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Naoto's Blog  ~法廷の合間に~

岡山の弁護士のブログです。
法廷の合間に考えたこと気付いたことを不定期につづっていきます。

我々の業界用語で「後ろ向きの弁論」というのがあります。


決して「消極的な弁論」を指す言葉ではありません。ある意味逆ですね。


弁論期日や尋問期日において、依頼者受けを狙った無意味なパフォーマンスをすることを言います。


本来、弁護士の職責は、裁判官を説得する作業ですから、弁論は法檀に向けてなされるべきものです。これに対して、無意味なパフォーマンスは法廷の傍聴席にいる依頼者に向けてなされるものですから、「後ろ向き」というのですね。


ですから、「後ろ向きの弁論」を見た素人の依頼者は、「消極的」どころか、さぞ頼もしい思いをするのではないでしょうか。


しかし、プロから見るとどうでもよい当たり前の話をさも重要なことであるかのように得々と演説したり、争点と全然関係のないところで相手方証人をしかりつけてみたり…。


あからさまな「後ろ向きの弁論」は「いとすさまじ」。鼻白むものですね。

先日、岡山大学法科大学院の「ローヤリングクリニック」に参加してきました。


耳慣れない言葉かもしれませんが、要はロースクールの学生さんが勉強のために法律相談を担当し、弁護士である私が「お目付け役」として横に座っているというものです(この説明で正しいのか不明)。


教室での勉強とは違い、実務上生起する問題は変化球そのもので、的確に答えるにはそれなりの修練が必要です。相談内容はよくある類のものでしたが、学生さんにはなかなか難しかったかもしれませんね。


ただ、個人的な意見をいえば、こういった経験は実務家になれば嫌でもできますし、責任を持つ立場で恥をかいたり苦しんだりしなければ身に付かないですから、今は余り気にしないでもいいと思います。


いうなれば畳の上の水練みたいなもので、これをやったからといって泳げるようになるわけではありません。


今はもっと基礎的・基本的なことをしっかりと身に付けて、早く試験を突破してほしいと思います。


「日本の裁判は長い」とよく言われます。


確かに、一部の重大事件については、非常に長くかかることがありますね。


「思い出の事件を裁く最高裁」といった川柳や「桃栗三年柿八年」をもじった「桃栗三年公事(くじ:裁判のこと)八年」といったことわざ(?)もあるほどです。


「遅れた裁判は裁判の拒絶に等しい」との認識に立ち、平成15年には、司法改革の一環として、「裁判の迅速化に関する法律」が制定・施行されました。


この法律によると、「第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ」るとされ(2条1項)、法曹三者の努力が要求されています(2条2項)。


この法律が制定されたこともあって、日本の裁判も随分とスピードアップしたように思いますが、現在でも諸外国と比べて長いのでしょうか?


最高裁のまとめた司法統計によると、平成22年における民事第一審訴訟事件の平均審理期間は6.8か月、ごく短期間で訴訟が終了する過払金の訴訟を除いたデータでも平均審理期間は8.3か月とのことです。

ただし、人証調べまで実施した事件の平均審理期間は、19.1か月とのことであり、尋問などを実施する事件が比較的長いといえるでしょう。


これに対して、諸外国はどうでしょうか。


最高裁が平成19年に調査した結果によると、アメリカの中位数は8.5か月、イギリスではトライアルまで行った争訟性の高い訴訟の平均審理期間は22.4か月、フランスでの平均審理期間は9.6か月、ドイツの平均審理期間は7.2か月なのだそうです。


法制度の違いがありますので、なかなか比較が難しいところがあるのですが、諸外国もそれなりに審理期間を要していることが分かりますね。


よく考えてみれば、そもそも裁判は他人の紛争ごとに首を突っ込むという作業。元来、当事者間にしかよく分からない過去の連綿とした事実を乏しい証拠で認定していくという作業ですから、それなりの時間を要するのも当たり前かもしれません。



ところで、世界で一番長くかかった訴訟は一体どれくらいかかったかご存知でしょうか?


穂積陳重博士の『法窓夜話』によると、イギリスのバークレー(Berkley)事件だそうです。


この事件は、イギリス貴族の領地の相続権争いらしいのですが、1416年に始まり、1609年(!)にようやく終わったとのこと。しかも、その間、裁判だけでは飽き足らず、両家で領地をめぐる戦争(?)までしているらしいのです。文句なく空前絶後でしょうね。



相続がモメるのは現在の日本だけのことでなく、古今東西変わらないのかもしれません…。