京都の魅力とは何か。京都を"日本を代表する観光都市"という側面から表現すると、「伝統」「文化」「歴史」など様々なキーワードが浮かぶが、一方でビジネス拠点としての魅力に溢れている。今、企業が京都に注目している点について、京都におけるビジネスの中核拠点でオフィスビルを運営する京都リサーチパーク株式会社営業推進部の寺戸氏は、「大学が多く優秀な人材の宝庫。そして、イノベーションを生み出す場所として海外からも注目されている。」と語る。現在、関東のIT系企業の誘致を積極的に行なっている同社に、京都リサーチパークの魅力やビジネス拠点としての京都の魅力を聞いた。
● ベランダから五山の送り火?、若い IT 企業が集まる最新オフィスビル
京都リサーチパークはガス工場跡地に全国初の民間運営リサーチパークとしてオープンした。モデルとなったのは、企業・大学・行政が連携してハイテクベンチャーを創出してきた米ペンシルベニア州フィラデルフィアのU.C.S.C だという。そして、この地区を運営しているのが、大阪ガスが100%出資している京都リサーチパーク株式会社(KRP)だ。JR 京都駅より一つ目の丹波口駅を降りて徒歩数分に位置し、地区内には大小様々なオフィス、研究開発用のラボ、国際会議からセミナーなど様々な会議室、レストランなどが整備され、ビジネスに必要な設備が全て揃っている。
寺戸氏は、「京町家の風情をもつ最新のオフィスビル・ KRP 9号館は、フラッグシップビルとして自社ビルのように誇りを持って入居できるオフィスビルだ」と語る。中には学生ベンチャーとしてここ KRP で起業した京都を代表するレンタルサーバー事業の株式会社フューチャー・スピリッツと、早くより東京から京都へ進出してきたサイバーエージェントグループの株式会社マイクロアドが京都研究所として入居しているそうだ。
この KRP 9号館には一般のオフィスには無い特典があるという。それが、東京でも滅多に無い、まるでマンションのリビングのような開放感のあるベランダ付のオフィスだ。特に昼夜問わず集中して開発するエンジニアにとって、時にはリラックスできる場である。そして、夏の京都といえば「五山の送り火」。高階層のオフィスからは全てを望め、この日は「左大文字」を正面に、「右大文字・船形・妙・法」が見える絶景ポイントとなり、特に東京や海外のお客さまをご招待して、もてなしの場としても活用できるのだ。
更には屋上に「畑」がある。入居企業の社長や社員達が一緒に土いじりや水撒きをして、育てた野菜を収穫しているのだという。菜園クラブなどクラブ活動をサポートしている営業開発部の梅田氏はこう述べている。「皆さんは企業や役職を超えてネットワークが広がっていくのが楽しいようだ。職場周辺に知り合いや仲間がいるというのは仕事を生き生きさせる大事な要素だと実感する」。
●町家にオフィス?、自然と人が集まり閃きが生まれる場所
KRP にはもう一つ、東京にも伝わる「町家」という面白い空間がある。市内中心部に「KRP町家スタジオ」というユニークな交流スペースを運営し、若手のエンジニアやクリエーターなどの交流・勉強会や採用活動の場などに活用されているという。例えば、「ロリポップ!」で知られる GMO グループの株式会社paperboy&co.はこの中にオフィスを持ち、学生を中心とした意欲的な京都の人材の発掘・採用活動の拠点にしている。
入社早々に特命を受けて paperboy&co の「おこしやす!プロジェクト」を担当している今岡佐知子さんは「人の輪の広がりが濃く、京都独特のものを感じる。また、この町家は多くの方が出入りし、わざわざ外に行かなくても人との繋がりが生まれている。ここにオフィスを構えて正解だったとつくづく思えるポイントだ」と話す。また、日本最大の図書館蔵書検索サイト「カーリル」を運営する NOTA.inc は、2007年にシリコンバレーで起業後、町家スタジオに移転。「開発にはこの環境はとても良い。落ち着いて仕事ができる上に、人との接点も豊富。完全個室のオフィスとは大きく違う」と代表取締役の洛西一周氏は語る。洛西氏と今岡氏、そして KRP も協力して、主に若手のIT系を中心とした交流会「町家BAR」を開催しているという。この交流会は、自社紹介、アイデアブラッシュ、行き詰まった時の相談など、とにかく自由にプレゼンすることができるのだそうだ。
●京都は BCP 対策に最適な場所
寺戸氏によると、KRPが注目される理由のひとつにデータセンター(DC)を挙げる。KRP のデータセンターは京都のITインフラの中枢を担う存在であり、昨年の震災以降はDCとオフィスの契約が増えたという。「自然災害が比較的少なく、新幹線の京都駅に近い利便性が評価された。」関電の変電所が隣接しているほか、大阪ガスの供給所があるこの地区には非常時には都市ガスによる非常用発電機によって電力をDCに供給する。立地・ガス発電・災害の少ない土地柄によりBCP対策として注目されているのだ。
●京都は"日本のシリコンバレー?"、ポテンシャルの高い人材も豊富
現在、入居企業はベンチャーや大手も含め約250社、4割近くがIT系、地区就業人口は約2600人。KRP が選ばれる理由とは何か。寺戸氏は「異業種コラボレーションが盛んで、新たなビジネスが創出できる点だ」と語る。そして、国際都市京都の優位性を挙げる。京都の経済は海外マーケットへの意識が高く、海外進出を視野に入れている企業にとっては適した風土。世界に挑戦するイノベーションを生み出そうとする企業や人材が集まる場所でもあるのだ。「京都を日本のシリコンバレーのようにしていきたい」と寺戸氏。もうひとつ、重要なのはポテンシャルの高い人材の宝庫であるという点だ。京都は、京都大学をはじめ、同志社大学、立命館大学など優秀な人材を輩出する学校が多く存在する文教都市である。前述した paperboy&co. のように、人材の発掘を目的として採用と開発拠点を KRP に置くケースが増えてきているという。
●東京の次は京都?、ハッカソンやスタートアップ
KRP はエンジニアの支援も積極的だという。例えば、Google 公認の京都 GTUG は関西のエンジニアが集まり勉強会やハッカソンを開催するというコミュニティだ。この京都 GTUG は東京 GTUG に次ぎ国内2番目の GTUG として KRP 内で発足。京都 GTUG の活躍により、Google Developer Day 2010などのサテライト会場が KRP で開催され、東日本大震災直後には Hack for Japan の第1回会合が KRP で開催されたそうだ。また、国内 SNS 最大手のミクシィが mixi ハッカソンをこの KRP で開催されているのも非常に興味深い。
また、京都に集まるエンジニアの中にはチャレンジ精神旺盛で起業志向の高い人が多く、そのアントレプレナー精神を後押ししているイベントが「Startup Weekend」と呼ばれるものだ。「Startup Weekend」とは、週末54時間で新しい会社、プロジェクトなどを立ち上げるという起業支援イベントで、シリコンバレーで誕生し世界200カ国で開催されている。優勝チームには賞もあり、海外では投資家との面談で資金調達に成功しているという。東京開催のみであったが、京都でも開催されるようになったという。
起業イベントを担当している成長企業支援部の澤村氏はこう述べている。「初めて出会う者同士が僅か54時間でプロトタイプまで完成させるのには驚いた。是非、ここ京都から世界へ挑むチャレンジャーを送り出したい。」
●KRP から世界へ、新たなイノベーションを!
お話を伺って感じたのは、KRP は京都の新たなビジネス拠点であり、大学や関西のエンジニア、様々な人や企業が KRP を中心に繋がっていることだ。寺戸氏は、「KRPは常に何かが新しさに満ちあふれた場所、常に新しいものが生み出せる環境を目指している。入居企業には、様々なサポート、そして様々なテーマで開催されるイベントや交流の場を活用してもらいたい。京都から新たなイノベーションを生み出し、グローバルに活躍できる企業に成長してもらいたい。」と締めくくった。
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