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SM小説

酒を飲みながら書く小説

 ねえ教えてよ。

 そうやってまたはぐらかすんだ。

 もういい。


 全身を駆け巡る血に、赤黒い温かみと鉄分の冷たさを同時に感じた。体内という空間は、自分からとても近いのに決して見る事を許されない秘密の領域なんだと改めて実感する。


 でも、少しだけ見えてることがある。見えないふりをしたほうがいいのか、見えてることを教えたほうがいいのか、悩みだしてからもう半年だ。世間は秋になって紅葉の匂いを醸し出しているのに、私は至って平坦だ。


 何?

 そんなこと聞いてない。

 何であんたが怒ってるわけ?

 ん、じゃないよ。逆ギレしないでよ。誤りなさいよ。

 誤りなさい。

 ごめんなさいでしょ?

 何で今度は口が尖がるのよ。


 あいつが押し付けた手の平から、私の体内に悪魔が入り込んできた。

 自分がどういう場面にもっていきたいのかわからなくなる。何が自分にとって喜ばしいことなのか、何が自分に嫌な空気なのかわからない。ずっとわからない。

 自分自身のこともわからずに人と付き合うことはやめよう。時間を掛けて自分を見つめなおそう。


「ねえ、教えて。この映画おもしろいの?」

「うん、今のところはおもしろくないね」

「疲れたから横になっていい?」

「いいよ」

「汗臭いよね、この辺」

『ジーパンは洗わない』


 あいつ本当に戻ってこない気だろうか。私はその場に立ち尽くして空を見ていた。空は曇って、つまらない色をしている。風はゆっくり、それでいて冷たく、頬にぶつかってきた。

 何もやることはない。

 用事もない。

 たぶん何時間でもこの場で待ってられるよ。


「私、仕事辞めようかなって思ってるんだ」

「……」

「人間関係に疲れたなって思うの、最近」

「違う仕事探すの?」

「しばらくゆっくりしたい」

「……そっか。それもいいかもね」

「かもって?」

「え?

「かもって何が?」

「ん?」

「私のことなんて他人事?」

「まさか、自分で決めたことを俺が口挟むのも……」

「何かそれ頼りない」

「何でだよ……」

「もっとこうしてとか、ああしてとか、私に言ってよ」

「……」

「何もないかあ」

「お前さ」


 カー、カー、カラスが鳴く。

 遠くからトラックの騒音が響いてる。

 空色は少しずつ明るみを帯びて、逆戻りはしないようだ。

 ねえ、さっきから、そこから見てるでしょ? わかってるよ。

 ねえってば。


「心配なんだな」

「はあ?」

「大丈夫だよ」

「だから何が?」

「一人で色々考えたり決めたりするのが不安なんでしょ?」

「それに気づけたらそう言うなよ」

「いてっ」


 朝になったね。半袖は寒いんじゃないの?

 明るくなってきたよ。そんな所に立ってたら不審に思われちゃうでしょ。

 ねえ。

 あの時、どうして止めてくれなかったの?

 うん、そっか。

 今日は雨だよ。傘なんて持ってきてないでしょ?

 始発まで後30分くらいかな。

 うん。


「暖かい」

「だろ?」

「でも硬くなってるよ」

「そういう風にできてるんだよ」

「プルプル震えてるし」

「お前だって硬くなってるよ」

「それは、そうできてるんだよ」

「なあ」

「ね」

「この映画おもしろくねえな」

「意味わからないし暗くなる」

「止める?」

「でもこの後何かありそうじゃない?」 

「無いでしょ」

「あれフニャフニャになってきたよ」


 少しだけ見えてるよ。