待ち合わせ場所は、このあいだ奥村くんと会った駅。
待ち合わせ時間にはちょっと早いかなと思ったけど、
あ、奥村くん発見!
「あ、玲奈ちゃん!?」
「奥村くん、早くない!?」
「そっちこそ!」
二人、顔を見合せて笑う。
「ってか、それ、変装!?」
「うん、ダメかな??」
と、いうのも、私、本日、コテで髪を巻いて、しかも帽子。
「いや、結構似合ってるよ。」
「そうじゃなくて、私ってバレない?」
「いやー、それは無理かも・・・ってか実際に尾行は俺がやるって」
「あ、そっか・・・って、尾行って刑事みたいだね!」
「あははは、俺『危ない刑事』に憧れてたんだよね、昔!」
「え、どっち?タカ?じゃあ私ユージ!」
「じゃあそれで・・・・・って、やんないからっ!」
「あはは」
なんか奥村くんといると楽しいなぁ。
ちょっと遠足気分で電車に乗って・・・
あれ?なんか忘れてる気が・・・
あ、そうだ!言わなくちゃ!
「あ!あのさ、今日の電車代は私が払うからね!」
「えっ!?いいよ、そんなの・・・俺から言い出したんだし」
「ダメだよ!」
「じゃあ・・・じゃあ、電車代はいいから、ご飯おごって!」
「え、もちろんご飯もだけど・・・交通費・・・」
「電車代はいらないから、ちょっと行ってみたい店があるから付き合って」
と、取り出したるは・・・
!
何故か観光ブック。
「わ!わざわざ買ったの?」
「ううん、前に友達と旅行計画があって買ったんだけど、結局軽井沢になっちゃったんだよね。だから出番ナシ」
「そうなんだ・・・」
「ここ、このお店、いっつも行列ができてるらしいんだよね、だから今日一緒に行って!」
「うん、いいよ。時間あるし。」
「よかった!わーい嬉しいなぁ」
はしゃぐ奥村くん。
なんか観光みたいになってきたぞ。
今回は時間もたっぷりあるので、行きは電車。
うーーーーん、まだまだ時間あるなぁ。
うーーーーん。
と、伸びをした瞬間・・・
「痛っ!!!!!」
まただ・・・
肩の、このあいだと同じ場所が痛んだ。
「どうしたの!?」
心配そうな奥村くん。
「なんかね、肩が痛くてね、このあいだから・・・」
「そっか、家電屋さんだと重いもの持つよね?」
「そうなんだよね・・・バイトの子が学校終わってから来るまでが大変なんだよね、品出しとか」
「頑張ってるなぁ・・・病院には行ったの?」
「ううん、まだ。そのうち行こうとは思ってるけどね・・・」
「そっか、早めに行ったほうがいいよ」
「そうだね、ありがと。」
やっぱり奥村くんには何でも話せちゃうな・・・なんでだろう。
「だからね、ホントは家電屋辞めたいと思うことあるんだよね」
あ、思わず言っちゃった。本音。
「辞めたとしたら、次は何やるの?」
「まだ決めてないけど・・・」
ホントは結婚して専業主婦になりたい・・・けど・・・そんな甘えたこと言えないな、さすがに。
「玲奈ちゃんはさ、夢とかないの?」
「夢?」
「俺は、ホラ、音楽で成功する夢、まだ諦めてないの」
「うーん、夢か・・・昔はあったよ、出版社入って雑誌の編集。」
「ファッション誌?」
「うーーん、ファッションでもいいし、音楽でもいいし、とりあえず雑誌を作りたかったんだよね、で、大学の時の就活でいくつか出版社受けて、で、モチロン全部落ちちゃって・・・で、諦めた」
「今から目指したら?」
「えーーー、そんなの無理だよ・・・求人広告とか見ても、『経験者のみ』とか書いてあるし、コネとかも無いし・・・」
「そっか、難しいんだね・・・でも、諦めないほうがいいと思うよ」
「そっか・・・」
そういや、私、編集者になりたかったんだ・・・
今、昔の夢を思い出した・・・
忘れてたよ。
そしたら、昔の気持ち、思い出したよ。
ブワーーーーーーーっと思い出したよ。
「奥村くん、ありがとう、今の話で夢を思い出したよ」
「あ、そういえばさ、 奥村くんっての、やめない?『浩介』って呼んでよ」
「えっ!?呼び捨て?」
「友達じゃん」
「そっか・・・そうだよね!じゃあさ、私のことも呼び捨てにしてよ」
「ええええーーー、それはちょっとなー、玲奈ちゃんは『玲奈ちゃん』って感じなんだよなーーー」
「なんじゃそりゃ」
「あはは、いいじゃんべつにー」
「あはは・・・まあいいけどさー」
それからも話は尽きず、そろそろ目的地に着きそうだった。