継続する事にかけてはズバ抜けた能力がある日本の役所と同じで、明治時代から変わらず使われて続けてきた民法を、ここ最近やっと変える動きが具体化してきました。
とはいえ、民法の規定は適用範囲がものすごく広いので、全てを網羅して現代に合わせる作業は大変でしょう。
それでも法律が制定された120年前には存在すら無かった、通信機器やインターネット、通信販売やクレジットカード決済など、消費者・契約者など弱者の立場を守る、法的な根拠を定める契約関連の法律などは、なるべく早く現代の情勢に合わせた、合理的かつ分かり易い法律にして欲しいものです。
例えば、自動車事故でケガにより後遺障害を負ったり、死亡してしまったりした場合に、被害者またはその遺族が加害者(あるいは保険会社・企業・国などの行政)から受け取る慰謝料などの賠償金額に関しても、民法の改正が大きく影響されます。
その一つが法定金利の改正です。
現在5%と定められている法定金利を、3%程度に下げる事が検討されているようです。
家族を事故などにより失った遺族や、事故が原因で高度障がいとなり、長期間または生涯にわたり就業不能状態となった場合、生活を支える世帯主や配偶者などの収入が見込めなくなる事により利益の喪失(逸失利益)が生じます。
これは未就業の学生や子どもでも同じで、現代でも65歳位まで就業する事が可能ですから、その年齢まで働いていたとしたら、少なくともこれ位の収入は得られるであろうという金額を見込んで、国民の就業者平均賃金または親の職種に応じた業種別平均賃金等を基準値として算出します。
(死亡時は本人の生活費は不要ですから、世帯主で30%程度差し引きます)
給料や年金のように、毎月・毎年長期間でも必ず支払いが約束されるのであればいいのでしょうが、民間企業や一個人がその約束を履行できるとは限りません。
そこで、損害賠償請求や裁判では基本的に損害額を一時金で算出して請求します。
1年で500万円なら30年で1億5,000万円と計算します。
これを一時金で全額渡すと、受け取った方としては生活費以上の金額が手元に入っても、すぐに使うわけではない将来使う予定のお金ですから、それまで貯金や債券運用等で利息収入を得ることが可能になります。
その金利分程度は控除してもいいのではと「中間利息分を控除」した算出方法として、ライプニッツ係数が採用されているのです。
複利計算のライプニッツ係数の利回り根拠を法定金利の5%で計算するのか、新たに3%で計算するのかでは、2%の金利差で利回り額が4割違いますから、当然利息は低い方が支払う金額は増えてしまいます。
受け取る際の金利は多いほうが良いのですが、控除(差し引く)する場合の金利は少ない方が有利です。
これが決まると、支払金額が大幅に増える可能性がある保険会社等は反発するでしょう。
それでも、法律で決まれば従わざるを得ませんから、保険会社の負担金額が増える分に応じて、損害保険料や生命保険料に上乗せしていくのでしょうけど。
中間利息控除には、複利計算の「ライプニッツ係数」と、単利計算の「新ホフマン係数」という計算方法もありますが、今ではライプニッツ係数に統一されているようです。
以前は、東京地方裁判所がライプニッツ係数を、大阪地方裁判所が新ホフマン係数を採用して中間利息の控除を計算していたのですが、これだと、同じ損害額が裁判で認められているのに、受け取る金額は採用した係数表の違いで差が出てしまう、という事が起きていました。
裁判を起こす場所によって受け取る賠償金額に差が生じるのは、法の下の平等にも反しますから、そこは改善されて(というより安い方の)ライプニッツ係数に原則は統一されたのでしょうかね。
参考:国土交通省のWEBサイトより
平均余命・就労可能年数とライプニッツ係数表
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/yomyou.pdf
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf
例えば、40歳の世帯主(男性)が死亡した場合、平均年収を500万円と仮定、就業可能年数を67歳までの27年間として計算すると・・・
収入見込み総額は1億3,500万円ですが、本人分生活費30%を控除して350万円の27年分で算出すると、総額で9,450万円となります。
27年間の就業可能年数をライプニッツ係数14.643に置き換えると、350万円×14.643=5,125万500円となります。
約4,325万円と半額近くまで減ってしまうのが、5%の複利で中間利息を控除した金額なのです。
これを3%の法定利率と仮定してライプニッツ係数で計算し直すと、350万円×18.327=6,414万4,500円となるのです。
法定金利が変わると、民事訴訟などで慰謝料や賠償金額を決定する際にも、大きく影響があるのです。
現在も民事訴訟裁判の中では、多くの弁護士が法定金利5%は銀行などの市中金利と比較して大きく異なるので、それを中間利息として控除するのは実情にそぐわないと、2~3%へと下げた計算方法で賠償金額の見積額を提示してきます。
裁判所側もそれに応じるように、法定金利を下回る金利設定での中間利息計算を認めたり、中間利息控除額の少ない「新ホフマン係数」で算出した賠償金額を認めたりする判決も出ています。