







「どうしたの?」







と訊かれ、浩介にもメールの内容を説明する。







「優しい彼氏じゃん!」







そうだね、本当に優しい。






もう隆史を疑うのはよそう。







もう二度と、尾行とか、そんなことしないって決めた。



待ち合わせ場所は、このあいだ奥村くんと会った駅。







待ち合わせ時間にはちょっと早いかなと思ったけど、







あ、奥村くん発見!












「あ、玲奈ちゃん!?」












「奥村くん、早くない!?」












「そっちこそ!」












二人、顔を見合せて笑う。





「ってか、それ、変装!?」





「うん、ダメかな??」






と、いうのも、私、本日、コテで髪を巻いて、しかも帽子。






「いや、結構似合ってるよ。」






「そうじゃなくて、私ってバレない?」






「いやー、それは無理かも・・・ってか実際に尾行は俺がやるって」






「あ、そっか・・・って、尾行って刑事みたいだね!」






「あははは、俺『危ない刑事』に憧れてたんだよね、昔!」






「え、どっち?タカ?じゃあ私ユージ!」






「じゃあそれで・・・・・って、やんないからっ!」






「あはは」






なんか奥村くんといると楽しいなぁ。






ちょっと遠足気分で電車に乗って・・・






あれ?なんか忘れてる気が・・・






あ、そうだ!言わなくちゃ!






「あ!あのさ、今日の電車代は私が払うからね!」






「えっ!?いいよ、そんなの・・・俺から言い出したんだし」






「ダメだよ!」






「じゃあ・・・じゃあ、電車代はいいから、ご飯おごって!」






「え、もちろんご飯もだけど・・・交通費・・・」






「電車代はいらないから、ちょっと行ってみたい店があるから付き合って」






と、取り出したるは・・・











何故か観光ブック。






「わ!わざわざ買ったの?」






「ううん、前に友達と旅行計画があって買ったんだけど、結局軽井沢になっちゃったんだよね。だから出番ナシ」






「そうなんだ・・・」






「ここ、このお店、いっつも行列ができてるらしいんだよね、だから今日一緒に行って!」






「うん、いいよ。時間あるし。」






「よかった!わーい嬉しいなぁ」






はしゃぐ奥村くん。






なんか観光みたいになってきたぞ。






今回は時間もたっぷりあるので、行きは電車。






うーーーーん、まだまだ時間あるなぁ。






うーーーーん。






と、伸びをした瞬間・・・






「痛っ!!!!!」






まただ・・・






肩の、このあいだと同じ場所が痛んだ。






「どうしたの!?」






心配そうな奥村くん。






「なんかね、肩が痛くてね、このあいだから・・・」






「そっか、家電屋さんだと重いもの持つよね?」






「そうなんだよね・・・バイトの子が学校終わってから来るまでが大変なんだよね、品出しとか」







「頑張ってるなぁ・・・病院には行ったの?」







「ううん、まだ。そのうち行こうとは思ってるけどね・・・」






「そっか、早めに行ったほうがいいよ」






「そうだね、ありがと。」







やっぱり奥村くんには何でも話せちゃうな・・・なんでだろう。






「だからね、ホントは家電屋辞めたいと思うことあるんだよね」






あ、思わず言っちゃった。本音。






「辞めたとしたら、次は何やるの?」






「まだ決めてないけど・・・」






ホントは結婚して専業主婦になりたい・・・けど・・・そんな甘えたこと言えないな、さすがに。







「玲奈ちゃんはさ、夢とかないの?」







「夢?」







「俺は、ホラ、音楽で成功する夢、まだ諦めてないの」







「うーん、夢か・・・昔はあったよ、出版社入って雑誌の編集。」







「ファッション誌?」






「うーーん、ファッションでもいいし、音楽でもいいし、とりあえず雑誌を作りたかったんだよね、で、大学の時の就活でいくつか出版社受けて、で、モチロン全部落ちちゃって・・・で、諦めた」







「今から目指したら?」







「えーーー、そんなの無理だよ・・・求人広告とか見ても、『経験者のみ』とか書いてあるし、コネとかも無いし・・・」







「そっか、難しいんだね・・・でも、諦めないほうがいいと思うよ」







「そっか・・・」







そういや、私、編集者になりたかったんだ・・・







今、昔の夢を思い出した・・・







忘れてたよ。







そしたら、昔の気持ち、思い出したよ。







ブワーーーーーーーっと思い出したよ。







「奥村くん、ありがとう、今の話で夢を思い出したよ」













「あ、そういえばさ、 奥村くんっての、やめない?『浩介』って呼んでよ」







「えっ!?呼び捨て?」







「友達じゃん」







「そっか・・・そうだよね!じゃあさ、私のことも呼び捨てにしてよ」







「ええええーーー、それはちょっとなー、玲奈ちゃんは『玲奈ちゃん』って感じなんだよなーーー」







「なんじゃそりゃ」







「あはは、いいじゃんべつにー」







「あはは・・・まあいいけどさー」







それからも話は尽きず、そろそろ目的地に着きそうだった。


ついに、決行の日がやってきた。






私はといえば、前日からドキドキしてなかなか寝付けなかった。






って、遠足前日の小学生か!






しかも、待ち合わせは午後なのに、朝の7時に目が覚めた。
低血圧のこの私が。






緊張してるのかな?
結果が怖い?






いや、そんなことないよ!だって信じてるもん!






とりあえず、休みの日に朝早く起きたし、ドライブでもしてきますか。







と、愛車に乗り込み、少し走らせて、コイン洗車場で洗車して、帰り道にコンビニへ寄る。






ノンシュガーのカフェオレと雑誌を買って帰る。






で、家に帰ると部屋でCD聴きながら買ってきたカフェオレ飲みながら雑誌をめくる。






雑誌は、毎月買ってるファッション雑誌。
ファッションページはモチロンだけど、それとは別に気になる特集。






『25歳、今、未来を考える時期!』






そうだよなー、私ももうすぐ25なんだよなー、いつまで家電販売やってるんだろう…なんて考える。






そして巻末にはお決まりの占い。





えーとえーと、蠍座は…






『疑心暗鬼になりそう。言動・行動は慎重に』


『今日行動を共にする人があなたの運命に大きな影響を与えるでしょう』





!!!!






すごい占い結果だ…






まあ、気にしない!気にしない!







あ、そうこうしてるうちにお昼過ぎちゃった。
そろそろ行く準備しなくちゃ!