こんばんは、福岡市長の高島宗一郎です。


 今回は今後取り組んでいきたいことを中心にお話しします。


 これまでの取組みで、短期の成長戦略である観光コンベンションは一定の成果が表れ、民間も含めてさまざまな動きが出始めています。ただ、同じように種を撒いても、実を収穫する時期は、事業分野によって違いがあります。例えば地域を強くする取り組みや教育については、施策の成果が出るのには時間がかかるため、中長期を見据えた取り組みが必要となります。私は、この「地域」と「子ども」について、これからは今まで以上に力を入れていく必要があると思っています。


 福岡をもっと元気にしていくためには、行政が公的サービスを提供する「公助」だけでなく、地域の活力をより高め、地域自らが課題を見つけ解決していく「共助」、地域と行政が協力して課題の解決していく「共働」を充実していくことが必要です。
 今年初めて開催した「自治協議会サミット」などを来年も活用し、それぞれの地域の取り組みを全市で共有することを通して地域力を向上させ、地域から福岡を元気にしていきたいと考えています。そうすることで、誰もが住みなれた地域で安心して健やかに暮らしていくことのできる「見守り、支えあう、強い絆で結ばれた地域づくり」を進めていきたいと考えています。


 そして、福岡の未来を担う子どもたちを育むための取り組みも進めています。待機児童の解消に向けて、この2年間で3200人分の保育所整備を行いました。これは過去9年間における整備数と同じです。
 また、教育についても、ハングリー精神にあふれるアジアの子どもたちにも負けない英語力を身に着けるために、例えば中学校と高校に毎週ネイティブスピーカーの授業を取り入れるなど、政令市一番の取り組みをすでに始めています。
 英語の大切さを実感するためには、英語を使わざるを得ない状況に身を置くことが一番です。そのため、ホテル、空港、コンビニなどさまざまなシチュエーションを再現したセットの中で、ネイティブを相手に実践的な英語を学ぶことのできる英語体験施設を福岡に作ることが議論になったのですが、行財政改革を進める中で新たな施設を建設するのは非常に困難です。
 そこで、今年の夏に市内のすべての中学校から1名ずつ、計約70名を釜山にある英語体験施設「グローバルビレッジ」に派遣しました。さらに国際的にも評価の高い日本人としての道徳心を子どもの頃からさらに育み、またいじめの防止・発見などにも力を入れていきたいと考えています。


 右肩上がりの時代が終わり、財源が限られる中で、持続可能な成長を図り、暮らしの質を高めていくためには、市民のニーズを的確にとらえた施策を実施していくことが重要です。社会情勢の変化により、ニーズや優先順位が高まっている施策もあれば、その逆の施策もあると思います。
 そのため「ビルド・アンド・スクラップ」の考え方に基づき、よりニーズや優先順位が高いサービスを充実させていきたいと考えています。これが最近マスコミにおいて報道されている「行財政改革」の真意です。市民サービスを単に止めるというのではなく、例えばたくさんのこども施策や高齢者施策、地域振興策などの分野において、現在の施策よりもっと重要と考える施策があれば、そちらを優先させていくということです。
 もちろん、市役所の効率性をより高め、人件費の抑制や予算制度の改革も進めていきます。一言で言えば、「10年前や20年前に最適化ボタンを押したきりになっているものがないか?」という視点に立って、もう一度最適化ボタンをすべての施策で押してみようということなのです。


 また大型公共事業を一気に進めようとしているというような一部報道もありましたが、現在計画中の大型公共事業と呼ばれるものは、新たな都市機能を創出するものではなく、老朽化している施設の更新がほとんどなのです。
 施設の長寿命化は大切ですが、老朽化が進みすぎた施設の改修には多額の費用が掛かり、また使い勝手も悪いことから、長期的な視点で考えると建替えた方が良い場合が多いのです。これまでの福岡市政が批判を恐れ、建て替えの判断を先延ばしにしてきたことにより、もう待ったなしの状況に陥った多くの施設について、市議会にご説明し、ご了解いただいたうえで更新を決定しているのです。
 マスコミや一部市民団体などの無責任な「何でも無駄」批判を恐れて何もしなければ、それこそ山梨のトンネル崩落などのように老朽化が進み、取り返しのつかない事態にもなりかねません。


 これからも判断することを恐れずに、さまざまなご意見も伺ったうえで、真剣に考え、きちんと判断し前に進んでいく。これからも福岡をもっといいまちにしていくために身を粉にして、全身全霊を福岡市の発展に捧げていきます。