気づいたら、奥村くんに電話してた。














プルルルル・・・
















「もしもし?」
















「あ・・・あの・・・私、玲奈ですけど・・・」
















何故か敬語になるし。
















「えっ!?玲奈ちゃん?ど、どうしたの!?」
















「遅くにごめんね・・・・・あの、ちょっとお願いがあって・・・・・」
















「ん??どうしたの?何かあったの?」
















さすが奥村くん、一発で私が元気じゃないことに気付いてくれたみたい。














「うん・・・あの、あのね・・・この間の話、本当に協力してくれる?」














「この間の話って・・・えっ!?ホントに?」














「うん、この間はああ言ったけど・・・実行してもらえるかな?」














「いいけど・・・ちょうど俺休みだし・・・でも・・・玲奈ちゃんはホントにいいの?」














「うん、どうしても気になることがあって・・・」














そこで私は電話の女の話をした。














「私の考え過ぎかもしれないけど・・・」














「わかった!気持ち、スッキリさせに行こうよ!」














「・・・ありがと・・・よろしくお願いします!」














「なんで敬語!?」















「いや、なんとなく・・・」















「じゃあさ、その日だけどさ・・・」















そのあと私たちは、引き続き電話で、当日の細かい打ち合わせをしてそして電話を切った。















奥村くん・・・優しいなぁ。















でもどうして?















どうしてそんなに優しいのかなぁ?















私に優しくしたって、奥村くんには一利もないのに。













友情?















男女の友情?















私、男女の友情って信じてないんだ・・・















というか、今までに成立したことがないから・・・















男友達、今までにいなかった。















高校までは、共学にいながら、男の子が苦手で、その後は彼氏ができたりしてだいぶ男の人に免疫ができたものの、たとえ男の子との間に友情が芽生えそうになっても向こうから告白されるか、私が好きになっちゃって告白して玉砕するかのどっちかだったから・・・













だから、もし奥村くんとのあいだに友情が芽生えたなら、これが初めて。















今回は、大切にしたい。















はぁ・・・でも、













でも・・・自分で言ったけど・・・・・















ホワイトデー、気が重いなぁ・・・。









それからしばらくは、私たちのバレンタインのこととか、奥村くんからの提案とか、すっかり忘れてた。









嫌なことは早く忘れるタイプなの、私。









というか、防衛本能なのかも。自分が傷つきたくないから。









相変わらず、隆史は仕事で忙しくて。











1日2回のメールと、1日1回の電話。










メールは無い日もあったけどね。










眠る前には必ず電話、それが私たちの唯一の決めごと。










3月、今日は隆史が同期と旅行。例のやつね、あの日に聞いたやつ。








朝「いってくるね」ってメールが入って、「いってらっしゃい。楽しんできてね」って返信して、私は会社に向かうために車のエンジンをかけた。








色々考えちゃうと暗くなっちゃうから、今日は隆史のことは忘れて、仕事一筋の人になろう。土日に売場の売上を担保して、平日は売場作りに専念しよう、うん、それがいい!








そう決めたせいか、今日は売上絶好調!高い食洗機も、展示品限りだったミキサーも売れてノリに乗る私。







ついでに5万円の炊飯器も売っちゃう?とか思って倉庫に取りに行って、持ち上げると、








あれ?なんか肩がおかしい。








てか、ちょっと痛い?








気のせい?






「成田さーん!お客様がお待ちでーす!」









「あっ、はーい!今行きまーす!」








午後になって、店内は忙しくなって、肩もしばらくしたら治ったから、もうそれっきり忘れちゃった。なんだったんだろうね?まあ治ったからまぁいっかー。








そんなこんなで今日もお疲れ!3月ともなるとやっぱお客さん多いなー、新生活の準備だもんね、みんな。







疲れたし、明日もあるし、今日はまっすぐ家に帰ろう。そしてベッドに倒れ込もう。








家について、ご飯食べて、お風呂に入って23時。








今日は隆史からの電話が無い。








まあ仕方ないか。








早いけど寝ようか…








と、その時、携帯が鳴る。







隆史だ。







「もしもし?」








「あっ、俺。寝てた?」







「ううん、まだ寝てなかったよ。なんか騒がしいね」








隆史の声の向こうからは、男女の笑い声。たぶん、宴会の真っ最中と思われる。








「うん、今みんなで飲んでんの。うるさくてゴメン。」








そんなところから電話してこなくてもいいのに。






とか思ってたら、突然、








「誰~?」









女の子の声。









「彼女ぉ~?」







一瞬女の子が電話を代わったかと思うくらい近い声。隆史にべったり寄り添ってるのがわかる。








「ねぇねぇ、誰と話してんのぉ~?」








嫌な喋り方。








嫌なタイプの女。








電話越しに自分のことをアピールしてくる。








声だけでも敵意が伝わってくる気がする。








気のせい?被害妄想?








でも、わかるよ、だって私も女だもん。








胸騒ぎ。








「悪い、なんか騒々しくて話せないからまた明日電話するわ。」









「うん…おやすみ…」








不条理に思いつつ、電話を切って。







寝れなくなった。







あーもう!!








なんなの!?あの女!!








もちろん、2人きりではないし、浮気とかそういうことでは無いけど…








今まで、隆史の浮気を疑ったことは無かったし、私にとって隆史がそうであるように隆史もまた私がオンリーワンだと信じてきたんだ。








なのに。







なのに、今、その確信が揺らぎ始めた。








そんなとき、頭によぎったことがある。








それは、あの日の、奥村くんの提案だった。



「じゃあ、玲奈ちゃんは、そのチョコが車の中で他の女の子からもらったものだって思ってるんだね?」














「うん・・・・・そう思いたくはないけど・・・」














「そっか・・・じゃあさ・・・確かめてみれば?」














「問い詰めるの?・・・できないよ・・・」














「そうじゃなくてさ、確かめに行こうよ」














「えっ!?確かめに行く!?どうゆーこと?」














「あのさ、もし・・・万が一だよ、玲奈ちゃんが想像しているようなことがあったんなら、きっと、ホワイトデーにその女の子にお返しすると思うんだよ。義理チョコならば、会社でお返しすると思うけど、もし・・・・・もしも、その子に気があるなら、絶対に、一対一で会ってお返しのプレゼントを渡すと思うんだ・・・あ、俺の場合ね」














「それを確かめに?待ち伏せして?ってか、宇都宮まで行って??」














「うん」














「そんなの無理!だって仕事終わるのをずーーーっと一人で待ってるなんて、まるでストーカーだよ!」














「一人じゃないよ、俺も付き合うよ」














「ええええっ!?なんで!?」














「だって、俺が言い出したことだし・・・ほら、ホワイトデーって平日じゃん。それに、まだ1か月もあるから、今からだったら俺も休みが取れると思うんだ。どうせデートの約束も無いしさ!」














「でも・・・・・でも・・・・・でも・・・・・」














「嫌?」














「だって・・・そこまで疑いたくないし・・・それに、もし、万が一・・・本当だったら・・・」


















「傷つきたくない?大丈夫だって!思いすごしだってわかって安心するって、絶対!」


















「そうかな・・・・・・でも・・・・・なんか、そこまですると嫉妬深い女すぎて自己嫌悪に陥りそう・・・」














「そっか・・・まあ、そうだよね、やりすぎかもね、ごめんごめん、今のは忘れて!」














「ううん、ありがとう・・・そこまで考えてくれて。」














「なんもしてないけどね、俺でよかったらいつでも話聞くし、力になるから」














「ありがとう。話を聞いてもらってスッキリしたよ」














「なら良かった。そろそろ行こうか?もう遅いし」














「うん、ごめんね、仕事で疲れてる時に」














「たいしたことないよ。それに、会えて嬉しかったし」














そう言って笑った奥村くん。











その笑顔を見たら、さっきまで泣いてたこと忘れちゃった。








ゲンキンだなぁ、私。








でも私、本当に救われたんだ、その少年のような笑顔に。