「傷と痛み」の関係について、
面白い記事がありましたので、
抜粋してちょっと紹介します。



●傷のないところにふれても痛い原因は?

皮膚を切ってしまうと、
もちろん傷口も痛いが、
傷口の周辺がつねにヒリヒリして、
さわるだけで痛いという感覚があるでしょう。

このような状態を「痛覚過敏」とよびます。

なぜ、
直接傷ついていない場所が
ヒリヒリと痛むのでしょうか。


痛覚過敏の原因は、
傷口の部位で生じるものや、
脳や脊髄で痛みの信号が
異常に伝達されてしまうものなどがあります。


傷口部分でおきる痛覚過敏は、
傷口からもれでたプロスタグランジンなどが
傷のまわりにまで広がることで、
痛覚神経の受容体が発痛物質を
受け取りやすくなることが原因です。

この状態では、さわるような軽い刺激でも
痛覚神経は反応してしまいます。


けがをしたときに患部を冷やすと
痛みが取れるのは、
傷口を冷やすことで痛覚神経の感度を下げ、
痛みの信号を弱らせることができるためです。


一方、
脳や脊髄でおきる痛覚過敏の
メカニズムは次のとおりです。

 Aβ線維は触覚を、
 C線維は痛覚をそれぞれ伝えます。

 神経自体を損傷するような傷を負い、
 C線維を失った場合、
 失われたC線維を補うように
 Aβ線維がC線維の接続部分に
 のびることがあります。

 こうなると、
 さわられた刺激は脊髄で痛覚に変換され、
 痛みとして脳に伝わってしまいます。

 つまり、
 「さわるだけで痛い」という状態になります。


図のように、
痛覚はAδ線維やC線維によって伝えられるが、
触覚は「Aβ線維」によって伝えられます。


何らかのけがにより脊髄でC線維が失われたとき、
脊髄の中でAβ線維がのび、
本来はC線維と接続していた経路に
乗りかえてしまうことがあります。


こうなると、
さわった刺激が脊髄で痛覚の信号にかわり、
脳がそれを痛みとして感じてしまいます。

これが、
脳や脊髄でおきる痛覚過敏の
しくみの一つです。


●病気が治っても長引く痛みー慢性痛?

これまでみてきたような痛みは、
組織が傷ついたと同時に感じ、
傷が治ると消えるため「急性痛」とよばれます。

しかし、
これらのしくみでは説明できない痛みがあります。

それが「慢性痛」です。


慢性痛とは、
慢性頭痛や慢性腰痛などのように、
痛みの原因である病気が治っても
痛みがつづく現象です。


なお、
がんや関節リウマチによる痛みは、
痛みがつづく点では慢性痛と似ていますが、
つねに患部で炎症をおこしつづけているため、
持続性の急性痛とよばれます。


なぜ慢性痛では傷がないのに、
痛みが残るのでしょうか。

そしてこの感覚は気のせいではなく、
ほんとうに「痛み」といえるのでしょうか?


傷があってもなくても、
急性痛で生じているのと同じように
脳が活動しているのであれば、
それらの痛みに区別をつけることはできません。

慢性痛は“亡霊”ではなく、
脳の中で“実体”があります。

慢性痛の原因は非常に複雑で、
いまだ不明な点が多いです。


さらに、
長引く痛みに苦しむ患者を取り巻く環境や
精神的なストレスにより、
さらに痛みが悪化するため、
治療は大変むずかしいです。


痛みが長期化する原因の一つに、
「快感を感じる脳の場所のはたらきが
低下している」というものがあります。

人は快感を感じることで、
生き生きとした生活を送ることができます。


しかし、
慢性痛に苦しむ患者は
この快感を感じる脳の場所のはたらきが低下し、
不快な痛みをつねに感じていると考えられます。

快感を感じる脳の場所のはたらきを
回復させることができれば、
痛みは消えなくとも、
通常の生活を取りもどすことが
できる可能性があるといいます。


●アスピリンはなぜきく?

薬局に行くと、
数えきれないほどの
「痛み止め(鎮痛薬)」が並んでいます。

紀元前の昔から、
少しでも痛みを弱めたい、
という強い思いにより研究が
つづけられてきたおかげです。


その中でも、
世界中で最も多く使われている痛み止めが、
かぜ薬や頭痛薬に入っている
「アスピリン」や「イブプロフェン」です。


これらの薬は、
どのようなしくみで痛みを
やわらげているのでしょうか。


前に説明したように、
プロスタグランジンは炎症や
痛覚過敏をひきおこします。

アスピリンやイププロフエンは、
このプロスタグランジンの合成をとめ、
傷口にあるプロスタグランジンの
量を減らすことで、
痛みが脳に伝わる信号を弱めます。

これにより鎮痛・抗炎症作用を示します。


頭痛や筋肉痛といった、
私たちがふだん感じるほとんどの痛みには、
プロスタグランジンによる炎症が
かかわっています。

アスピリンがさまざまな痛みを
止めることができるのは、
これが理由なのです。


しかし、
プロスタグランジンがかかわらない
非炎症性の腹痛や腰痛もあります。

これらの痛みにはもちんアスピリンはききません。

また、
発痛物質を放出する患部がない
慢性痛にも効果はありません。

今のところ、どんな痛みでも止める
“万能薬”はないのです。


 ⑤アスピリンは、プロスタグランジンの合成に
 必要なシクロオキシゲナーゼのはたらきを
 とめることにより、鎮痛の効果を示す。


 アスピリンとは・・・

 アスピリン(アセチルサリチル酸)は、
 世界ではじめて人工合成された医薬品です。

 痛み・炎症の原因となる
 「プロスタグランジン」の
 合成を阻害することで、
 アスピリンは鎮痛・抗炎症作用を示します。

 アスピリンはもともと、
 ヤナギに含まれる「サリチル酸」を
 原料につくられました。

 紀元前400年ごろ、
 古代ギリシアのヒポクラテスが
 痛み止めとしてヤナギを使用したという
 記録が残っているほど、
 ヤナギの鎮痛効果は昔から知られていました。
 2000年以上の時を経て、
 ヤナギは、
 アスピリンという世界で最も使われる薬に
 生まれかわったのです。


 アスピリンの副作用

 プロスタグランジンは
 胃粘膜保護のはたらきももちます。

 アスピリンを飲むと、
 ブロスタグランジンの量が減り、
 胃粘膜保護作用も失われてしまいます。

 アスピリン服用により胃が荒れるのは、
 このためです。


●痛みにまつわる疑問に答えます

Q.痛みはがまんすべき?
A,痛みには、身体にせまる危険を知らせる
 信号としての重要な役割があります。
 しかし、それを感じとり適切に対処したあとは、
 がまんする必要はまったくありません。
 むしろ痛みを放置しておくと、
 治療のむずかしい慢性痛に進行する
 危険性があります。
 一刻も早く、
 痛みを取り除く処置をとるべきです。

Q.マッサージや温泉は痛みにきく?
A.マッサージや温泉は、血行を改善し、
 筋肉のこりをほぐすことで
 痛みをとることができるとされます。
 しかし、
 これらの方法はあくまで
 対症療法にすぎないため、
 痛みが長くつづく場合は
 医師の相談を受けるほうがよいです。

Q.痛いときは冷やすべき?温めるべき?
A.急性痛では、
 冷やすと傷口の痛覚神経の活性をおさえる
 ことができるため、痛みがひきます。
 逆に慢性痛では、患部を温め、
 体内循環をよくすることで、
 患部から発痛物質を除去することが
 できるといわれています。

Q.「病は気から」というが、
 痛みと“こころ”の関係は?
A.痛みのとらえ方で、
 痛みの感じ方は大きくかわります。
 周囲の社会的・心理的ストレスによって、
 簡単に痛みが増強したり長引いたりします。
 また逆に、好きなこと、楽しいことを
 積極的に行うことで、
 痛みの治りが早まります。

Q.痛み止めを飲みつづけるときかなくなる?
A.用法用量を守って正しく飲んでいれば、
 きかなくなることはほとんどありません。
 痛み止めを飲んでもきかない場合は、
 痛みの種類に痛み止めが
 あっていない可能性があります。
 医師や薬剤師に相談してみましょう。

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我慢は禁物ってことですね😅
鎮痛薬のアスピリンの効能って、
炎症をやわらげるだけで、
腹痛や腰痛、心の痛みにはきかないんですね。
その痛みの緩和には温泉で湯治ですかね😄