「多読」は
英語教育で新しくない学習法ですが、
バイリンガル育児を初めてから
意識しているからか
特に よく目にする気がします。
英語だと
Extensive Reading。
家庭で英語を取り入れている方の
ブログでもよく登場していますね
では、
たくさん読むことがいいのは分かるけれど、
なぜ多読がいいとされているのでしょうか?
多読研究で有名な、
ハワイ大学のRicard Day教授の考えを
ここで整理してみたいと思います。
Day氏は わたしの恩師でもあり、
大学院時代は Day氏から多くのことを学びましたが、
バイリンガル育児を実践する中で
改めて多読の多大なる効果を感じています
Day氏によると、
EFL(Englsih as a Foreign Language: 外国語としての英語教育)環境で重視されてきたのは
comprehension (理解)
と
accuracy(正確さ)
主に この二つ。
精読をし、文章に関する読解問題を解くスタイルです。
だけれど Day氏は、
読解力をつけるために必要なのは、
読みにおける
fluency(流暢さ)
だと言います。
ではfluent reading(流暢な読み)とは何かと言えば、
苦なく、
滑らかに、
ある程度の速さをもって読める。
ということ。
つまり、slow readers(読むのが遅い人)は、
正確に一語一語の意味を取ることができても
読む速度が遅いがために、
大意を取るのが
上手ではないということ。
例えば、下はORTからの一文。
"Come on, Dad. Can you skip too?"
ある程度の速度をもって読めれば
全体の意味はすぐ理解できます。
これを一語一語 ゆっくり読むと
下のようになります。
"Come
on
Dad.
Can
you
skip
too
?
途端に全体の意味が取りにくくなりませんか?
読むのが遅いと こういう現象が起こるそうです。
じゃあ、その流暢さを向上させるためには
どうしたらいいのか?
語数を多く読めばいいのでしょうか?
もちろん 量も大事ですが
それ以上に重要と言われるのが、
sight vocabulary。
過去のフォニックス関連記事でも
出てきましたが、
サイトワードのことですね
(過去の記事『サイトワードについて』)。
頻繁に目にし、
ぱっと見で理解し、
正確に意味を捉えることができる単語のことです。
この sight vocabularyを
繰り返し、繰り返し目にすることで、
それらを自動的に読めるようになり、
その結果、
全体的に読むスピードも上がるということです。
それを可能にするのが 多読 です。
つまり、語数が多いことよりも、
繰り返し、sight vocabularyを目にすることで
読みが自動化することが大事だと言えます。
その多読に大切なルールは、
i -1
だと言います。
「i」は comprehensible input(学習者にとって理解可能なインプット)のこと。
つまり、学習者が理解できるレベルより
少しだけ下のレベルのもの
を選ぶといいということ。
言語習得におけるインプット仮説は、
i + 1
でした。学習者が理解できるレベルより
少しだけ難しいものを選ぶ、ということですね。
でも多読においては
少し易しいくらいがちょうどいい、ということです。
個人的には、
本人のモチベーションが高ければ
i + 1
のレベルでも良いと思いますが
いずれにしても難しすぎない
と言うのがキーポイントのようです。
それにより ある程度の速さをもって読め、
sight vocabularyが増え、
新しい語彙も増える。
さらに重要なのが、
既に知っている単語の collocation(単語と単語の正しい組合せ)も身に付くということです。
例えば、「wish」という単語は、
一緒に使える動詞が限られています。
- make a wish
- fulfil a wish
「do a wish」とは言いません。
こういった正しい表現を本などで
繰り返し目にすることで
「wish」の collocationを覚えるという訳です。
ここまでの話をまとめると
このようになります。
優れた読み手になるためには
ある程度の流暢さが必要である
(fluency)
流暢さを身につけるためには
多読が有効である
(extensive reading)
少し易しめの本を数多く読むことで
語彙が増える
(sight vocabulary + new vocabulary + collocations)
読みが流暢になり、読解力が上がる
(fluency + reading comprehension)
聴く、話す、書く力も
結果的に向上する
そして Day氏が多読において
最も重要としていることが、
Enjoy!
ということ。楽しくなければ続かないし、
習得にも繋がらないということです
バイリンガル育児においては、
子どもが好きそうな本、
読んでくれそうな本を
いかに用意できるか?
子どもの「読みたい!」という気持ちを
どう育てて、環境を整えられるか?
そんな工夫が必要になってくると思います。
下の動画は、Day氏による多読に関するメッセージです。
とても分かり易いので ぜひ 見てみてください