古い技術雑誌を引っ張り出しています。

「本能と学習」について、脳科学から考察した
面白い記事がありましたので、ちょっと紹介。


●高等動物ほどドーパミンが多い?

ドーパミンについてひとつの仮説なのですが、
動物が高等になればなるほど
ドーパミンが広く分布しているのではないかと
いわれています。

カテコールアミン系の物質で
進化学的にいちばん古いのがアドレナリンです。

アドレナリンからだんだん
物質が単純になるにつれて
ノルアドレナリンとドーパミンになります。

進化的にみても、
おそらくこの順番で
新しくなっていくと考えられています。


いちばん古いと考えられているアドレナリンは
海洋生物のホヤから発見されたもので、
脊椎動物以前の
原索動物の段階から存在しています。

進化するとノルアドレナリンが多くなって、
それからドーパミンが現われてくると
考えられています。

もしかしたら、ホヤは恐怖ばかりを感じて、
快感はあまり感じていないのかもしれません。


それはさておき、
脊椎動物がだんだん進化して
人間になったことを考えると、
やはりいちばん人間らしいのが
ドーパミンであるといえるかもしれません。

このアドレナリンの例のように、
物質がしだいに単純になってくるほど
進化しているのだ、
という考えを「シャイツの仮説」といいます。


最初は複雑な合成酵素ができますが、
しだいに酸素が脱落していって
単純なものになるという仮説です。

合成の段階ではこの逆で、
ドーパミンから
ノルアドレナリンがつくられて、
ノルアドレナリンから
アドレナリンがつくられます。

進化学的にはいちばん複雑なものが最初にできて、
それからだんだん途中の段階のものを利用
するようになると考えるわけです。

その仮説が正しいとすれば、
ドーパミンがいちばん進化的には進んでいる、
人間らしいホルモンであるということになります。


ホヤがアドレナリンの状態の生き物だとしたら、
その次の段階、
つまりアドレナリンと怒りのホルモンである
ノルアドレナリンの状態の生き物は、
下等の脊椎動物あたりということになるでしょう。

彼らは、
恐怖と怒りの感情しかないことになりますから、
逃げるか攻撃するかという暮らし
ではないでしょうか。

とても楽しく生きているようには見えません。

もっとも、見かけだけの問題で、
彼らはけっこう楽しいのかもしれませんが。


それにくらべて哺乳動物などの高等動物は
ヒトに限らずひじょうによく遊びます。

とくに哺乳動物の子供というのはよく遊ぶのです。

子ネコや子イヌがじゃれているのを見ていると、
いかにも楽しそうに見えます。

これはドーパミンが多く分泌されはじめた
ということなのかもしれません。

じゃれているから楽しそうに見えるのではなく、
楽しいからじゃれているのです。


哺乳動物の中でも人間は
大人になっても遊びますが、
高等霊長類のサルなどでも、
子供が遊んでいると親ザルも
いっしょになって遊ぶことがあります。

これはだいぶ人間に近いといえるでしょう。


遊びからあらゆる芸術なり文化なりが
出てきたことを考えると、
ドーパミンの果たした役割は
大きなものがあるといえるでしょう。


人間の脳では、
ドーパミン作動系のA10という神経繊維が
脳幹から前頭葉にひろがっていますが、
脳幹でとくに関係深いのが
視床下部(ヒポタラムス)です。

この視床下部には、
かなり以前から、
生きることに関係のあるさまざまな中枢が
存在していることがわかっています。

視床下部の前のほうは、
性中枢で性行動に関係があります。

中部には食中枢、
後部に体温調節中枢があります。


系統発生的にみれば、
視床下部というのは、
いちばん古い原始的な部分です。

それが進化的にはいちばん新しい前頭葉に
つながっているということが、
A10という神経繊維のおもしろさです。

下等な動物では、
視床下部が中心になって
行動を決定しています。
つまり本能的な行動が多いわけです。


●高等動物の学習は本能にまさる

ところが、
高等動物では本能による行動は
ほとんどなくなっています。

霊長類はほとんど学習によって行動をします。



本能だけでは行動できないのです。

人間の場合を考えてみても、
本能だけで行動できる部分なんて
ほとんどないわけです。


こんなふうになっていった過程は、
脳神経がそのように
変化していったからそうなったのか、
それとも神経が必要にかられて
変化していったのか、
というむずかしい問題があります。

動物が進化していって
本能だけでは環境の変化に
応じきれなかったのかもしれない。


また、
環境が変化すると
本能だけにたよっていると生存しつづけることが
むずかしくなります。

おそらく、
変化する環境にまで
動物が進出していったということでしょう。

そして変化する環境に適応しようとした。

そのために本能行動だけでは不可能になって
学習を必要とするようになったわけです。

そういう方向に進化してきて、
より広い変化に富んだ環境に
適応可能な進化をしたのが
哺乳動物といえるでしょう。


哺乳動物全体が
ひじょうに学習的といっていい存在で、
下等動物とくらべると
動物本能の占める割合が低くなっています。

この割合は、
遺伝情報の量と脳・神経の
情報量の比率によって決まると考えられます。

脳の大きさは
魚類、両生類、は虫類、鳥類、哺乳類の順に
大きくなっています。

この順に進化して脳の情報量が
大きくなったと考えられます。

+++++++++++++++++++++++
物質がしだいに単純になってくるほど
進化しているという「シャイツの仮説」が
現実的かどうかは??って思いました。

快感ホルモンのドーパミンは、
学習で得られやすいみたいです。

ホヤのようにアドレナリンだけで暮す一生なんて
イヤですよね~😄