古い技術雑誌を引っ張り出しています。

不安とうつについて
興味深い記事がありましたので、ちょっと紹介。
長いので分けています。


心のバランスが崩れるとき

身体の恒常性(ホメオスタシス)が
保たれている状態では、
体温や血糖値などのさまざまな指標は
“理想”に最も近くなる。

恒常性を乱す環境的な要因をストレッサーといい、
最終的にバランスを回復するまでの
一連の生理的適応のことをストレス反応という。


ストレス反応には、
副腎から分泌される2種類のホルモンが
主にかかわっている。

アドレナリンとグルココルチコイドだ。

ヒトのストレスにかかわるグルココルチコイドは、
コルチゾール、あるいは
ハイドロコルチゾンと呼ばれる。


多くの哺乳類で、ストレスによって
こうしたホルモンの変化が生じる。

食動物から逃げるといった
身体的な緊急事態がきっかけとなることも多い。


アドレナリンとグルココルチコイドは
筋肉のためにエネルギーを動員し、
心拍数を高めて酸素がもっと速く
移動できるようにし、
成長のような不要不急の活動を止める。


ホルモンが作用する速度はさまざまだ。

闘争 一 逃走反応では、
いわば戦う武器を配る役割を果たすのが
アドレナリンだ。

【注】闘争 一 逃走反応
 生物が危険にさらされ、
 戦うか逃げるかという状況下で起きる
 交感神経系の活動亢進やアドレナリンの
 分泌増加などの反応をいう。

一方グルココルチコイドの役割は、
戦争を続けるのに必要な
新しい航空母艦の青写真を描くことだ。

【注】グルココルチコイド
 糖新生, 抗炎症、抗ストレスなどの
 作用がある。


だが霊長類はこれだけではすまない。

具体的な出来事が起きなくても、
予測しただけでストレス反応が
起きることがあるからだ。

「暗くて人通りのない道だから、
いつでも走れるようにしておこう」
というように的確な予想の場合、
この予期的なストレス反応はきわめて有効だ。

しかし実際はそうではないのに、
危険なことが起こりそうだと
四六時中思いこんでいる場合は、
神経症や不安障害や偏執症の領域に入っている。


1950~60年代に、
ウォルター・リ―ド陸軍研究所の
メーソン(John Mason) や
スタンフォード大学のレバイン(Seymour Levine),
ロックフェラー大学のワイス(Jay Welss)ら
先駆者たちは、精神的ストレスに見られる
重要な特徴を明らかにした。


欲求不満のはけ口がない、
自分でコンロールできているという感覚が
持てない、
社会的支援がない、
何かいいこが起きると思えない、

といった場合

ストレスが深刻になることを発見したのだ。

たとえばラットに電気ショックを何度か加えても、
その間に木の棒をかじることができれば、
欲求不満のはけ口があるので、
潰瘍になることはあまりない。

ヒヒはしょっちゅう仲間と戦っていても、
群れの中での順位が結果的に
上がっている場合には、
ストレスホルモンの分泌が少ない。

つまり、生活の向上を認識しているのだ。


ヒトは非常に大きな騒音にさらされても、
いつでもボタンを押してボリュームを
下げられるとわかっていれば、
血圧はあまり上昇しない。

コントロールできるという感覚があるからだ。

だがそのような緩衝手段がなく、
トレスが慢性的に続くと仮定してみよう。

何度もストレスを受けると、
そのたびに瞬時に高い警戒状態になる。

この状態がある時点で一般化すると、
ストレスがかかっていない場合でさえ、
常に警戒し続けるようになる。

こうなると不安障害の領域だ。

あるいは慢性的なストレスによって無力感を生じ、
ストレスを克服できないこともある。


この場合も反応が過度に一般化し、
本当は克服できる状況でさえ、
どうしたらよいのかわからないと
思うようになることがある。

これはうつ状態だ。

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20年前の日経サイエンスの記事ですが、
今読み返してもなるほどと思えてしまいます。

継続的なストレスって、耐えると危険なので
はけ口を持って、耐えないでいたいですね😅