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So-Hot-Books (So-Hotな読書記録)

書評と読書感想文の中間の読書日記。最近は中国で仕事をしているので、中国関連本とビジネス関連本が主体。

★★★☆☆(星3)


<My Opinion>


専門が異なる10人の中国研究者が章毎に現代中国の諸問題と解決への提言を行っている。それに加えて、「視点・提言」として別の5人の識者からの意見も載せている。編者である国文良成氏の力なのだろう、新書ながらも寄稿者が豪華である。下記※印がついているのは「視点・提言」の寄稿者。

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国分良成(こくぶん・りょうせい)
慶應義塾大学教授。現代中国論・東アジア国際関係。
清水美和(しみず・よしかず)
中日新聞社(東京新聞)論説主幹。
唐 亮(とう・りょう)
早稲田大学政経学部教授。中国政治論。
※緒方貞子(おがた・さだこ)
独立行政法人国際協力機構理事長。元国連難民高等弁務官。
浅野 亮(あさの・りょう)
同志社大学法学部政治学科教授。現代中国論(安全保障)。
※五百旗頭真(いおきべ・まこと)
防衛大学校長。神戸大学名誉教授。新日中友好21世紀委員会前委員。日本政治外交史。
小嶋華津子(こじま・かずこ)
筑波大学大学院人文社会科学研究科准教授。現代中国政治。
星野昌裕(ほしの・まさひろ)
南山大学総合政策学部准教授。現代中国政治論。
※エズラ・ヴォーゲル(Ezra Feivel Vogel)
ハーヴァード大学名誉教授。社会学・東アジア研究。
高橋伸夫(たかはし・のぶお)
慶應義塾大学法学部教授。中国現代政治史。
※小林陽太郎(こばやし・ようたろう)
富士ゼロックス株式会社元取締役会長。新日中友好21世紀委員会前日本側座長、三極委員会アジア太平洋委員会委員長など。
田中 修(たなか・おさむ)
日中産学官交流機構特別委員。現代中国経済論。
丸川知雄(まるかわ・ともお)
東京大学社会科学研究所教授。中国経済。
※ジョセフ・ナイ(Joseph Nye, Jr.)
ハーヴァード大学教授。国際政治学。
田中 均(たなか・ひとし)
1947年生まれ。元外務審議官。(株)日本総合研究所・国際戦略研究所理事長。

岩波書店HP より
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これだけの著者を集めたのなら、ハードカバーで出版すれば良かったのではないかという印象。新書で出版するにせよ、せめて数冊に分ける工夫ができたのでないか。各章共に踏み込んだ内容に入る前にその章が終わってしまい肩透かしをくらったような気になる。新書では確かに限界の記述量であるが、そもそも新書にこだわる必要があったのか最後まで疑問だった。

最後に国分良成氏の中国研究に対する本質的を捉えた文章をメモして読了。

<Memo>

正直にいえば、中国研究の醍醐味は縦横無尽の想像力にある。中国研究は絶えず資料やデータの不足に悩まされる。いうまでもなくそれは政治体制と関係している。近年改善傾向にあるとはいえ、決定的に重要な資料はすべて中国共産党の奥の院に封印されている。したがって、中国研究でわれわれが本当に確認できる事実は半分、あとの半分はその事実にもとづく想像力の世界である。しかしその想像力の部分にこそ、中国研究の真の醍醐味があるのである。(P227 国分良成)

中国は、いま (岩波新書)/国分良成編
¥861
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★★★★☆(星4)


<My Opinion>


本書の趣旨はシンプルで「もっとアウトプット志向になりましょう、さもなければ情報の海に溺れて質の高いアウトプットがいつまでも出てきませんよ」ということ。当たり前のことではあるけれど、実践が難しいこの情報収集と情報活用の方法論をかなり具体的に伝授してくれている良本。


<Memo>


1情報化時代には情報収集と整理方法(インプット)では差がつきにくい。そのため出口、すなわちアウトプットで勝負することが鍵となる。


2情報活用の「目的」を明確にすることで必要な情報とその収集方法が決まってくる。


3自分の「立ち位置(ポジション)」を理解する。それによって求められる役割も違ってくるし、必要な情報や活用方法も違ってくる。


4それらを理解した上で、自分の「期待役割」、すなわち自分の得意技を身につけ、自分の勝ちパターンを築いていく。




                                 同書P29より拝借

So-Hot-Books (So-Hotな読書記録)-内田流「知的生産術」の基本スタンス  






プロの知的生産術 (PHPビジネス新書)/内田 和成
 
¥840
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★★★★☆(星4)


<My Opinion>


本書は「日経ビジネスアソシエ」の2005年10月4日号から連載している「渋谷ではたらく社長のキャリアアップ塾」を加筆修正したもの。従って、夫々の内容が単発で終わり、全体としてまとまりがなくなることは否めない。しかしながら、この77のセオリーは全て藤田晋氏本人の実体験から得た経験知なので、自己啓発作家が同様のことを言うよりも腹に落ちる。


仕事の仕方を説くような本は、どれも内容が似通ったりしていることが多いという批判があるが、私はこういった本を一種の栄養補給だと捉えている。自分自身でも仕事のセオリーは言語化して整理してはいるが、整理したものを全て実行することは困難だ。そんなとき、自分が一旦言語化した内容であっても別の著者がカタチを変えて主張してくれることで、自分のものになっていなかったセオリーをうまく自分の行動に落とし込むきっかけを作ってくれる場合がある。ビジネス書は読みっぱなしではなく、実践していくことを意識して読む限りにおいてはいくら読んでも害はなく、むしろ積極的に読むべきだと思う。

以下は抜き書きメモ。


<Memo>



・上司に期待しない方が成長できる


・効率よりも場数が能力を決める
→仕事に就いたら、とにかく早く結果を出すことが重要。その為には「場数を踏む」ことが一番重要。仕事のできるできないは、要するに場数=経験の差で決まる。


・できる人より志の高い人と付きおう


・ロールモデルは「前例」に過ぎない
→「ロールモデルがいないからキャリアの先が見えない」というセリフを耳にするが、そもそも時代も自分自身も日々移り変わっていく中では、キャリアの先などそもそも誰にも見えないのではないか。むしろロールモデルを追うよりも、それを打ち破るような誰にも思いつかないロールモデルを自分で作ってしまうほうが望むキャリアを手に入れるずっと早道だろう。


・ドリームチームは意外ともろい


・ネーミングとスローガンに知恵を絞ろう
→Cyberagentの社内制度である「2駅ルール(勤務している職場の最寄り駅から2駅以内に住めば月額3万円が支給される制度)」はネーミングが奏功した典型例。「近距離通勤者に対する家賃補助制度」ではなく、キャッチーで分かりやすい「2駅ルール」にしたために社内で広く浸透した。社内制度だけでなく、会社のビジョンや事業目標は浸透しないと意味がない。借り物の言葉やありがちな言葉では、人の心には響かない。「自分達の言葉」を作る意識が必要。


藤田晋の仕事学 自己成長を促す77の新セオリー/藤田晋

¥1,470
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★★★★☆(星4)

<My Opinion>

著者は元日商岩井社員の寺井良治氏。現在イービストレードという社員30名の総合商社の代表取締役を務める。同社は日商岩井が2004年のニチメンとの合併前に、傾きかけた会社を立て直そうと、若手社員数名が社長に直訴して立ち上げたベンチャー企業である。2001年にそれまで化学品一筋で、社内ベンチャーとは無縁と思っていた著者は突如社長として赴任してほしいと上司から告げられイービストレード社との人生がはじまる。

大手総合商社の守備範囲を良く理解していた著者は、規模的に大手総合商社が参入できないが、しかし総合商社的な機能の発揮が求められている分野に参入し利益を上げている。例えばシベリア向けの日本製中古車輸出である。ロシアにおいて、大手商社はモスクワに拠点は置いているものの、ノヴォシビルスクといったシベリア最大の都市に拠点は置いて、その都市でビジネスは展開していないのである。大手商社の規模感にマーケットサイズが見合わないからである。だから大手商社が入り込めないニッチ市場を狙うというのは王道だろう。しかしこの会社はいったい利益が上がっているのだろうか。

彼らが総合商社を名乗るからには、所謂大手総合商社と財務数値を比較してみたくなる。ここで規模の比較は無意味なので、1人当たりの「稼ぐ力」を本書から取れる同社の数字で簡単に見てみた。

09年02月期決算
イービストレード (従業員数約30人)
売上高約83億円(1人当たり約2億8000万円)
経常利益約1億6600万円(1人当たり約550万円)

09年03月期決算
三菱商事 (連結従業員数約58,500人)
売上高約22兆4000億円(1人当たり約3億8000万円)
経常利益約3800億円(1人当たり約664万円)

09年03月期決算
三井物産 (連結従業員数約40,000人)
売上高約15兆3500億円(1人当たり約3億8000万円)
経常利益約2500億円(1人当たり約618万円)

1人当たり経常利益について見れば、なんと約8割のところまで三菱商事に迫っている。現在、大手総合商社の収益の源泉は資源•エネルギー権益や幾多の投資先の子会社配当等であり、伝統的な物流型ビジネスの利益貢献度は年々低下してきている。トレーディングビジネスがコアビジネスである同社の状況を考えると社員1人1人に稼ぐ力が備わっている商社なのではないだろうか。

イービストレードの強みは営業マン1人1人の稼ぐ力に加えて、営業マンにかかるコストが安いことも挙げられる。本書によれば、総合商社における営業マン1人あたりのコストは現在7000万円くらいかかるらしい。イービストレードでは同コストは2000~3000万円だという。ちなみにそれは同社の給料が安いからではなく、管理部門が全員で4人であることに起因する。

この本は、1人1人の営業担当者の稼ぐ力の向上と、管理部門のコスト削減という大手総合商社が抱える課題をうまく乗り越えている事例として、非常に参考になる。ちょっと自社を褒め過ぎのきらいはあるが、社長と社員の前向きな姿勢が伝わってくる気持の良い本。商社ビジネスの原点を思い起こさせてくれる。



★★★☆☆(星3)


<My Opinion>

「はじめに」で著者が述べているように、この本は中国語と日本語が一見似ているようで実はそれが完全な誤解であることを、著者が大学で中国語を教えた時の体験談、著者の専門領域である漢字の成り立ち等、様々な角度から説明し、読者の誤解を解いていく。

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「きちんちと正しく訳すことはできないにしても、ざっとした意味をつかむくらいなら、中国語は漢字の意味をたどっていくだけで文意が何とか理 解できる、と考えてしまいがちなのである。もちろん、それがとんでもない見当ちがいであることは言をまたないし、本書はそのことをはっきりと知っていただくために書いたものである。」(はじめに)
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中国語を学習し始めた人は面白く読めるかもしれないが、ある程度学習が進んだ人から見ると、既知の内容が多く物足りないかもしれない。

近くて遠い中国語―日本人のカンちがい (中公新書)/阿辻 哲次
¥777
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★★★★★(星5)


<My Opinion>

本書によれば、「第二七次中国インターネット発展状況統計報告」において2010年12月までの時点で、中国のネット人口、すなわち「網民」(ネット市民) が4億5700万人に達した。1国のインターネット人口としては紛れもなく世界最大である。

現代中国では最も正確な情報が最も早く流れるメディアこそインターネットメディアという時代を迎えている。メモに抜き書きしておいたが、中国には言論統制が厳然として存在する。しかし、「網民」達は憲法一条に抵触しないように、決して中央政府や国家の最高指導を攻撃せず、自分が所属する地方人民政府の末端の「高官」を攻撃し、条文に触れないぎりぎりのラインで言論活動を展開している。

2003年の「孫志剛事件」はネット言論の力を見せつけ、国家の重要な制度を改めさせた最初の事件として有名だが、その事件をきっかけに10年目を迎えようとしている現在までに「網民」達は次々と政府の不正を告発し、地方政府や国を動かしている。

直近では、高速鉄道事故の記憶が新しい。2011年12月28日 水曜日の時事通信社の報道で、今年の中国10大ニュースの〔1位〕とされたのが「相次ぐ鉄道事故で「微博」の力」というニュースだった。記事の内容は下記の通り。

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浙江省温州市の高速鉄道(7月23日)、上海市の地下鉄10号線(9月27日)で相次いで追突事故が発生。「世界最速」や「世界最長」を誇示してきた中国の鉄道に対する信頼は地に落ちた。事故に巻き込まれた乗客らがミニブログ「微博」で即座に情報を発信し、世論形成にも大きな力を発揮した。事故調査結果が公表されないまま、年末には広東省広州市と深セン市を結ぶ高速鉄道が開業、ネットで批判が噴出した。
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最近起こったこの痛ましい事故でも中国版Twitterがニュース速報の役割を果たし、かつ世論形成のプラットフォームになり、事故発生後すぐに車両を地中に埋めて原因追求を怠った地方政府が厳しく糾弾された。依然として中央政府や最高指導者達への直接的な批判は厳しく規制されているものの、中国の民主化というテーマにおいて一番注目すべきファクターはまさしくこの「網民」であり、着実に力をつけてきている。

本書は中国における言論統制やインターネット規制の基本的枠組みを紹介した 上で、中国で話題になった豊富な事例と共にインターネット市民の勃興をコンパクトかつ丁寧に紹介している。中国のインターネットと民主化に関連する良質の入門書だと思う。ということで星5つ。

以下はメモ。

<Memo>

●言論統制の根拠は何か

まず、中華人民共和国憲法は、三五条に「中華人民共和国の公民は、言論、出版、集会、結社、遊行(デモ行進)、示威をする自由がある」と明記している。したがって、言論を統制するのは原則的には憲法に違反することになる。ここで「公民」というのは法律概念で定義されたもので、中華人民共和国の国籍を有する者は、すべて中華人民共和国の「公民」である。それに対して「人民」というのは政治概念により定義されたもので、「労働群衆を主体とする社会の成員」で、政治的権利を剥奪された思想犯などは、「公民」であっても「人民」ではない。

一方、憲法前文は「中国人民は、我が国の社会主義制度を敵視し、破壊する国内外の敵対勢力および敵対分子に対して、闘争しなければならない」と規定し、憲法一条は「中華人民共和国は労働者階級が指導し、労農同盟を基礎とする人民民主専制の社会主義国家である。社会主義制度は中華人民共和国の根本制度である。いかなる組織あるいは個人も、社会主義制度を破壊することを禁止する」と定めている。

すなわち、三五条に掲げられた自由は、あくまでも前文と一条で規定されている「社会主義制度」を擁護する条件の下でのみ保障されると解釈され、そのため言論の規制が正当化されるという理屈になるのである。したがって中国人民は「ものを言うこと」や「自分の意見を書くこと」といった自己主張に、日本人には考えられないほどの強烈な執着を持つ結果となる。現在、中国のネット空間で繰り拡げられている言論の攻防は、この「憲法一条と三五条の攻防である」と言っても過言ではない。
(P31)

●権利意識の高まりとネット言論の力

2009年11月23日午前9時、マスクをつけた広州市番禺区の市民が広州市都市管理委員会の前に集まった。同区に建設されることになっているゴミ焼却発電所建設に反対するためだ。手には「ゴミ焼却反対」と書いたプラカードを持っている。この地域は都市化が進んだニュータウンである。マイホームを持つ中間層や富裕層が多い。広州には日系企業など非常に多くの外資系企業が入り込んでいるため、土地の価値も高い。ところが2009年9月、まさにゴミ焼却発電所を建設するという発表が、突然あった。マイホームを持つ数十万に及ぶ中間層•富裕層は建設反対に立ちあがった。ダイオキシンなどによる、住人への健康被害が反対の主たる理由だが、もう一つには、せっかく手に入れたマイホームの資産価値が下がるという焦燥と憤りが市民たちを突き動かしたことは言うまでもない。

「南方日報」を始め、多くのメディアが取り上げ、もちろんネットでも燃え上がった事件だが、アモイPX事件の時と同様、都市管理委員会から市政府までの道を、「集団散歩」して講義の意思をあらわした。このとき市政府の幹部が話し合いのために「代表者を五人選べ」と拡声器で指示したが、「集団散歩」の参加者は「われわれは何をも代表しない。私は私自身の意見を持ってここに来ている」という意味で、「「被代表」になりたくない」、すなわち「不被代表」という意思表示をした。

——中略——「個人の意思と権利」を意識した民衆たちの「民意」は、最終的には市政府を建設停止宣言にまで追い詰めている。これらは網民の意思表示が、ネット言論だけでなく、バーチャル空間からリアル空間に飛び出し、実際に地方政府を動かしていくパワーとなり始めた事例として、注目に値する。(P49)

ネット大国中国――言論をめぐる攻防 (岩波新書)/遠藤 誉
¥798
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★★★★☆(星4)


<My Opinion>


タイトルが示す通り、本書はプロフェッショナル・コンサルタント(コンサルティング)が今後どうあるべきかについて書かれたものであるが、コンサルタントに限らずプロフェッショナル・ビジネスマンとしてのあるべき姿についても示唆に富む部分が多くある。


著者の波頭亮氏と冨山和彦氏はキャリアのスタートがトップ戦略系コンサルティングファーム(波頭氏はマッキンゼー、冨山氏はBCG)であるという共通点を持つ。20代の頃から積み重ねてきた豊富な現場経験に基づく提言や発言内容は開眼させられることが多かった。


コンサルタントの話は、「インテリ気取りで鼻につくことが多い」と言う人もいるが、私はそう感じない。優秀なコンサルタントは「頭の使い方」について徹底してトレーニングを積んでいるので、こういったその人達の会話を聞き、話の展開やテーマを追うだけで、普段自分の仕事で知的に怠惰になっている部分、足りない部分が見事に洗い出されてきて日々の業務改善に役立つ知恵を得ることができる。この本もそういう使い方ができる。さらに言えば思考を整理して、自らの仕事を大局的に捉え直して再定義するきっかけも作ってくれる。何気ない対談の中にも本質的な部分の多い面白い本。星4つ。


以下参考になったところを抜書き。


<Memo>


●パラドックスを内包している経営の本質的な構造
「利益の追求」「バリューの創出」「組織による活動」というのが会社の3つの要件です。つまり、利潤追求は資本の本能であり、会社の本能。だから環境変化にミートしようとするし、顧客のニーズにミートしようとする。これは健全ないい本能です。儲かるほうへ行かないと目的は達成できないから。


ただし一方で会社には、もう一つ、厄介な本能があります。それは会社が人の集団、組織であるということから来ている、組織の本能です。組織の本能が求めるものは、自己増殖と変化の排除です。会社と違って資本の本能を持たず、組織の本能だけで動いている官僚組織を見れば一目瞭然でしょう。「そういうことは前例にありません」なんてことを言って新しいことは拒みながら、年々増殖し膨張しようとする。変化の排除と自己増殖。これが組織の本能なんです。


こうして会社は、資本の本能と組織の本能が二重螺旋のように絡んで動いていく。資本の本能が環境変化に合わせて事業分野や戦略スタイルを変えようと志向する。しかし、新しいことはやりたくないとする組織の本能が障害になるという中で、舵取りをするのが経営、マネジメントだということです。これが一番ベーシックな会社と経営に関する定義です。(波頭亮P35)


リーマンショックの本質とは、非代替的な経済資源であるインテリジェンスは、実は制御不能に陥ることもある、ということです。株式会社は、資本家が経営者を代理人として選んで、契約で資本家の目的である利潤の極大化を委託している、という仕組みです。そして希少資源である高度なインテリジェンスを持つ人材であれば、経営者として資本家と契約を結ぶ際に、極めて有利な条件を認めさせることができるわけです。たとえばリーマンブラザースのトップみたいに。具体的に言うと、リスクの大きな勝負を張って大儲けしたら50億円とか100億円とか、とんでもない額のお金が報酬として貰える。一方、失敗して500億円とか1000億円とかの損失を出しても、クビになるだけで済む。(波頭亮P38)


●クライアントとの関係は「どっちが考え尽くしたか」という真剣勝負
コンサルタントでも経営者でも、経営マターとか経済マターとかについて30分か1時間話をすると、相手の力量というか見識の深さ・広さというのはわかりますよね。それで相手に認めてもらえると最初のドアが開いて、次に2番目のドアが待っている。自社に関するクリティカルなイシューを投げかけたとき、どれくらいリアリティを持ってその話を理解し、問題意識を共有化できるかを判断される。(波頭亮P96)


●業界誌2年分を読み込めば業界の仕組みと構造が見えてくる
すごく具体的な話でいうと、どの業界でも業界新聞とか業界誌ってありますよね。私がよくやっていたのは、2年分を読むことでした。新しいクライアントが決まると。月刊誌2年分、24冊。1ページ目から最終ページまで全部読む。そうするとね、ターミノロジー(専門用語)だったり、業界の基礎的な仕組みだったりについてだいたい基礎知識ができる。業界誌って1年間の間にはだいたいの重要なテーマを取り上げるから、一通りのことがわかってくる。(波頭亮P128)


プロフェッショナルコンサルティング/波頭 亮

¥1,575
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★★☆☆☆(星2)


<My Opinion>


今、中国でどのような日本人(注:中国人も多少取り上げられている)が活躍しているのかを知ることができる。各分野における「最強」のプロフェッショナル50人が夫々チャイナビジネスの極意を語っているらしいが、果たして彼らが本当に各分野で成功しているのか、本の中には客観的なデータがなく判断不能。中国に進出したての事例も紹介されており、タイトルの付け方と編集がいい加減に感じる。読み終えた後に、本書の監修が週刊SPA!中国取材班であったことに気づき、ならば仕方ないと妙に納得した。星2つ。

中国進出 最強のプロフェッショナル50人 チャイナビジネスはこの人達に聞け!/週刊SPA!中国取材班
¥1,260
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★★★★☆(星4)


<My Opinion>


1842年の南京条約によって開港して以来、日本の太平洋戦争敗戦で実質終焉した上海租界の歴史100年間を中心に上海の歴史を総括した本。本書の一番の特徴は、上海の国際性を理解する為に租界時代の人々の暮らしを国籍別に検証している点にある。この検証を通して上海社会の構成員としての外国人および中国人がそれぞれ果たして役割が見えてくる。


「上海は潮の香りのする風が吹く、一地方都市に過ぎなかった。その運命を大きく変えたのは、外国人の到来である。」(P5)


今の国際都市上海はおよそ150年前にイギリス、フランス、アメリカ、日本をはじめとした外国人が、上海における権益を広げたいという欲求の下、自国の自治制度や文化を地元に根付かせようとした行動が基礎になって形作られた街である。国籍別に著者はこんな見方をしている。


イギリス人:「自由都市」としての街の基盤を作った。大英帝国のプライドとライフスタイルをそっくり持ち込み、政治・経済の各面において支配の中枢に君臨した。余談だが今の人民広場はイギリス人が作った競馬場の跡地である。


アメリカ人:第一次大戦後、豊富な資本と物資により、上海の繁栄を支えた、ファッションや娯楽の面で流行をリードしただけでなく、自由や、個性の尊重といった精神面でも大きな影響を与えた。


ロシア人:1917年のロシア革命を逃れてきた白系(帝政支持派)の人々は、フランス租界の主要な住人となった。音楽・演劇・舞踊などのクラシカルな芸術活動を盛んに行ない、新興都市である上海に「文化」を与えた。難民であるロシア人が上海の経済に重要な役割を果たすことはなかったが、文化的な貢献はきわめて大きかった。


日本人:欧米の植民地と化した租界を自らの「反面教師」とし、明治以降の国力増強に伴って上海に進出した。繁栄期には外国人の中で最多の人口を誇り、独特の「日本人街」を形成した。


ユダヤ人:発展期の上海で財を成した人々と、ナチスの迫害を逃れてヨーロッパからやって来た難民とに二分される。後者は上海の白人の底辺に位置づけられたが、勤勉な働きぶりや優れた音楽活動など一定の足跡を残した。


中国人:人口の多数を占めながら支配の実権を持たなかった中国人は外国人のふるまいをじっと見つめてきた。国内の変化および国際情勢の変化により、中国人は着実に政治的・経済的な力を蓄え、最終的に外国の支配からの「解放」を選択した。


歴史はいつも皮肉であるが、現在の魅力ある世界級都市である上海は外国人、中国人どちらが欠けても今の姿にはなっていなかった。その事実を改めて振り返えれば、上海をもう一段深く見ることができるようになる。上海在住者は読んで損がない1冊。

上海 - 多国籍都市の百年 (中公新書)/榎本 泰子
¥840
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★★★★☆(星4)


<My Opinion>


日本を代表する保守論客かつタカ派だけに、中国に対する姿勢も非常に強固なものを感じる。本書において櫻井氏は中国は歴史を捏造する国家であり、例えば南京事件で30万人が虐殺されたとする説は決着のついていない歴史認識問題あるにもかかわらず、中国は30万人説を一方的に主張しているとして強く批判している。


私自身も中国は歴史にとどまらず、あらゆるものを捏造する国家だという認識を持っている。中国に来て間もなく発生した9月7日の尖閣諸島中国漁船衝突事件では領土問題が存在しないはずの尖閣諸島問題を中国が「尖閣諸島は中国固有の領土」と主張して日本側の主権に基づく司法措置に強硬に抗議した。船長・船員の即時釈放を求める中国に対し、最終的には日本側が船長・船員共に釈放に応じた経緯がある。この事件を中国にいながら見ていた私は日本の弱腰外交に対してよりも、むしろ歪曲した事実を堂々と主張してくる中国に対して憤りと恐怖感を覚えたものである。


櫻井氏が良く言うのは、中国は日本の国柄を利用している、中国は「日本は押せば引く国である」との考えの下であらゆる主張を貫き通そうとする国家である。まさにその通りだと私も思う。歴史・外交問題だけでなく、ビジネスフィールドにおいてもアポイントメントの直前キャンセル、契約の無断放棄等は日常茶飯事である。しかしながら日系企業が相手に対して強攻に出たり、法的手段に出たりすることは多くなく、仮に法的手段に打って出たとしても勝ち目はほぼない。結局は日本側が中国に対して譲歩することがありとあらゆる場面で多いのである。


これは長期的に見れば日本の国益を確実に損なう行動であり、日本は毅然とした態度で対中外交、通商に臨まなければいけない。本書は安易な日中友好論よりも、ずっと真剣に日本の国益と将来の日中関係を考えた本であり、一読の価値があると思う。


異形の大国 中国―彼らに心を許してはならない/櫻井 よしこ
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