※今回の感想は少し長文です。
QUEENの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観てきました。
イタリアでも公開されていたんですけど、イタリアは基本的に吹き替えがメインなのです(都市部の映画館では一部字幕もある)。
せっかく実在の人物を演じているのに、伊語吹き替えで観るのは残念過ぎるので、日本の一時帰国まで我慢していました。
特報
この予告編、編集が神業です!
「地獄へ道連れ」をベースに「ボヘミアン・ラプソディ」「We Will Rock You」「Killer Queen」の4曲をミックスした音源。
これを見て、絶対に映画館に足を運ぶと決めました。
予告編
あらすじなど必要ないくらい有名なバンドですが、一応あらすじ。
1970年のロンドン。ルックスや複雑な出自に劣等感を抱くフレディ・マーキュリー(ラミ・マレック)は、ボーカルが脱退したというブライアン・メイ(グウィリム・リー)とロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)のバンドに自分を売り込む。類いまれな歌声に心を奪われた二人は彼をバンドに迎え、さらにジョン・ディーコン(ジョー・マッゼロ)も加わってクイーンとして活動する。やがて「キラー・クイーン」のヒットによってスターダムにのし上がるが、フレディはスキャンダル報道やメンバーとの衝突に苦しむ。シネマトゥデイより
QUEENについてはベスト盤を聴くくらいには知っていたものの
伝記映画なので予習が必要だと思い、過去の映像をいくつか見てから臨みました。
QUEENは、フレディ・マーキュリーのカリスマ性が突出したバンドというイメージだったんですが、4者4様というかそれぞれに個性があって、特にドラムのロジャー・テイラーはフレディよりも人気があったみたいですね(ライブ映像を見ると、ロジャーが歌う場面で黄色い歓声がすごい)。
メンバーそれぞれの個性が良く出ているインタビュー
インタビューだと、ギターのブライアン・メイがバンドの軸というか、QUEENの持つ良い意味での緊張感や雰囲気は彼が作り出している気がします。フレディはフロントマンらしく、サービス精神が旺盛な感じが良く分かります。
僕も以前、バンドを組んでいたことがありまして、誰が中心になるかでバンドの色が変わってくるものなんですけども、僕達のバンドもギターとボーカルが中心になって活動をしていたので、QUEENの持つ雰囲気に親近感があるんですよね。
ちなみに、日本人インタビュアーの生真面目な質問が4人の個性をちゃんと引き出していて、そこにリスペクトが感じられるから彼らもしっかりと応えている良いインタビューですね(欧州にはない真面目な質問に戸惑っているようにも見える)。
はい、ここまで全然映画の感想じゃないんですけど。。。
楽曲の持つパワーが圧倒的!
ドラマとの相乗効果で、ラストのライヴは鳥肌ものでした。
本作は企画段階から紆余曲折あり、一時期はブライアン・シンガー監督が仕事放棄~解雇という最悪の状況だったにも関わらず、それを感じさせない完成度なのは、音楽プロデューサーを務めたブライアン・メイとロジャー・テイラーに依るところが大きいのでしょう。っていうか、彼らの話だし(寧ろ、当事者が作品に関わっていたので、現場で問題が起こるのは必然)。
QUEENを演じた4人はそれぞれ頑張っていたけど、ブライアン・メイを演じたグウィリム・リーが一番似ていた!
僕が心を揺さぶられたのは、フレディとメアリーのエピソードなんですが
ヒロイン役のルーシー・ボイントンによると、彼女が現場入りした時には既に監督が去った後だったらしいです。
ブライアン・シンガー監督はゲイなので、恐らくフレディのセクシャルな部分をどう描くかについても製作陣とかなり揉めたんじゃないかと思うんですよね。もし監督が続投していたらフレディとメアリーの描き方も随分違っただろうし、後任のデクスター・フレッチャー監督ほど二人の場面をエモーショナルに演出できなかったと思うんですよね(個人的な意見ですが、ブライアン・シンガー監督はヒロインの演出になると淡泊な印象があります)。メアリーの場面は全て後任監督だと考えると、本当に良くまとめたと思うし(急に上から目線)結果的に監督交代劇は吉だったと思います。
ルーシー・ボイントンは、以前にも音楽映画の傑作『シング・ストリート』でヒロインを演じていて、僕の中では音楽映画のミューズのような存在。今後も出演作が目白押しのようです。
『オリエント急行殺人事件』にも出演、一時期ジョニー・デップと噂になっていました
個人的に音楽映画の傑作だと思う『シング・ストリート』
批評家からは、史実と異なる描写が多いという批判もあるようですが
僕は、彼ら(ブライアンとロジャー)の「QUEENはこういうバンドで、こういう仲間でこんな時代を生きてきたんだ」という想いが、ドラマから透けて見えた気がしたんですよね(って、クサい表現ですけど)。
だから、時系列が合ってなくても“そりゃ、そうだろうな”という感じでした。
実際、ブライアン・メイはパンフレットに「これは伝記映画ではなく、純粋なアート」と書いているし。
話は変わりますが
メイキング映像のインタビューでブライアン・メイが“鳥肌ものだよ”と言う箇所はボヘミアン・ラプソディの歌詞からの引用。
“It just sends shivers down my spine”歌詞を引用するなんて粋だ!
フレディの人生とライヴエイドでの歌詞がリンクしているからこそ、クライマックスで泣けるわけですが(実際のライブエイド映像を見てもここまで泣けない)、やはり歌詞とドラマを結びつけるセンスが作品の質を上げているんだなと思いました。
また、QUEENの楽曲は今までも多くの映画で使用されていただけあって
“QUEENの音楽”と“映画”はとても親和性の高い題材だったということが分かります。
QUEENパロディで個人的に一番好きなのはこれ。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』より
マイク・マイヤーズが演じた音楽プロデューサーが、ボヘミアン・ラプソディについてダメ出しする場面。
「若者が車で大音量で頭を振れるような曲じゃない」
これ、自身が主演した映画『ウェインズ・ワールド』のセルフパロディで笑えました。
車内でめっちゃ頭振ってる!
その他、僕自身がバンドをやったり人前で歌ったりしているので、共感できるポイントがいくつもあったのが嬉しかったです。
ライヴエイドでの未収録曲や未公開映像もまだあるみたいなので、今後ディレクターズカット版が出る可能性もありそうです。
そちらも気長に待ちたいと思います。
おまけ。
超かわいい!
【追記】
日本では早くから(母国で正当に評価される前から)QUEENを熱狂的に迎えていて、お陰でQUEENは大の親日家なわけですが、これに関しては当時の女性ファンの皆さん、本当にありがとうという気持ちです。
映画の中では、世界に先駆けて日本がQUEENに熱狂していたことについては触れられていません。
その点を不満に思う人がいるかもしれませんが、個人的には、全く不満がありません。
まず、映画を制作したのはQUEENではないということ(メンバーが関わっているとはいえ)。
フレディ・マーキュリーの人生の物語が主なので、そこに日本の熱狂が際立つ描写が入るのは逆に不自然というのもあります。
もっと言えば、そういう描写を入れないからこそ良いと思うのです。
QUEENには『Teo Torriatte』というサビが日本語歌詞の曲があります。
愛する人とファンの姿を重ね合わせた歌詞になっている、「桜」を思わせるメロディラインも出てくる
手を取り合って このまま行こう
愛する人よ
静かな宵に
光を灯し
愛しき 教えを抱き
(日本語サビの部分)
この曲は、アルバム『華麗なるレース』の最後に収録されているんですけど、アルバムのトリを飾る曲というのはバンドにとってとても重要だと思うんですよ。それを日本語歌詞のしかもファンに向けた曲ですよ。もう、それだけで十分。
QUEENと日本のファンは既に手を取り合っているんですよね。
だから、映画内で当時の日本の熱狂ぶりを世界に知ってもらわなくてもいいのです。
こんなステキな曲を作ってくれて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)
2,599円
Amazon |
シング・ストリート 未来へのうた [Blu-ray]
1,349円
Amazon |