我々の業界用語で「後ろ向きの弁論」というのがあります。
決して「消極的な弁論」を指す言葉ではありません。ある意味逆ですね。
弁論期日や尋問期日において、依頼者受けを狙った無意味なパフォーマンスをすることを言います。
本来、弁護士の職責は、裁判官を説得する作業ですから、弁論は法檀に向けてなされるべきものです。これに対して、無意味なパフォーマンスは法廷の傍聴席にいる依頼者に向けてなされるものですから、「後ろ向き」というのですね。
ですから、「後ろ向きの弁論」を見た素人の依頼者は、「消極的」どころか、さぞ頼もしい思いをするのではないでしょうか。
しかし、プロから見るとどうでもよい当たり前の話をさも重要なことであるかのように得々と演説したり、争点と全然関係のないところで相手方証人をしかりつけてみたり…。
あからさまな「後ろ向きの弁論」は「いとすさまじ」。鼻白むものですね。