量子論って日常の世界では
不思議な現象なので
イメージし難いです。

日常の世界と量子サイズの世界との関係を
博士が学生に語る形で
簡単に説明された記事がありました。
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・量子論は日常眼にする
「マクロな世界」とは関係がないのか?


量子論は対象の
サイズに関係なく、
自然界全般の現象に
原理的には適用できる。

しかし、
量子論的な現象は、
ミクロな世界で
よりきわだってくるといえる。

原子以下のサイズになってくると、
量子論で考えないと
まったく説明できないような現象が
次々と顔を出してくるのだ。


【博士】
量子論は、
原子や電子といった
とても小さいものが
どのようにふるまうかを説明する、
物理学の大理論です。

現代の物理学は、
一部の例外をのぞいて、
すべて量子論という
上台の上に築かれている
といっても過言ではありません。

量子論以前の物理学を
「古典論」とよびますが、
原子より小さいような
ミクロな世界は、
古典論では説記明がつかず、
量子論という
新しい理論が生まれたのです。


【学生】
では、
量子論は
ミクロな世界を
解き明かすために
必要な理論であって、
私たちが日常眼にするサイズの世界
(マクロな世界)は、
量子論とは関係しないのですか?


【博士】
そんなことはありません。

【量子論はマクロであろうと、
 ミクロであろうと、
 自然界のすべてのサイズで
 適用できます。】

一方で、
「ニュートン力学
 (物体が力を受けて
 どのように運動するかなどを
 説明する理論)」や
「マクスウェルの電磁気学
 (電気や磁気に関する理論)」
などの古典論は、
マクロな世界でしか適用できません。


【学生】
では、
ミクロな世界もマクロな世界も、
量子論ですべてがこと足りる、
ということになるのでしょうか?


【博士】
そうともいえません。

たとえば、
【マクロなサイズの物体の運動に
 量子論を適用すると、
 計算量が膨大になってしまいます。

 そこで
 実用上は計算が楽な
 古典論が使われます。

 マクロな世界では、
 量子論による答えと
 古典論による答えが、
 ほとんど同じになるのです。】


【学生】
では、
量子論を使わないと
説明できないような
マクロな物質での現象は
何かありますか?


【博士】
自然界の物質は、
電流を流す「金属」、
電流を流さない「絶縁体」、
その中間の性質の
「半導体」におおまかに
分類することができます。

物質中を自由に動きまわれる
「自由電子」を
多数もつのが金属で、
自由電子をもたないのが絶縁体です。

金属にどれくらいの電圧をかければ、
どれくらいの電流が流れるかなどは、
古典論で計算できます。

しかし、
ある物質がなぜ自由電子をもち、
別の物質がなぜ自由電子をもたないかは、
量子論を使わないと
説明がつきません。

具体的には、
電子を「固体全体に広がる波」と考えて、
金属の性質を
理論的に
解き明かしていくのです。

【マクロな物質である金属も、
 その性質は
 量子論で解明されたのです。】



・私たちが知覚できる世界は非常に特殊

【学生】
量子論は感覚的に理解することが
むずかしいですね。

たとえば、
「二つの電子は複数の場所に
 同時に存在できる」
という話は
なかなか納得できません。


【博士】
量子論で扱うミクロな世界の現象は
身近にはないので、
量子論の考え方に
慣れるのはむずかしいようですね。

量子論を理解するには、
「人間が知覚できる世界は
 常に特殊で限られている」
という事実を忘れてはなりません。

私たちは現代の
常識にしたがって
生活していますが、
平安時代の常識は
現代とはちがうはずでしょう?

それと似たようなことです。

私たちが経験しているのは
自然界のごく限られたサイズの
ごく限られた現象だけです。

その限られた経験にもとづいた常識が、
ミクロな世界にも通用できると
考えるのは早計ではないでしょうか。


【学生】
確かにそうかもしれませんね。


【博士】
量子論で考えないと
説明できない現象を
知ることによって、
量子論について
少しずつ感覚的に
理解できるようになると思います。

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日常の世界が特異な状態で、
量子サイズの世界が
正常な自然現象ってことですね。

なかなか切り替えることは
難しいです。