はじめに
志望校を検討する際に、通学時間はとても重要な要素です。自宅から学校までの時間をネットで調べたり、実際に電車に乗って疑似通学した方も多いと思います。本稿ではこの通学時間という観点から首都圏女子(上位層)中学受験の全体像を考えてみました。
方法
計算したいのは「A中学に通えるのは首都圏受験生のうちの何%か」です。これを見積もるためには、学校の所在地、及び、受験生の人口分布を調べる必要があります。前者は容易に入手できますが、後者は大手塾のマーケティング担当者は調べているでしょうが、一般には 入手することは困難です。
1都3県の6年生数、私立進学率(非公立進学者)、及び、割合(私立進学者における各都県の比率) に関しては下記のようなデータがあります。しかし、都県別というのは地理的な要因を分析するには粗すぎます。
| 都県 | 6年生数(万人) | 私立進学率 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 東京 | 10 | 26.0% | 61% |
| 神奈川 | 8 | 12.3% | 23% |
| 埼玉 | 6.7 | 4.3% | 7% |
| 千葉 | 5.7 | 6.8% | 9% |
注)寄せ集めのデータなので正確ではりません
そこで、着目したのは大手塾の校舎毎の在籍数データです。大手塾の出店(?)戦略は市場調査に基 づいているはずですから、その在籍数の分布は受験生の人口分布の近似になるはずです。今回はネットでデータの入手が可能だったSAPIXさんの数字を使用させていただきました。
具体的な計算方法は以下の通りです。
・X校舎の最寄駅からA中学の最寄駅までの通学時間(本稿では最寄駅間とし、徒歩の時間は含まない)を、A中学の最寄駅に8時に到着するという条件で調べます。
・この通学時間が50分以内であれば、在籍者全員が通学可能とし、70分以上であれば、全員が通学不可能とします。50分以上70分以内の場合は(70-通学時間)/20を掛けた人数だけが通学可能とします。
・全ての校舎についてこの通学可能人数を足したものを、全体の在籍数で割った結果を「A中学に通える率」とします。
もちろん、X校舎に通っている塾生の最寄駅がX校舎の最寄駅とは限りませんから、厳密な見積もりではなく、大まかな目安と考えてください。
結果
主な学校の「通える率」の計算結果を下に示しました。
| 都県 | 学校 | 最寄駅 | 通える率 |
|---|---|---|---|
| 東京 | 渋谷渋谷 | 渋谷 | 96% |
| 女子学院 | 半蔵門 | 95% | |
| 桜蔭 | 水道橋 | 93% | |
| 豊島岡 | 池袋 | 93% | |
| 鴎友 | 経堂 | 83% | |
| 吉祥女子 | 西荻窪 | 82% | |
| 早稲田実業 | 国分寺 | 68% | |
| 神奈川 | 洗足 | 溝の口 | 85% |
| フェリス | 石川町 | 63% | |
| 慶應SFC | 湘南台 | 51% | |
| 鎌倉女学院 | 鎌倉 | 36% | |
| 埼玉 | 浦和明の星 | 東浦和 | 58% |
| 千葉 | 渋谷幕張 | 海浜幕張 | 28% |
当然ですが、都心の学校は通える率が高くなっています。これに続くのが都内のやや郊外に位置する学校であり、神奈川、埼玉、千葉の学校が続きます。やはり、幕張、鎌倉まで遠くなると、通える率は限 定されてきます。
応用として、2つの学校の組み合わせを考えてみます。例として、女子最優秀層の併願パターンである浦和明の星と桜蔭をとりあげます。算数の集合の単元のように、通える率の組み合わせを整理すると 、次のようになります。
| 浦和明の星 | |||
|---|---|---|---|
| 通える | 通えない | ||
| 桜蔭 | 通える | 58.2% | 34.3% |
| 通えない | 0.0% | 7.5% | |
さらに、首都圏受験生で桜蔭に通えることを前提条件として、浦和明の星への通える率を求めると、次 のようになります。
浦和明の星に通える : 63%
浦和明の星に通えない: 37%
通えないのに桜蔭を受験することはないでしょうから、これを無視すると、桜蔭受験生の63%は「通える浦和明の星」を 受験していると推測されます。さらに、難易度の差異や合格者数を考慮して、大胆に言い切ると、桜蔭受験生の6割強は第2~第4志望くらいとしての浦和明の星の合格をもって、桜蔭を受験しているという ことになります。残りの4割弱は「通えない浦和明の星」か「地方校お試し受験」はあるにせよ、「通える合格」がない状態で受験するわけですから、精神的な差異は大きいといわざるを得ません。また、このハンデや通学時間などを考慮して、桜蔭を回避する受験生が増えるほど、「通える浦和明の星」の合格を持たない受験生のハンデは相対的には増えてしまいます。
中学受験はほぼ学力だけのガチンコ勝負が特徴であるのですが、1月受験校に通えるかどうかに関しての不公平感は否めません。関西圏のように1都3県で統一日を設けるべきかを議論する時期のように思います。もちろん、強い志望動機、実力と度胸があれば、この程度のハンデは関係ないかもしれませんが...
補足
・在籍者数の比率は東京:56%、神奈川:25%、埼玉:7%、千葉:12%であり、東京が若干少ないものの、ほぼ中学受験者の割合に近い値になっています。
・「浦和明の星に通える」率は四谷大塚の校舎の分布からも大まかに推定可能です。