今日はフォニックスのお話。
『フォニックスを始める前に』でも書きましたが、
フォニックスには大きく分けて2種類あります。
アナリティック・フォニックス
シンセティック・フォニックス
はアメリカでも広く使われてきた手法で、
アルファベットには
「名前(エー・ビー・シー)」と
「音(ア・ブ・ク)」がある
・・・というように習い、A, B, Cの順番に音を入れていきます。
下のフォニックス・ソングもまさにアナリティック・フォニックスですね
アナリティック・フォニックスの難点は、
A、B、Cの順番に入れていくので
Zまでの音を入れるのに
とにかく時間がかかるということ。
そして語彙力がある程度ないと、
絵や文脈から推測して読むということができない点。
ただ良い点としては、
フォニックス・ルールが定着すれば、
推測して どんどん読み進める力がつく点でしょうか。
そしてここ最近は人気なのは、
イギリスで広く使われていると言われる
の手法を用いたJolly Phonics。
シンセティック・フォニックスは、
ABCの順には教えず、
アルファベットの音からいきなり教えます。
そしてよく使う音から、
7つのグループに分けて
教えていきます(グループ1: s a t i p n)。
初めから一つ一つの音に注意を向けるので、
習った音を組み合わせて、
音と音を繋げる練習をし(ブレンディング)、
早い段階から読めるようになります。
たとえば、グループ1(s a t i p n)の
3文字(s a t)を習っただけで、
”at”や “sat(座った)”という単語を読めるように。
アナリティック・フォニックスに比べて
格段に速いペースで読めるようになります。
最近は、親しみやすいメロディからか
Jolly Phonicsを推奨するサイトも見かけます。
そういったサイトで目にするのは、
「英語を母語としない子どもでも
無理なく読めるようになる」
という言葉。
でも英語を母語としない子に対して、
Jolly Phonicsを使う場合、日本語を介して
理解を促すなど工夫が必要だと思います。
理由としては、
① 歌の内容が難しい
② 簡単な単語はすぐに読めるようになっても、文全体の意味を理解できない
まず①ですが、"s"の次に出てくる"a"の歌詞は下のようになっています。
/a/-/a/! Ants on my arm.
/a/-/a/! Ants on my arm.
/a/-/a/! Ants on my arm.
They're causing me alarm.
(びっくりしちゃうよ)
"causing me alarm"なんて、
英語を感覚的に分かっている子なら
理解できますが、
そうでない場合は、
ちょっと難しい歌詞。
Jolly Phonicsの歌詞は、ほとんどが
このような感じで
英語をある程度 話せる子向けに書かれています。
そして②「簡単な単語はすぐに読めるようになっても、文全体の意味を理解できない」という点。
確かに 第1グループ(s a t i p n)を習っただけで
ある程度の単語は読めるようにはなります。
sat, nap, spit, snap, pit....
でも、読めたところで
例えば"spit(つばを吐く)"という言葉、
英語初級者の子が分かるでしょうか?
英語を日常的に使う子だったら、
"spit it out(吐き出して)"というように
よく耳にする言葉なので
読めた瞬間に ピンと来ると思います。
このように、語彙がまだあまり入っていない子に
Jolly Phonicsを取り入れる場合は、
3文字を読めるようになるところまでは
スムーズに行くかもしれません。
でもそれ以降の「文章理解」に繋げようとするには
クリアすべき課題が出てきそうです。
以前の記事でフォニックスは
語彙力がある程度ついてから
始めるとスムースだと書いたのは
こういう理由からです(『フォニックスについて』を参照ください)。
でもJolly Phonicsの歌がリズムもよく
子ども受けがいいのも確か
もし取り入れる際は、
導入時期や、子どもの理解度を把握しつつ
工夫しながら進めるとよいかと思います。
わたしの英語のレッスンでは、
日本語が母語の子ども達には
アナリティック・フォニックス、
英語を母語としている子どもや、
文字に意識がなかなかいかない子は、
ジョリー・フォニックスを使っていて、
子どもによって使い分けています。
発話は安定しているけれど、
文字に意識がいきにくい子
読み書きが苦手な子
にはJolly Phonicsは効果的だと思います
どちらの手法を選ぶにしても
フォニックスは「読み書きを助けるための方法」。
自分の子どもの
発話、語彙力、英語レベル、性格、文字への関心度、
そういった点を考慮して
フォニックスを導入すれば良いのかなと思います。