概要:
テスト毎の偏差値ばらつき(自己標準偏差)が受験者に依存しないと仮定し、
2回のテストをシミュレーションすると、
2回のテスト偏差値の差分の標準偏差=1.4×自己標準偏差
残留率(偏差値63以上)=1-0.1×自己標準偏差
の関係がある。これらから、平均的な自己標準偏差を見積もることができる。
はじめに:
テスト結果を詳細に分析し、合格のための戦略を検討するためには、ばらつきに
関する考察が欠かせません。ここでいうばらつきとは個人のテスト間のばらつきの
ことであり、過去のテストの偏差値の標準偏差として計算することができます
(テストの回数が少ないので精度は高くありません)。この偏差値の標準偏差を
自己標準偏差と呼ぶことにします。この自己標準偏差を評価するためには、
他の人の偏差値のばらつき、言い換えれば平均的な自己標準偏差が
どの程度かを知っておく必要があります。
本稿では、テスト結果のデータからこの平均的な自己標準偏差を求
めるための公式を簡単なシミュレーションから導出しています。
方法:
偏差値の定義より、母集団全体の偏差値の平均値は50、標準偏差は10に
なります。
N人の受験生を考えます。彼らはその学力に応じ、持ち偏差値(平均偏差値)、
Mi(i=1~N)を持ちます。ただし各回のテストでは問題との合性や調子によって
テストの出来がばらつきます。この個々の受験生の各テスト毎の偏差値の
ばらつき(自己標準偏差)をSiとします。言い換えると、iさんは多数回テストを受けるとそ
の持ち偏差値はMi、標準偏差はSiとなります。
ここで簡単のため、以下の仮定をおこないます。
・各受験生の持ち偏差値をN人の度数分布としてみると正規分布にしたがう
・各受験生のテスト毎の偏差値のばらつき(自己標準偏差)も正規分布にした
がう。さらにそれは受験生によらずに等しい。(平均的な自己標準偏差を求めるため)
・各回のテストでは偏差値の平均は50、標準偏差は10となる。そのために、持ち
偏差値の標準偏差は(100-S×S)の平方根とする。
(テスト間ばらつきの分だけ、個人間ばらつきを減らしています。厳密ではありま
せんが、概ねこの操作によりテストの標準偏差が10になります)
各自の平均偏差値、及び、その標準偏差を正規分布に従う確率分布としてExcelで2回の
テストをシミュレーションしました。
結果:
最初に自己標準偏差を2でN=5000人とした場合の結果について示します。
下表は計算結果の例です。例えば、ID-2番さんの場合、持ち偏差値は53ですが、
1回目は51.5、2回目は55.1になっています。このばらつきは自己ばらつきになります。
下図は2回のテストの結果の偏差値分布を示しています。上表で示したように個人で
みると偏差値はばらついていますが、集団としては概ね一致した分布となっています。
下図は2回のテストの偏差値の差分の分布を示したものです。この差分の分布の
平均はゼロであり、標準偏差は2.8となっています。この標準偏差は自己標準偏差
の1.4倍に相当します。
下図は一回目のテストで63以上であった474人の2回目のテストでの偏差値の
分布を示したものです。自己ばらつきのため、92人は2回目のテストでは63以下の
偏差値になっていることがわかります。
ここで偏差値Xの残留率を
残留率 = 1回目、2回目共に偏差値X以上の人数/1回目に偏差値X以上の人数
と定義します。図3の場合、この残留率は80%となります。
次に差分のばらつき、及び、残留率の自己標準偏差依存性を示します。
下図は差分の分布の標準偏差の自己ばらつき標準偏差依存です。
差分の標準偏差と自己ばらつき標準偏差には
差分の標準偏差=1.4×自己標準偏差 ・・・(1)
の関係があります。。これは2つの独立な正規分布に従う確率変数X、Yの差、X-Yの
標準偏差が√2倍になることと類似した性質
です。
下図は残留率(基準偏差値63)の自己標準偏差依存性を示しています。
残留率と自己標準偏差の間には
残留率=1-0.1×自己標準偏差 ・・・(2)
の関係があります。図の直線の傾き(上式の0.1)は基準偏差値に依存して変化します。
基準偏差値が大きいほど傾きは大きくなります。詳細は省略します。
使い方:
個々の受験者の複数回のデータがあれば、(1)式から平均的な自己標準偏差を
求めることができます。また、残留率がわかれば(2)式から平均的な自己標準偏差を
求めることができます。残留率による見積もりは組分けの他、合不合と入試結果などに
適用することができます。
各個人の自己標準偏差と平均的な標準偏差を比較することにより、ばらつきが
大きいかどうかの目安を知ることができます。
補足:
平均的な自己標準偏差は各個人の多数回のテストにおける自己標準偏差の平均
として計算するのが最もオーソドックスです。ただ、各個人の多数回のテスト結果を
入手することは可能だとしても、時期が遅くなってしまいます。








