古い技術雑誌を引っ張り出しています。

不安とうつについて
興味深い記事がありましたので、ちょっと紹介。


次世代の抗うつ薬は

現在の世代の抗うつ薬は、
セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの
濃度を増加させるものだ。

そして、
これらの薬の効き目を
さらに高めようとする研究が
盛んに行われている。



一方、
ストレスとうつの相互作用に
深くかかわる部分をターゲットとする
画期的な治療の研究もある。


当然、グルココルチコイドの作用を
重視した研究も行われている。

たとえば、
別の目的で承認された安全な医薬品の中には、
副腎でのグルココルチコイドの合成を
一時的に阻害したり、
グルココルチコイドが脳の重要な受容体に
結合するのを阻害したりするものが多くある。



面白いことに、
グルココルチコイドの受容体を
ブロックする重要な化合物であるRU486は、
子宮のプロゲステロン受容体も
ブロックする
もので、
中絶薬として有名だ。


マギル大学のマーフィー(Beverly
Murphy),
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の
ウォルコウィッツ(Owen Wolkowitz),
スタンフォード大学のシャッツバーグ
(Alan Schatzberg)は、
重いうつ病患者の中でも
グルココルチコイド濃度が
非常に高いグループでは、
これら抗グルココルチコイドが
抗うつ薬として作用することを示した。

このグループのうつ病患者は、
従来の抗うつ薬が効かない傾向があるので、
この発見は有望だ。


もう1つの方法はCRHをターゲットにしている。

抑うつは不安と同じように
扁桃核と交感神経系の
過剰な反応をともなうことが多いため、
扁桃核から交感神経系への
連絡を担うCRHが重要となる。

さらに、CRHをサルの脳に投与すると、
抑うつに似た症状が起きる。

これらの知識をもとに、
CRH受容体のブロッカーに
抗うつ作用があるかどうかが調べられてきた。

その結果、
有効性が期待できそうだとわかったので、
この種の薬は近いうちに登場するだろう。


受容体をブロックする別の方法としては、

ニューロキニン-1(NK-1)受容体に結合する
神経伝達物質(P物質と呼ばれる)の活性を
抑制するものがある。

1990年代初めには、
NK-1と結合する薬が
ストレス反応のさまざまな側面を
阻害することがわかっていた。

動物実験と1回の臨床試験の結果から、
P物質は抗うつ薬としての効果があることが
示されている。


海馬に重点を置いた方法もある。

BDNFをラットの脳に注射すると、
グルココルチコイドがニューロン新生を
阻害する作用を打ち消せる。

私の研究室では、
遺伝子治療によってラットの海馬を
ストレスの影響から守る研究、
および
扁桃核で不安を抑えるための研究を行っている。


これらの遺伝子が
グルココルチコイドによって活性化されると、
グルココルチコイドを分解する酵素ができる。

その結果、
これらのホルモンの悪影響を防げるのだ。

現在私たちは、
この治療法の有効性を動物実験で調べている。

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20年前の日経サイエンスの記事ですが、
今読み返してもなるほどと思えてしまいます。

うつ状態が進むプロセスに
歯止めを掛けられる様々な方法が研究されていて
心強いですね。

今ある薬にも意図しない症状に効く事があって
身体の仕組みって不思議です🙄🤔