光が認識されてから
その正しい性質が
一般に広く理解されるまで
およそ1000年も経ていたようです。
目に見えにくい仕組みを
理解して受け入れるのは厄介なことです。
光の正体について
学生と博士が対話しながら
5番目の疑問として答えてくれていました。
+++++++++++++++++++++++
ニュートンは、
白色光
(太陽光)
をプリズム
(ガラスでできた三角柱)
に通すと、
無数の
色からなる
光の帯が
生じることを
発見した
(光の分散)。
これは
白色光が、
無数の
色の
光の
重ね合わせで
できていることを
示している。
この
光の帯は、
虹と
同じものだ。
俗に
「7色の虹」
というが、
実際には7色
とはいえず、
色と色の間に
明確な
境界はない。
ヤングは、
光を
二つのスリット
(すき間)
に通すと、
スリットを
通過し
かんしょうた
二つの
光の波が
「干渉」をおこし、
スクリーンに
縞模様
(干渉縞)
があらわれる
ことを示した。
干渉とは、
波の
山と山が重なって強め合ったり、
山と谷が重なって弱め合ったり
する現象である。
スクリーンで
明るい部分は、
光が
強め合った部分、
暗い部分は
弱め合った部分である。
-----------------------
■学生
光の
正体は
どのように
解明されて
きたのですか?
●博士
光については、
古代ギリシアの
哲学者・
科学者の間でも、
すでに
議論
されていました。
たとえば、
幾何学の
祖として
有名な
ユークリッド
(前300年ごろに活躍)は、
光が直進すること、
光が反射するときに
入射角と
反射角が
等しくなる
ことなどに、
気づいて
いたそうです。
■学生
光の
屈折に
ついては
どうですか?
正しい形での
「屈折の法則
(入射角と
屈折角の
関係式)」は
その後も
長い間、
解明
されませんでした。
光の科学は、
望遠鏡や
顕微鏡が発明された
17世紀ごろから
急速に
発展します。
屈折の
法則も
1615年に
ヴィレブロルト・スネル
(1591~1626)
によって
はじめて
発見されました。
●博士
光が
水などに
入射した
際に、
境界面で
屈折することは、
古代ギリシアの
時代から
知られていました。
■学生
屈折の
理解には、
長い
年月が
かかったのですね。
●博士
光学の
発展に
最も
大きく
貢献したのは、
アイザック・ニュートン
(1642~1727)
でしょう。
たとえば
ニュートンは、
プリズムを
使って、
「白色光は
無数の
色の
光が
重なりあって
できている」
ということを
明らかにしました
(5-a)。
しかし
ニュートンは
当時、
クリスチャン・ホイヘンス
(1629~1695)や
ロバート・フック
(1635~1703)らが
すでに
唱えていた
「光の波動説」
には
賛同
しませんでした。
ニュートンは、
「光は粒子」
と考えたようです。
■学生
なぜでしょうか?
●博士
たとえば、
波である
音波の場合、
音源と
観測者の
間に
物体があっても、
音は
聞こえます。
音波には、
広がって
進む
性質があり、
物体の
背後にまで
まわりこんで
いくからです。
これを波の
「回折」
といいます。
一方、
光は
物体の
背後に
くっきりとした
影を
つくります。
ニュートンは、
光が
波であれば、
物体の
影の
部分にまで
光が
まわりこむ
はずだと考え、
光の
波動説に
反対する
立場を
とったのです。
■学生
光は
回折を
おこさないのですか?
●博士
回折の
効果は、
波長が
物体の大きさと
同程度のときに
顕著に
あらわれ、
物体の大きさよりも
波長が
短いときは
あまり
目立たないのです。
可視光は、
波長が
400~800ナノメートル程度
(ナノは10億分の1)
と非常に
短いので、
回折の
効果は
非常に
小さく、
日常生活の
レベルでは、
光の回折に
気づかないのです。
■学生
ニュートンが
あやまった結論を
くだしたのも、
無理はないですね。
●博士
当時の
ニュートンは、
物体の
運動法則を
説明する
「ニュートン力学」
を完成させ、
科学界の
一大権威
となっていました。
そのため、
ホイヘンスらの
光の波動説は
劣勢で、
光の粒子説が
圧倒的に
優勢となりました。
しかし
1807年、
トーマス・ヤング
(1773~1829)
が実験によって、
光が
干渉することを
示しました
(5-b)。
光の干渉は、
粒子説で
説明することは
できません。
ヤングによって、
光の粒子説は
否定され、
光の波動説が
復活
したのです。
1867年には
電磁気学の
祖である
ジェームズ・マクスウェル
(1831-1879)が、
「光は電磁波である」
ということを
明らかにし、
光の波動説は
ゆるぎないもの
になりました。
+++++++++++++++++++++++
あのニュートンでさえ
「光の波動説粒子説」に
固執していたのですから
ものごとの正体を
偏見や思い込み、
驕りなく見極めるのは
至難のことなんですね。