「日本の裁判は長い」とよく言われます。
確かに、一部の重大事件については、非常に長くかかることがありますね。
「思い出の事件を裁く最高裁」といった川柳や「桃栗三年柿八年」をもじった「桃栗三年公事(くじ:裁判のこと)八年」といったことわざ(?)もあるほどです。
「遅れた裁判は裁判の拒絶に等しい」との認識に立ち、平成15年には、司法改革の一環として、「裁判の迅速化に関する法律」が制定・施行されました。
この法律によると、「第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ」るとされ(2条1項)、法曹三者の努力が要求されています(2条2項)。
この法律が制定されたこともあって、日本の裁判も随分とスピードアップしたように思いますが、現在でも諸外国と比べて長いのでしょうか?
最高裁のまとめた司法統計によると、平成22年における民事第一審訴訟事件の平均審理期間は6.8か月、ごく短期間で訴訟が終了する過払金の訴訟を除いたデータでも平均審理期間は8.3か月とのことです。
ただし、人証調べまで実施した事件の平均審理期間は、19.1か月とのことであり、尋問などを実施する事件が比較的長いといえるでしょう。
これに対して、諸外国はどうでしょうか。
最高裁が平成19年に調査した結果によると、アメリカの中位数は8.5か月、イギリスではトライアルまで行った争訟性の高い訴訟の平均審理期間は22.4か月、フランスでの平均審理期間は9.6か月、ドイツの平均審理期間は7.2か月なのだそうです。
法制度の違いがありますので、なかなか比較が難しいところがあるのですが、諸外国もそれなりに審理期間を要していることが分かりますね。
よく考えてみれば、そもそも裁判は他人の紛争ごとに首を突っ込むという作業。元来、当事者間にしかよく分からない過去の連綿とした事実を乏しい証拠で認定していくという作業ですから、それなりの時間を要するのも当たり前かもしれません。
ところで、世界で一番長くかかった訴訟は一体どれくらいかかったかご存知でしょうか?
穂積陳重博士の『法窓夜話』によると、イギリスのバークレー(Berkley)事件だそうです。
この事件は、イギリス貴族の領地の相続権争いらしいのですが、1416年に始まり、1609年(!)にようやく終わったとのこと。しかも、その間、裁判だけでは飽き足らず、両家で領地をめぐる戦争(?)までしているらしいのです。文句なく空前絶後でしょうね。
相続がモメるのは現在の日本だけのことでなく、古今東西変わらないのかもしれません…。