古い技術雑誌を引っ張り出しています。

不安とうつについて
興味深い記事がありましたので、ちょっと紹介。


ストレスが引き起こす不安

不安障害の場合、
感情をつかさどる領域である大脳辺縁系に
大混乱が起きるらしい。



最初に影響を受けるのは扁桃核と呼ばれる部分だ。

扁桃核は恐怖刺激の知覚や反応にかかわっている。

(扁桃核は攻撃の中枢でもあり、
 恐怖が原因で攻撃が起きることがある。
 これによって社会政治的な行動の
 多くが説明できる)

扁桃核は皮質のニューロンからの入力を受け取り、
危険を感知する役割を果たしている。

皮質は脳のいちばん外側の層で、
高度な情報処理の多くを行っている。

扁桃核への入力の一部は
人間の顔を認識する特異的な領域など、
皮質の知覚情報を処理する部位から来ている。

また、抽象的連想とかかわりのある
前頭葉からの入力もある。

銃や航空機ハイジャック、
炭疽菌で汚染された封筒などが、
連想によって同じカテゴリーに
分類されることもある。


扁桃核は火や恐ろしい顔を見たときだけでなく、
完全に抽象的な思考によっても同じように
活性化することがある。


扁桃核は皮質を経由しない感覚情報も
受け取っている。

その結果、何が引き金となったのか
意識的に気づく前に、
潜在意識の中でも比較的
思い出しやすい前意識のはたらきで
扁桃核が活性化することがある。


襲われて傷つけられた経験のある女性が、
楽しく会話をしているときに突然不安を感じ、
心臓の鼓動が速くなっているのに気づいたとする。

このとき、うしろで話している男性の声が、
自分を襲った男の声と似ているのだと
理解するのはそれより後になってからだ。


扁桃核はコルチコトロピン
(副腎皮質を刺激するホルモン)
放出ホルモン(CRH)
という神経伝達物質を大量に使い、
脳のさまざまな部位に次々と信号を送る。

扁桃核の神経細胞の中には、
進化的に古い中脳や脳幹に
つながっているものがある。

これらの部位は自律神経系を
コントロールしている。


自律神経系は、
心臓のようなふだん意識せずに
コントロールしている部分をつなぐ
神経ネットワークだ。

自律神経系の半分は、
闘争一逃走反応を仲介する交感神経系だ。

危険によって扁桃核が活性化すると、
交感神経系はすぐに副腎に
アドレナリンを分泌するよう命令する。

すると心拍数が上昇、
呼吸が浅くなり、感覚が鋭くなる。

また、扁桃核は情報を前頭葉へ送り返す。

前頭葉は前に述べた抽象的連想の処理のほかに、
入力情報を判断したり、
それらの評価に基づいて
行動を開始するのにもかかわっている。

したがって人間が下す決定が容易に
感情の影響を受けるのも当然だ。


さらに扁桃核は同様に感覚野にもつながっている。

このことから、
なぜある感情状態では
感覚がそれほど鮮明なのか、
あるいはなぜトラウマを持つ人に
感覚記憶がよみがえるのか(フラッシュバック)、
ある程度説明できるかもしれない。


こうした強力な記憶の再現を
支配しているかどうかはともかく、
扁桃核がある種の記憶と
関係しているのは明らかだ。


記憶は、
宣言的(顕在)記憶と
潜在記憶の
2つに大別できる。

宣言的記憶は
事実や出来事、
連想などの記憶をつかさどる。

同様に潜在記憶にもいくつかの役割がある。

自転車の乗り方やピアノの弾き方のような
手続記憶もその1つだ。


また恐怖とも関係がある。
意識しないうちに2つの声が似ていることに
反応した女性のことを思い出してほしい。

この場合は無意識の潜在記憶によって、
扁桃核と交感神経系が活性化したのだ。


恐怖の記憶がどのように形成されるのか、
ストレスがくり返された結果、
極端な一般化(思いこみ)がどうやって
起きるのかが明らかになってきた。


これらの知識は宣言的記憶の研究に基いている。

宣言的記憶は、
脳の海馬という部位に存在するらしい。


神経細胞にくり返し情報が伝達されると
記憶が形成される。

情報の伝達には神経伝達物質の放出が必要だ。

神経伝達物質はニューロンとニューロンの間、
すなわちシナプス間隙を移動する化学伝達物質だ。

ニューロンが何度も刺激されると
シナプス間の伝達効率が高まり、
長期増強(LTP)と呼ばれる状態になる。

+++++++++++++++++++++++
20年前の日経サイエンスの記事ですが、
今読み返してもなるほどと思えてしまいます。

記憶って、良い面と悪い面、両方ありますね。
忘れっぽい私は、悪い記憶からの刺激が起き難くて
助かっていたのかも😄

なんで忘れちゃったの?!って
しばしば怒られたけど🤣