ICE PICK -4ページ目
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チカーノ

年末年始、地元豊橋のラウンドワンにちょこちょこ足を運んだ。そこには意外な風貌の輩が。剃り上げた頭、球根の先っちょのような髭、ホットロッドでホッピングに興ずる彼ら、そうメキシカンカルチャーを代表する『チカーノ』であった。

 そしてこの『チカーノ』との邂逅がほろ苦い思い出を呼び起した。高校時代の話。学校の帰り道、WAVEという輸入レコード/CD屋にフラ~と足を運びフラ~と店内を徘徊していて目に飛び込んできたしびれるPOP。『極上のメロウネス あの娘のお股もトロトロ・メロメロ』。WOW!笑。そこはチカーノラップの特集コーナー。トロトロメロメロ?嫌いじゃない。そんな感じで物色開始。一端に目をやるとそこには『横山剣 推薦アルバム』との文字。むむむ。なんちゅうアーティストだ?? Lil Rob  知らん。いや~でも剣さん推奨だし。買いでしょ、買・い。そんなノリで購入決意。チカーノデビューは『Lil Rob : Neighborhood Music』。家に帰って速攻、再生。自分は男の子。お股の心配なんて蛇足よな?と思いきや………。WOW~! 笑  ねちっこいながら伸びのいいヨコノリ感はハンパなく、心象風景といったらそりゃトロトロメロメロなわけで、思わずサムオクターブ・アゲ↑な感じで口からこぼれてしまった。「イ~~~ッネ!!」と。



 それからというもの、よくもまあ来る日も来る日も飽きずに…というくらいこのアルバムを聴いた。そんな日々の中、ある友人と名古屋に繰り出そうという約束をかわした。その友人とは、中学時代、ボクに洋服やら音楽やらへの興味を植えつけてくれた、恩師的存在、その名もタロウメンだ。タロウメンはラッパー、DABOを煎じて薄めたようなザ・ストリートの申し子的な風貌で、実際に自らラップもするし楽器も弾くナイスなガイである。彼との会話でボクは幾度となく自分の無知さに気づかされてきた。そんな友人は稀であり、愛すべき貴重な存在なのである。その彼と久々に再会ということで半ばスキップ交じりでやーなごへ。久々に会う彼のDABO度には拍車がかかっており、一瞬ガチでDA,DABO??と疑ってしまうほどだったが、目が慣れてくるにつれまぎれもないタロウメンであることがわかった。ブラブラを開始するや否や気づかされる。タロウメンは相も変わらず、名古屋のワルそなやつだいたい友達。行く店、行く店「よ~、タロウ!久しぶり~。」は~、かっこいいっす!兄貴。

 クルージングが中盤に差し掛かった頃、とあるお店で『MEXICO』の文字を発見。すると終始ゴキゲンで調子もすこぶるよさげだったタロウメンが異常なほど興奮しだした。「うへ~、メキシコ。メキシコ、やべ~。」黒魔術!?何かに取り憑かれたかのような彼の姿は狂気の沙汰であった。どうしたタロウメン!?落ち着きを取り戻した彼によくよく話を聞いてみると、どうやら彼はチカーノラップに心をズッキューンと打ち抜かれた「虜」であって、メキシコというワードに過剰なまでに敏感になっていたようだ。しかも今晩、他の友人らと合流してチカーノパーティーに乗り込むんだとか。な、なんともタイムリーな。完全にシンクロしてるじゃないか。あ、アニキ、俺も行きたいっす!実はLil Robとか好きでさ…。心の叫びを吐露してみた。タロウメンは喜んで了承してくれた。とりあえずチケット買いに行く?YES !!こんなノリでshopへ向かった。

 shopには、普通に生活していたらまず交わることのないようなイカツイ旦那達が。当時、Lil Robにはまっていたとはいえ、ヒエラルキー的にはRadioheadやPhoenixの方が上にあったわけで、そんなヤツのファッションの着地点といえばモッズ風。どこかスノッブを決め込んだ感じ。マチズモなチカーノに歩み寄れる要素はゼロだったのか…。店員の兄ちゃん、もとい、旦那にこう一蹴された。きみはやめといたほうがいい。パキーッン。ブレイクマイハート。Why ? (なぜ?) 今改めて思うと旦那の優しさだと解釈できないことはない。しかし当時のボクにはこの振られた感はいささかショッキングであった。17歳にはとうてい出せないであろう哀愁を醸し出しつつ店を出た。

 日が暮れて、タロウメンの連れ(その連れもDABO似だったのはウケた)と合流した。月夜の白川公園。話に咲いた花がその場を彩り、笑い声が静寂さを切り裂く。あっという間に時間は流れ、終電の時間を迎える。タロウメンらは箱買いしたハイネケンをオールドスクーラーがラジカセを担ぐごとく背負い、闇へと消えていき、自分もまた一縷の哀愁を背負い帰路につくのであった。

歪める

早いものでキックボードでぴょんぴょん・キャッキャ、フリースタイルでお隣さんへの感謝をラップ、そんなクリスマスから約1ヵ月が経つ。


年末風物詩『M-!』が惜しまれながらも終わりをつげたのも同じ頃だ。最後だからといってとりわけ身構えて観たわけでもないが強烈に残っている。スリムクラブの「放射能」。またエライとこからブッコンできたな~とそのパンチの角度にたまげたわけで。同時に「放射能」というワードが放たれた時に受けたインパクトがどこかラップミュージックを聴いた時に受けるそれと似通っているな~と感じたり。ちなみにラップとは、虐げられたブラックぴーぽーの現実逃避のための言葉遊びが起源とされる。巧みに言葉を用い、イメージを羅列し、聞き手はそのぶつ切りのイメージの中をジャーニーする(ボクなりの解釈)。スリムクラブが放った「放射能」というワードは日常から乖離している。この言葉は聞き手を非日常へと誘い、歪んだフィクションの世界にズブズブとはめていく起爆剤となったようだ。


近年の、笑い飯「鳥人」、モンスターエンジン「神々の遊び」などのお笑いクラシックを見ると“設定勝ち”感が否めない。80年代以前、現実に忠実であろうとしたアメリカ映画が近年CGの進歩を駆使してどう現実を歪めるかに腐心しているように、何度も使いまわされてきたような話や世界はついにあきられ、端に追いやられていくのか。お笑いも、どれだけ現実からジャンプし、どれだけ特異な世界観を披露できるかという作家性が必要な時代。「マルコムヴィッチの穴」的コントがみれるのもそう遠くはないのかもしれない。

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