概要:
数回のテストのデータでは偏差値の平均値の信頼性は高くない場合がある。
まして、偏差値の標準偏差の信頼性は低い。
はじめに:
受験校決定の際には、6年秋の複数回の模擬試験(例えば、合不合4回)の
偏差値の平均値を参考にすることになります。これに加え、偏差値の標準偏差が
わかると、さらに確度が高く受験校を設定できるのではというのを以前書きました。
では、この偏差値の平均値、標準偏差というのはどの程度信頼できるものなので
しょうか。問題の傾向、形式などは考慮せず、純粋に統計的な観点から考えてみ
ました。
方法:
統計学における区間推計という考え方を適用します。ある個人の偏差値は本来的
には平均値μ、標準偏差σで記述される正規分布に従うと仮定します。この場合、
平均値が実力を示し、標準偏差がテストとの相性などによるばらつきを示します。
この本来的な分布を統計学でいうところの母集団とみなします。
一方、実際に模擬試験を受けると具体的な偏差値がでてきます。4回試験を受け
れば、例えば、54, 57, 53, 54というデータが得られます。この偏差値のデータを
標本集団とみなします。標本集団の平均値x、標準偏差(不偏分散の平方根)Sは
容易に計算することができます。
問題はこの具体的な偏差値から算出した平均値x、標準偏差Sから本来のその子が
もっている偏差値の平均μ、標準偏差σを推定できないかということに帰着します。
統計学によるとt分布、χ2乗分布という特殊な分布を用いるとある信頼率のもとに
これらを算出することができます。以下、数式を示しておきます
この例では10回のテストの偏差値データが
55.6, 57.4, 57.8, 54.2, 56.5, 58.8, 57.5, 56.5, 57.7, 54.8
であった場合に、本来の偏差値の平均値μ、及び、標準偏差σが95%の信頼性で
平均: 55.6~57.7
標準偏差: 1.0~2.6
の範囲にあることがわかります。
注:平均の55.6~57.7の範囲のことを95%の信頼性での信頼区間といいます。
標本のばらつきが小さいほど信頼区間は狭くなります。
結果:
例として3人のテスト結果に関し、信頼区間を計算しました。信頼度としては統計学では
95%を用いることが多いようですが、ここでは緩く、80%とします。
3人はいずれも標本平均偏差値は57ですが、標準偏差は1, 2, 3と異なっています。
ばらつきの小さかったAさんの場合、本来の平均偏差値の80%信頼区間は約57±0.8であり、
感覚的には平均偏差値として57を用いてもよさそうです。しかし、ばらつきの大きかった
Cさんでは57±2.5となり、平均57というにはそのレンジが広すぎるような印象を持ちます。
従って、Cさんの場合は平均偏差値が55くらいであることも想定して併願対策をしたほうが
よさそうです。また、標準偏差に関してはAさんですら信頼区間のレンジが3倍程度になって
おり、使い物にはならなそうです。
使い方:
種々のテストの偏差値の平均値をだすついでに、標本標準偏差を計算し、そこから平均の
信頼区間を計算してみましょう。平均すらぼやけたものであることを十分に認識し、特に
信頼区間が広い場合は慎重に受験校を検討しましょう。
また、本来の標準偏差を数回のテストから推定することは困難なようです。これに関しては
受験者平均などで代用するしかなさそうです。






